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これはインパクト大!「横尾忠則 ワーイ!★Y字路」展が開催、人生の分かれ道で悩むあなたへ【神戸市】

Hinata J.Yoshioka旅するフォト&ライター(神戸市)
《暗夜光路 眠れない街》2001年

「横尾忠則 ワーイ!★Y字路」…この何ともキャッチーでインパクト大な展覧会タイトルは、驚くことに横尾さんご本人がつけたのだとか。

実は2020年に開催予定だった本展(コロナ禍で延期)、その際に横尾さんから提案されたタイトルだったのですが、ご本人もすっかり忘れていたとのことですよ。突き抜け感がヤバいですね、私は好きです。

横尾さんの作品の中でも、特に人気が高いという「Y字路」作品。その理由はどういった所にあるのでしょうか。

《タカラヅカを観た夜に見た夢》2004年
《タカラヅカを観た夜に見た夢》2004年

「Y字路」がテーマの展覧会は、横尾忠則現代美術館では2015年以来二度目の開催。展示作品は69点、同館では初出品となる作品もかなりあるのだとか。

実際に目に見えないモノや色などが描かれることが多い横尾作品ですが、特に初期の「Y字路」に関しては、目の前の世界をそのまま描写しているものが多いそうです。

《暗夜光路》N市 再び》2002年
《暗夜光路》N市 再び》2002年

初めて「Y字路」が描かれたのは横尾さんの故郷、兵庫県西脇市でのことでした。夜の闇をテーマにしたのは、現代の都市生活ではなかなか出会えなくなった深い闇の世界がそこに生々しく残っていたからです。

それらは横尾作品にしては「異例の表現」とも言え、確かに遊びの要素はどこにも感じられません。神秘的な夜の闇にスッと吸い込まれてしまいそうな、そんな作品たちでした。

ところが2002年になると、いきなり作品の世界が変化。Y字路が闇からカラフルな世界へと大きく転換します。

カラフルな《本性の模写》2002年
カラフルな《本性の模写》2002年

徐々に「見えない世界からのアプローチ」がやってきました。上空にはふたりの人間が浮かび、左奥の「十字架を担ぐキリスト」をカメラに収めています。この非現実的な発想に打たれ、固定観念は遠くへと消え失せていきます。

非現実的な人物が登場する《とりとめのない彷徨》2002年
非現実的な人物が登場する《とりとめのない彷徨》2002年

道が自分の目の前から二つに分かれていること、その先が闇や異次元に繋がっていることで、絵画の中の物語がどこまでも続いていくようです。

様々なY字路を見ることで、私たちは自分の進むべき道を見い出すきっかけを掴めるのかも知れないですね、と今回の企画を担当した学芸員の山本さん。

公開制作された《宮崎の夜-台風前夜》2004年
公開制作された《宮崎の夜-台風前夜》2004年

まさに今の時代を象徴するかのような「Y字路」。どちらの道にも進めますが、ここに行けば安全という時代はもう終わりました。どうやら自分自身で新たな未来を創造していく段階のようです。

それを恐怖と感じるか、楽しみと感じるかで大きく変わってくると思います。だって絵にある道の先はまだ未完ですから。毎回、Y字路の前でワーイ!と思えると、人生が楽しいものに変化していきそうだと私は思っています。

映画「家族はつらいよ3」(監督:山田洋次)のタイトル・ワーク《海の見えるY字路》2017年
映画「家族はつらいよ3」(監督:山田洋次)のタイトル・ワーク《海の見えるY字路》2017年

この日、横尾さんからのメッセージが会場に届いていました。「一日に我々は何度もY字路に遭遇します。昼の食事はラーメンにするか?カレーにするか?誰かに電話をするかどうか、こんな具合に終日、Y字路の前でたちすくむのです」

「われわれの人生は、常に右に行くか、左に行くかの迷いから生じています。まあ、そんなことを念頭において、Y字路展をゆっくり鑑賞してください」

リトグラフ《交差の歓び》2005年
リトグラフ《交差の歓び》2005年

さてさて、やはり面白いテーマですね。日々当たり前のようにしている些細な選択までもが、改めて問われるかのようです。

展覧会に行くか行かないか、これもまたY字路です。あなたはどちらを選びますか?もちろん行った先に約束されるものは何もありません。そこにはあなた自身が立つのみです。

様々なY字路の前で立ち止まり、絵の中の世界に心を傾け、そこに自分を重ね合わせることができるこの展覧会。横尾さんにスッと背中を押されて異世界へ突入するような、非現実感をどうぞお楽しみあれ。

「横尾忠則 ワーイ!★Y字路」展

横尾忠則 ワーイ!★Y字路情報ページ(外部リンク)
会期:2024年1月27日(土)〜5月6日(月・振替休日)
開館時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日[ただし2月12日(月・振替休日)、4月29日(月・祝)、5月6日(月・振替休日)は開館、2月13日(火)、4月30日(火)休館]
会場:横尾忠則現代美術館
観覧料:
一般    700円
大学生   550円
70歳以上 350円
高校生以下 無料
(他、割引などあり)
住所:兵庫県神戸市灘区原田通3-8-30
TEL:078-855-5607(総合案内)

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旅するフォト&ライター(神戸市)

旅なしに人生は語れない、ノマド系フォトライター。国内から世界各国まであちこち歩きまわって取材する、体当たりレポートを得意とする。趣味は美味しいもの食べ歩き、料理、音楽、ダンス、ものづくり、イベント企画などなど、気になる物には何でも手を出してしまう。南国気質で、とにかくマイペースな自由人。

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