子供の教育費は家庭と社会全体、どちらが負担すべきか・諸外国の若者自身の考え方とは
義務教育はもちろん任意の教育課程も含め、教育では何かと費用がかかるもの。大学までの総費用を広義で算出すると数千万円に至るとの話もある。それら教育費の負担を個々の世帯が担うべきなのか、それとも社会全体でサポートすべきなのか。この教育費に関する問題は、日本でも定期的に論議の対象となる。そこで教育費を負担してもらう立場の、日本も含め諸国の若年層を対象に、教育費の負担に関する考え方について、2014年6月に内閣府が発表した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」から確認していくことにする。
子供の教育費について大きく「個人負担(本人やその親)」と「社会全体での費用負担(要は公的資金を投入し、本人の外見的な負担はゼロに近づけること)」の2択、そして「分からない」も合わせて3つの選択肢を用意し、もっとも自らの考えに近いものを選んでもらった結果が次のグラフ。
日本の若者は、この類の社会的事象への設問では中庸的・意識表明の留保を望む場合が多い。しかし今件では「分からない」は17.2%に留まり、アメリカやイギリスの方が多い結果が出ている。そして本人や親が負担すべきとの答えも、日本やアメリカが4割を超える高い値を示している。社会負担よりも個人負担の回答率が高いのも、この2国のみ。
韓国やイギリスは個人負担派が3割、ドイツやフランスは2割、スウェーデンに至っては1割に留まっている。これらの国は「教育費は社会全体で支えるべき」との意見が大勢を占めている。これはひとえに各国の教育費負担の「実状」が大きな影響を及ぼしているからに他ならない。つまり自らが住む国の実態に沿った負担意識が、ほぼそのまま若年層の回答に連動しているともいえる。
次に示すのは別資料(教育指標の国際比較2013(文部科学省))をもとに描き起こした、全教育段階の累計から算出した、教育費における公財政負担(要は税金による負担)と私費(自腹。個人負担)の比率を示したもの。日本ならば全教育費の7割近くが公財政で、3割強が私費でまかなわれている。
「若年層自身が考える教育費の負担に関する考え」と、「各国の教育費負担実情」がほぼ連動している。具体的には公財政の比率が高い国ほど、社会全体で負担すべきとの声も大きくなる。
教育費の領域をどこまで含めるのか、その算出方法も合わせ、教育費の公的負担については冒頭でも触れた通り、日本でもたびたび論議に登る。特にその際、スウェーデンやフランスの事例がよく取り上げられるが、すべての国がそれらの国と同じでは無いこと、同時に9割以上を公的負担で支えている国が実際に複数存在することは、心に留め置くべきであろう。
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