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肥満とアトピー性皮膚炎の関係とは?10代の若者に見られる意外な傾向

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【アトピー性皮膚炎と肥満の関係】

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う慢性的な炎症性皮膚疾患です。世界中で子どもの15~20%、大人の1~3%が罹患しているとされています。

一方で、近年世界的に小児肥満が増加傾向にあります。肥満はさまざまな合併症のリスクを高めることが知られていますが、アトピー性皮膚炎との関連性については、これまでの研究結果が一致していませんでした。

今回、韓国の研究チームが行った大規模な調査で、興味深い結果が明らかになりました。この研究では、12~18歳の韓国の若者約14万4000人を対象に、体格指数(BMI)とアトピー性皮膚炎の関連を調べました。

【BMIとアトピー性皮膚炎発症リスクの意外な関係】

研究の結果、驚くべきことに、BMIが高いほどアトピー性皮膚炎のリスクが高まることがわかりました。具体的には、以下のような傾向が見られました:

1. 男子の場合:

- 標準体重の人は、やせ型の人と比べて1.19倍

- 太り気味の人は、やせ型の人と比べて1.37倍

2. 女子の場合:

- 標準体重の人は、やせ型の人と比べて1.26倍

- 太り気味の人は、やせ型の人と比べて1.37倍

アトピー性皮膚炎にかかるリスクが高くなっていました。

つまり、やせすぎよりも、標準体重や太り気味の若者のほうが、アトピー性皮膚炎になりやすい傾向があるのです。この結果は、従来の常識を覆すものかもしれません。

この研究結果は、アトピー性皮膚炎の予防や治療において、体重管理の重要性を示唆しています。特に、標準体重であっても油断せず、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけることが大切だと言えるでしょう。

【アトピー性皮膚炎と生活習慣の関係】

研究チームは、BMI以外の要因についても調査を行いました。その結果、以下のような興味深い関連性が明らかになりました:

1. 運動不足:

運動をしない若者は、やせ型の人と比べて、標準体重や太り気味の人のほうがアトピー性皮膚炎になりやすい傾向がありました。

2. 睡眠不足:

睡眠時間が8時間未満の若者も、同様の傾向が見られました。

3. ストレス:

男子の場合、ストレスが多いと感じている人ほど、BMIが高くなるにつれてアトピー性皮膚炎のリスクが高まりました。女子の場合は、ストレスが少ないと感じている人でも、BMIが高いとリスクが上がる傾向がありました。

4. 食生活:

清涼飲料水や甘い飲み物、ファストフードの摂取頻度が高い若者ほど、アトピー性皮膚炎のリスクが高まる傾向が見られました。

これらの結果は、アトピー性皮膚炎と生活習慣の深い関係を示しています。適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理、バランスの取れた食事など、健康的な生活習慣を心がけることが、アトピー性皮膚炎の予防や症状の軽減につながる可能性があります。

今回の研究結果は、アトピー性皮膚炎の治療や予防に新たな視点を提供しています。体重管理を含めた総合的なアプローチが、今後のアトピー性皮膚炎対策において重要になってくるかもしれません。

ただし、この研究にはいくつかの限界があることも忘れてはいけません。例えば、アトピー性皮膚炎の重症度や、その他の食事内容、生活環境、アレルギーの既往歴などの要因を十分に考慮できていない可能性があります。また、自己申告によるアンケート調査であるため、回答の正確性に疑問が残る点もあります。

しかし、14万人以上という大規模な調査であることから、その結果には一定の信頼性があると考えられます。今後、さらに詳細な研究が行われることで、アトピー性皮膚炎と体型や生活習慣の関係がより明確になることが期待されます。

アトピー性皮膚炎でお悩みの方、または予防に関心がある方は、この研究結果を参考にしつつ、適切な体重管理と健康的な生活習慣の実践を心がけてみてはいかがでしょうか。ただし、具体的な対策については、必ず医師や専門家に相談することをおすすめします。

参考文献:

Lim JH, Jang YS, Kim DB, Jang S-Y, Park E-C (2024) Association between body mass index and atopic dermatitis among adolescents: Findings from a national cross-sectional study in Korea. PLoS ONE 19(7): e0307140. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0307140

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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