周辺諸国が大いに懸念する中国の覇権主義的対外拡大政策
昨今の中国の周辺諸国への外交方針は、概して強圧的な様相が見受けられる。得てして「自国の権益の確保」「正当な権利の主張」などの大義名分を掲げるものの(「核心的利益」などという言い回しを使う場合も多々ある)、周辺諸国からは覇権主義的、高圧的な動きとして見られるアクションが多く、その拡大政策に危機感を覚えることになる。ましてや過去に、しかも現在に直接つながる時点での政治状態で軍事的実例があれば、その懸念はより強くなる。今回はアメリカの大手調査機関Pew Researchが2014年7月に発表した、アメリカを中心とした諸国の外交戦略、その手法に関する周辺各国の国民の反応などをまとめた報告書「Global Opposition to U.S. Surveillance and Drones, but Limited Harm to America’s Image」から、中国における対外拡大政策に絡み、周辺国の国民が抱く軍事衝突への懸念の度合いを確認していくことにする。
次に示すのは、中国の強行的対外拡大政策に絡み、頻度を増して頻発化している領土紛争などに関し、これが具体的な軍事衝突につながる可能性があることについて、どの程度の懸念をしているかを尋ねたもの。国としての方針、懸念表明では無く、各国の国民レベルでの心配度であることに注意。
赤系統の着色が懸念派。当事国の中国も含め(!)、多くの国の”国民”が強い懸念を抱いている。特に西沙諸島近辺で事案が続いているベトナムやフィリピン、尖閣諸島関連や東シナ海のガス田関連における日本、そして国境紛争が続くインドで高い値が出ている。中でもベトナムやフィリピンでは「大いに懸念」の値のみで半数を超えており、強い危機感を抱いているのが把握できる。一方で中国に対して好感度の高いインドネシアではやや低い値が出ているが、それでも過半数は懸念派である。
このような状態について、アメリカを除く11か国の位置関係、主要な問題地域、それぞれの国の懸念派・非懸念派の回答率を配したのが次の図(報告書からの抜粋、一部注釈追加)。
すでに確定している線引きを、一方的に片方の勢力の思惑だけで引き直そうとすれば、必然的に影響のある国からは反発を受け、いざこざが生じる。クリスマスケーキを分けるためにナイフを入れた後、「自分はチョコレートの飾りが好きだから」と飾り物を自分の側に移動させたり、仕切り部分を切り直して飾り物が自分の取り分に収まるようにすれば、いざこざが生じるのは当然の話である。
他方、力をつけた者がその力を行使したくなる、力を背景に自信を持ち、より強硬な姿勢で相手と接するようになるのも自然の摂理ではある。
「旧に復せよ」も事象解決のための選択肢の一つ。それを許諾するだけの中長期的な視点を当事国が有しているか否か。今後の動向が気になるところではある。
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