スペースX、月・火星ロケット試験機の150メートル飛行試験に成功
日本時間2019年8月28日、米スペースXはテキサス州で小型ロケットStarship Hopper vehicle(スターシップ・ホッパー・ヴィークル 略称:スターホッパー)の飛行試験を実施し、高度約150メートルまでの飛行、着陸に成功した。スターホッパーはスペースXが計画している超大型ロケットStarship(スターシップ)の開発試験機で、スターシップは月や火星まで100名が搭乗し、往復飛行を行うことが想定されている。
スターホッパーはスターシップ向けに開発されたメタンと液体酸素を推進剤とする新型エンジンRaptor(ラプター)を搭載し、7月26日にスペースXのテキサス州試験場で初の飛行試験を行った。このときは高度20メートル程度となったが、ラプターエンジンの性能実証に成功した。ラプターエンジンは、スペースXが現在ファルコン9ロケットに搭載しているケロシンと液体酸素を推進剤とするマーリン 1Dエンジンより大きな推力を持つだけでなく、点火器の性能が向上しているという。
もともとスターホッパーの試験飛行は高度150メートルへの飛行を計画しており、米8月27日午後5時ごろ行われた2回目の飛行試験で目標高度へ達した。スペースXのイーロン・マスクCEOは9月中旬にスターシップ開発の進捗状況を発表するとしている。
また、スターホッパーの目標達成後はStarship Mk1とMk2(スターシップ マーク1、マーク2)という試験機に移行し、搭載するラプターエンジンは3基から最大6基になるという。早ければ秋ごろにもスターシップ試験機の試験飛行を開始するとみられる。
今回のスターホッパー試験飛行の映像は、1993年8月に初の試験飛行を行った再利用型ロケット試験機「デルタ・クリッパー(DC-X)」を彷彿とさせるとの声が米宇宙開発ジャーナリストらから上がっている。アポロ12号の船長であったピート・コンラッド宇宙飛行士が率いるチームが開発したDC-X改良型は、1996年に高度3140メートルの垂直離着陸に成功している。
とはいえ、飛行試験の様子に似ている部分があっても、開発のスピードという点ではスペースXは他の追随を許さない。2015年、ファルコン9ロケットの1段着陸、再利用で試行錯誤していた時期に、スペースXのライバルであるULAのトーリー・ブルーノCEOから「うちのDC-X経験者に手伝わせようか?」と揶揄されたこともあるイーロン・マスクCEOだが、2013年のラプターエンジン開発表明から6年で飛行試験を成功させ、行動で見返した格好だ。