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個人向け国債(10年変動)の初期利子が0.39%と、メガバンクの定期預金金利の約200倍の高さとなる

久保田博幸金融アナリスト
(提供:イメージマート)

 8月3日から31日にかけて募集される「個人向け国債(10年変動タイプ)」の初期利子が、「0.39%」となった。これは2014年7月の際の0.40%以来の高い利率となった。

 新規で募集される2年固定タイプの個人向け国債の利子が0.05%、5年利付タイプが0.14%だけに10年変動が突出して高くなっている(いずれも税別)。

 期間10年ということはあるが、メガバンクの定期預金の金利は0.002%であり、単純に利子だけを比較して約200倍となるなど、非常に魅力的なものに映ろう。

 この理由は言うまでもなく、特に10年変動の利子にかかわる10年国債の利回りが日銀の7月28日の政策修正によって大きく上昇したことによるものである。

 今回、10年変動タイプの利子の上昇の恩恵にあずかるのは、これから10年変動タイプを購入する人だけでなく、すでにそれを保有している人も今回の利率が適用される。

 変動10年の各利払期における適用利率(年率)は、基準金利に0.66を掛けた値(0.01%刻み)。固定5年は基準金利から0.05%を差し引いた値(0.01%刻み)。固定3年は基準金利から0.03%を差し引いた値(0.01%刻み)。ただし、それぞれ最低保証利率の0.05%が設定されているため、これ以下にはならない。

 基準金利が良くわからないかもしれないが、今回でいえば7月1日に入札された10年国債の平均利回りあたりであるとの認識で良いと思う。正確には平均落札価格を基に計算される複利利回り(小数点以下第3位を四捨五入し、0.01%刻み)の値だが、そこまで認識しなくて良いと思う。

 いずれにしてもやっと個人向け国債(10年変動タイプ)の利点が明確になってきた。

 最近、ネットニュースの広告で「元金保証」と打ち出しているものを見かけ、また危ない商品の宣伝か、と思ってみたら「個人向け国債」であった。こればかりは正真正銘の元金保証(ただし1年は換金できない)。しかも国債なのに流動性リスクも価格変動リスクもない。そして、このように長期金利がちゃんと適切な水準を付けられるようになれば(日銀修正後の現在の10年債利回りもまだ低すぎると個人的にはみているが)、利子の面でも非常に魅力的な商品となるのである。

 これまで個人的に最もお薦めできる金融商品と問われれば、ベストは個人向け国債(10年変動)と答えてきた。しかし、肝心の利子の魅力をことごとく日銀の長期金利コントロールによってこれまで潰され、いや奪われてしまっていただけに、やっとこれで個人向け国債の本領発揮といえるであろう。いや本領発揮はむしろこれからだと思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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