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ノーベル物理学賞、中国のネットが日本を絶賛

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

ノーベル医学生理学賞に続いて、10月6日にノーベル物理学賞までが日本人に与えられたことに関して、中国大陸のネット空間に、日本人を素直に絶賛するコメントが溢れている。自虐的コメントを含めてご紹介する。

◆すなおに日本を絶賛するコメント

10月6日、ノーベル物理学賞は東京大宇宙線研究所所長の梶田隆章氏とカナダ(クイーンズ大学)のアーサー・ マクドナルド氏に授与することが決まった。ニュートリノに質量があることを突き止め、物質や宇宙の謎に迫る素粒子研究を発展させたことが授賞の理由だ。

二日連続のノーベル賞受賞に対して、中国大陸のネット空間には、すなおに日本を礼賛するコメントが溢れていた。その中から、いくつかを選んで列挙する(このように考えてくれている中国の若者もいるのを知ると、日本人としても心が温まり、むしろ中国の若者たちを応援したくなる)。

●日本は50年で30個のノーベル賞を獲得すると言っていたけど、今年、もう二つも取ったよ。

●日本が科学エリアで得たノーベル賞の数は、イギリスを追い越して世界第二になったんじゃないのか? 日本はなんといっても「イギリスに追い越せ、アメリカに追いつけ」っていう言葉を、ただ言うだけじゃなくて、実際に実行してしまうんだからね…。

(筆者注:毛沢東が「イギリスを追い越せ、アメリカに追いつけ」という号令をかけて大躍進を推進したが、実際には実行できないどころか、3000万人近い餓死者を出してしまった事実を皮肉っている。)

●日本人は(2年連続で)ノーベル物理学賞の地位を保持したよ!すごいなぁ!

●いつか中国人もこんにちの日本の科学者のように面目が立てば、どんなにいいだろうか! 頑張れ(中国)!!

●日本はすごいよなぁ。連続二日間もノーベル賞を受賞した。しかも物理学賞って、一番すごいんじゃない?

●明日は誰が受賞するんだろう? 化学とか文学とか…。村上春樹がもらったりして…。

●日本の科学技術のレベルって、ほんとに尊敬してしまう。われわれも引き続き努力し、奮起して追いつこうよ。

●科学技術は全人類に幸せをもたらす。おめでとう!

●日本人って、ほんとにすごいよね!まるで日常生活でご飯を食べるみたいにノーベル賞を獲るんだからね。

●第二次世界大戦で日本が勝っていたら、僕たちはいま大日本帝国の国民だったことになる。だったら、どんなに幸せだろう。(筆者注:これが削除されてないのは、時間の問題かもしれない。)

●あのとき日本に統一されていたら、どんなにいいだろう(筆者注:これも削除対象のはず。それに、良くはない。)

●日本は学ぶに値する。

●アジアの日本は、いつか必ず西側諸国のアメリカになる。

●こういう基礎研究をする科学者は人の尊敬を受ける。その人の国籍がどこであろうと。

◆やや自虐的なコメント

●我が国の科学者は、経費の獲得競争に関しては、日本に負けないよ。

●ノーベル賞のことなんか、いま言うのやめようよ。それよりもまず、車のエンジンを改善したり、人工衛星などを打ち上げるロケットなどを改良したりしようよ。

●われわれの科研費(科学研究費)は「二号さん(妾)を囲い込むこと」「情婦を養うこと」「公用車や公金で旅行すること」に関しては、すごいぜ! ほら、知ってるだろ、あの中国科学院地質地球物理研究所・地球深部充填実験室の主任だった段振豪などは、なんたって科研費で二号さんや情婦を囲っていたんだから!!!

●偽造(論文)ではノーベル賞はもらえないよ。せいぜい経費をごまかすことしかね。

●ノーベル指導者思想(イデオロギー)奨があればいいのに…。

●だからさ、思想と行動の自由が、どれだけ重要かが、これで分かっただろ?

(筆者注:これも削除対象のはず。)

●われわれ良き青年は、みな指導的職位に就き、良き官吏を務め、学問もやっているのに、どうやら、そういうことではダメなんだね。

●ノーベル賞の受賞規定を変えればいいんだよ。そうすれば我が国の「××人民報」は毎年「恥知らずの姿勢で創造した魔術的な文章」で、文学賞をもらえるのに。

◆日本をけなしたコメント

●アメリカ帝国主義を追い出せないで、ノーベル賞をもらったって、しょうがないんじゃないのかい?

●ノーベル賞をもらっても、日本にはチャンスはないよ、きっと。だって「金」がないんだから。(筆者注:何でも「金」で解決する中国を半ば嘲笑して。)

●アジア人はどんなことをしても欧米人には及ばない。なぜなら欧米は「個人のため」「自己実現のため」「自己の尊厳と探究心のため」に真理を追究するけど、アジア人は国家のメンツのためにノーベル賞をもらおうとしているんだから、所詮、下等国。

以上、目についたものを、できるだけ平等に選んでご紹介した。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『嗤(わら)う習近平の白い牙 イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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