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半世紀以上にわたる民間・公営賃貸住宅の家賃の変遷をさぐる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 賃貸住宅の家賃はどのような推移を示しているのだろうか

急上昇した民間賃貸と、動きがゆるやかな公営賃貸と

住まいの需要として賃貸住宅は民間・公営共に大きな需要を持ち、その需要に応えるべく供給が行われている。その賃貸住宅の家賃の実情・推移を総務省統計局の「小売物価統計調査」の公開値から探る。

精査を行うデータは東京都区部におけるもの(「民間借家の家賃」「公営住宅・都市再生機構住宅の家賃の平均」について、1か月あたり・3.3平方メートル(1坪)の料金。敷金・礼金や共益費、管理費などは含まれていない)。地方の値とは異なることを記しておく。直近の年次公開値は2016年分なので、その値を取得。また2017年分に関しては月次(3月分まで公開済み)の値を単純平均した上で暫定的に適用する。

一方小売物価統計調査では、2015年1月から小さからぬ規模の調査項目の差し換えや仕様変更が実施された。今件記事の対象項目でも「公営住宅・都市再生機構住宅の家賃の平均」に該当する項目が調査対象から外れ、データの連続性が失われる形となった。そこで公的借家の代替として、1991年分から計測値が取得可能な都道府県県営住宅の値を公的借家の代表値として反映させている。

↑ 民間・公営の家賃推移(東京都区部)(1959~2017年、円、1坪=3.3平方メートルあたり)(2017年は3月までの月次平均)
↑ 民間・公営の家賃推移(東京都区部)(1959~2017年、円、1坪=3.3平方メートルあたり)(2017年は3月までの月次平均)

民間の賃貸住宅は1967年に垂直に近い動きを見せたのち、キツめの勾配で上昇を続けており、1990年後半になってようやく上昇が止まることになる。一方公営住宅は1975年前後に上昇カーブがややキツめになったものの民間と比べれば随分とリーズナブルなままで推移し、やはり1995年以降は横ばい、一時期は減少傾向まで見せている(都道府県営住宅では明らかに減少している)。

1960年代の民間賃貸住宅の家賃急上昇の理由に関し、はっきりとした理由は特定できない。影響を及ぼしたと思われる原因としては、ベトナム戦争特需に伴う住宅(建売)ブームの到来などで、賃貸住宅の相場も相対的に上昇したことぐらい。もっともそのような時期でも公営住宅の家賃上昇率は穏やかであり、「家計に優しい」存在だったことが分かる。

一方最近の数年に限れば、民間は漸減、公営は上昇と、過去の家賃推移とは異なるトレンドの中にある。さらに都道府県営住宅は横ばいを示していることから、差し引きで都市再生機構の借家家賃が上昇していることがうかがえる。いずれにせよ、両者の立ち位置が変わるほどの変化ではないが、公民の差は少しずつ縮まりつつあり、興味深い動きには違いない。

消費者物価の動向を反映させると

世帯内における支出の少なからぬ割合を占める家賃の場合、単純に金額の移り変わりだけでなく、当時の物価を考慮した場合が道理は通る。家計全体に対する負担は金額そのものではなく、物価を考慮した上で比べるべきとの意見は説得力がある。例えば同じ家賃にしても、50年前の5万円と今の5万円では大きく価値が異なる。

そこで各年の家賃に、それぞれの年の消費者物価指数を考慮した値を算出することにした。消費者物価指数の各年における値を基に、直近の2017年の値を基準として、他の年の家賃を再計算する。例えばこの試算では1959年における民間賃貸住宅の家賃は1914円との値が出ているが(実測値は337円)、これは「1959年当時の物価が2017年と同じだった場合、民間賃貸住宅の平均家賃は1914円(1坪当たり)になる」次第。

↑ 民間・公営の家賃推移(東京都区部)(1959~2017年、円、1坪=3.3平方メートルあたり)(2017年の値を元に消費者物価指数を考慮)
↑ 民間・公営の家賃推移(東京都区部)(1959~2017年、円、1坪=3.3平方メートルあたり)(2017年の値を元に消費者物価指数を考慮)

やはり民間賃貸住宅では住宅ブームの1960年代、特に60年代後半において、大規模な家賃の「実質的」値上げが起きていることが分かる。その後は1980年前半までほぼ横ばいを見せたものの、バブル時代の到来と共に一段階上昇し、あとは穏やかな値上げが漸次行われている形だ。ただし上記にある通り、最近の数年に限れば緩やかな値下げの動きも確認できる。

一方で公営住宅ではこの50年で実質2倍足らずの値上げしか行われておらず、その値上げ時期も1970年後半から1990年後半までの間に限られているのが分かる。色々な意味で良心的といえよう。もっとも今世紀に入ってからは、わずかずつではあるが上昇しているが、民間のと比べれば、まだまだ低水準には違いない。都道府県営住宅に限れば、むしろ漸減の傾向を示している。

ここ数年の間に更新料に関する物議が大いに行われ、それに伴い「更新料の廃止=家賃に転嫁」との動きも一部で見られている。他方、賃貸住宅の供給量の大幅増加に連れ、需給バランスがやや崩れ気味なのも事実。家賃動向はほぼ横ばい、新規契約時にもやや減少の動きすら見られる。これらの動きが中長期的な動きにどのような影響をもたらすのか、見据えていきたい。

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ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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