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自衛隊を有志連合に参加させてはいけないーイラン情勢、トランプに振り回されるな

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
米国はイラン周辺に空母を派遣するなど、軍事圧力を強めている(写真:ロイター/アフロ)

 米国とイランの対立が深まる中、米軍のジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長は今月9日、イランに面するホルムズ海峡周辺に各国で護衛艦等を派遣する有志連合の結成を検討していることを明らかにした。その名目は、「民間船舶の航行の安全確保」であるが、実際には、米国主導の対イラン包囲網の一環だ。米国のドナルド・トランプ大統領は「戦争は望まない」と発言しているものの、米国がイランへの軍事的圧力を強める中、不測の事態が起きうることも懸念される。こうした中、対イラン強硬派のジョン・ボルトン米国大統領補佐官が参院選後に来日、日本政府に対し、対イラン有志連合に自衛隊の艦船を派遣するよう求めに来るとも報じられている。

 国内の人道支援や人権団体、平和運動の関係者、筆者含むジャーナリストらでつくる「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」は、一連のイラン情勢の緊迫を受けて、本日、日本として平和憲法に則った対応を行うよう求める声明を発表した。以下、その声明を全文掲載する。

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日本はイラン情勢へ平和憲法に即した対応を

イラク戦争の検証を求めるネットワーク声明

 私達、イラク戦争の検証を求めるネットワークは、イラン情勢の緊張の高まりを危惧しています。イランに面するホルムズ海峡付近では今年6月、日本の海運会社が運航するタンカーが何者かに攻撃され、米国は「イランの革命防衛隊の犯行」だと主張。これに対し、関与を否定するイランは同月、「領空侵犯」を理由に米無人偵察機を撃墜し、ドナルド・トランプ米国大統領が対イラン報復攻撃を一時承認する事態に発展しました。さらに、米国は、有志連合として各国が護衛艦をホルムズ海峡へ派遣することを求めていく見込みです。その名目は「民間の船舶護衛」ですが、実際には対イラン包囲網の軍事的圧力と言うべきでしょう。この有志連合に自衛隊が参加するかについては、現時点では岩屋毅防衛大臣は否定していますが、参院選後、トランプ政権の要求に安倍政権が屈することは、容易に想像できます。

 既に、日本国内でも一部の保守系メディアでは、日本が輸入する原油や液化天然ガスの大部分の輸送ルートであるホルムズ海峡を「生命線」だとして、有志連合艦隊に自衛隊も参加すべきと主張しています。しかし、イランへの軍事圧力である有志連合艦隊に対し、自衛隊が参加することは、ホルムズ海峡周辺の緊張をさらに高めることに、日本が加担することになります。これは、国連の規定する本来の集団的自衛権の行使や集団安全保障とは異なるものです。また、有志連合艦隊に何らかの不測の事態が発生した場合、米国とイラン、さらにはイスラエルやイラク、レバノンなどの中東諸国をも巻き込んだ戦争が勃発するという、最悪の事態に発展する恐れも否めません。先月のG20サミットでトランプ大統領が「日米同盟は不平等」「米国が攻撃を受けている時も日本はソニー製のテレビで観ていられる」と発言したことから考えても、不幸にも対イラン戦争が発生した場合、安保法制による集団的自衛権の行使を米国側に求められ、日本が戦争に巻き込まれる恐れすらあるのです。

 そもそも、現在の米国とイランの緊張の高まりは、オバマ政権時に両国と英仏独中露、そしてEUによりまとめられた核合意、つまりイランが核兵器の開発を行わない代りに、参加国は対イラン経済制裁を解除するという合意から、昨年5月、トランプ政権が一方的に離脱したことに端を発しています。しかも、その理由は「オバマ前大統領への嫌がらせ」という馬鹿げたものであったと、先日辞任したイギリスのキム・ダロック在米国大使が公電で報告しています。また米国政府内の対イラン強硬派のジョン・ボルトン大統領補佐官は、ブッシュ政権時、イラク戦争の開戦を主導した一人でもあります。日本が行うべきことは、トランプ政権の対イラン軍事圧力に加担することではなく、欧州各国と連携してトランプ政権に対し、いたずらに緊張を高めることをしないよう説得すること、また親日国でもあるイランに対しても、自制を促すことでしょう。

 2003年3月に米国を中心とする有志連合軍により開始された、武力行使容認決議を経ない国連憲章違反の対イラク先制攻撃では、当時の小泉政権がこれを支持。航空自衛隊が米軍の兵員や物資を輸送、在日米軍基地がイラク戦争への出撃基地になるなど、日本も大きく戦争に加担しました。その後、戦争の大義名分であった「イラクの大量破壊兵器開発」が誤った情報であったことが判明しても、日本はイラク戦争の検証を十分に行うこともせず、国会質疑で幾度も指摘されながらも、安倍首相はイラク戦争支持が誤りであったことを認めておりません。そのような経緯からも、今回のイラン情勢に対し、イラク戦争と同じ過ちを繰り返さないよう、平和憲法に則った外交を行う等、以下の行動を、政府与党及び野党各党に強く要請します。

1.核合意に参加した欧州の国々などと連携し、米国に核合意に戻り、イランへの軍事圧力/武力行使を慎むことを、日本として求めていく。

2.イランに対しても、核合意を尊重して核開発を自制し、ホルムズ海峡の海上交通の安全を守るよう日本として求めていく。

3.あくまで上記のような平和外交による努力に徹し、有志連合艦隊に自衛隊を派遣しないこと。

以上

2019年7月19日

イラク戦争の検証を求めるネットワーク

https://www.iraqwarinquiry.net/

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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