奈良“泊まらない都市”最下位クラス?で泊まりたいホテルを目指す-絶景部屋で職人握り寿司!?
春先に訪れた奈良で、観光の中心地ともいえる猿沢池の畔に気になる外観のホテルがありました。経年感のある建物にして1Fのオープンエアなスターバックスコーヒーが何ともアンバランスで印象的。吸い込まれるように訪れてみると中に入ると外観の旧さからはイメージできないスタイリッシュさです。
ホテル天平ならまちというホテルで最近リニューアルしたそう。聞いてみると、そもそも奈良県の旅館・ホテル客室数は全国最下位クラス(厚生労働省調査2019年度=45位)で、「泊まらない都市」とも言われる中、観光の中心地でリーズナブルに泊まってもらえるようなホテルを目指しリニューアルしたといいます。
確かに、どうせ奈良に泊まるなら奈良をたっぷり体感できるホテルがいい。東大寺、春日大社、元興寺といった世界遺産へも徒歩圏内という好立地ですが、元興寺といえば、旧境内を中心とした「ならまち」が人気。格子や土塀が残る古い街並みで、古民家を改装したカフェや雑貨店などが隠れ家のように点在しており、若い女性を中心に訪れる人が多いスポットです。
ホテルへは、近鉄奈良駅から賑やかなアーケードを歩きつつアクセス。エントランスは三条通りに面しており、明日香村の石舞台古墳と同じ花崗岩が迎えてくれます。ロビーには、東大寺の大仏殿の柱と同じ太さの檜の柱や勾玉型の杉のベンチ、西大寺の茶碗と茶せんを飾る茶室など、奈良をイメージさせるデザインが随所に。
ロビーに続いて気になるのが奥のギャラリー。書、絵画、陶芸などの芸術作品の展示会やアートパフォーマンスなどにも利用されているとのこと。いきなりのアート尽くしホテルですが、ホテルのコンセプトのひとつが「書」ということで、奈良にゆかりのある書家27名が全44室の壁に異なる書を揮毫(筆を使って文字や絵を書くこと)。全44室同じ部屋がひとつとして無いことになります。
猿沢池の畔ということで期待していましたが、バッチリ五重塔も望めました(※2023年1月から大規模修理予定)。ビューポイントは、宿泊客のみが入れる2階のテラスで位置はちょうどスターバックスの上にあたります。
何も遮るものがないビューで、目の前に猿沢池・五重塔・春日山という贅沢な景色が広がります。大浴場もあるので、興福寺の鐘の音を聞きながら風呂上がりの夕涼み、そしてビールなんて最高かも。直接テラスに出られる客室も2Fにはあります。
ホテルでは夕食の提供はしていませんが、滞在、食事などのシーンで密を避けたいという意味からも、おすすめは客室で職人が目の前で握る寿司のプラン。職人が客室へ来訪、目の前でゲストのために本格寿司を握ってくれる贅沢この上ないシチュエーション。個人的には外食に出向くのと同じくらいの予算内ということで思い切ってたいけんしてみました(プランは提供数や期間など限られており(宿泊)料金の変動などもあるので利用に際しては公式サイト等ご確認下さい)。
訪問まで客室を乱雑に出来ない!?という点はあるものの、サッと握り立てを出し(熱々お椀も)終わったらサッと片付けあとはごゆっくりと去っていく手際の良さが素晴らしい。中学卒業後寿司職人修行を始め、数年前に出張寿司で独立したという元気な大将、京都や奈良のスモールホテルを中心に廻っているそう。最後の最後にシャリが余りましたからと、さっといくら軍艦出してくれるニクい演出も。
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コロナ禍は旅のスタイルを多様化させていますが、“こうすべき”とか“こうあるべき”という常識は前提としつつも、感染対策という基本が日常となる中で、旅はいまや“自分流”がスタンダードなのかもしれません。こんなのがあったらいいなぁ~という、自分流アレンジに応えてくれるようなホテルのプランに出合うと嬉しくなってしまいます。