数百万円要するケースも!?【産後ケアホテル】に勝算はあるのか
みなさん“産後ケアホテル”をご存じでしょうか?その名のとおり、母親の産後の体を回復させるための様々なケアやサービスを提供するホテルですが、いま業界で存在感を高めているスタイルの施設です。
まず、一般的な目線からすると特徴的かつ興味深いのがその料金です。1泊10万円や20万円といった設定も当然のように見られますが、そのサービスの性格をはじめホテルの宿泊料金という目線からしても、昨今のホテル料金高騰の波にあって驚くこともないのですが、産後ケアというだけに1泊2日という短期間ではなく、1週間や1ヶ月といった単位になるということ。すなわちトータルで数百万円要するケースも珍しくはないことになります。
都心高級ホテルの中に産後ケアホテル
2024年2月21日にスタートしたのが『産後ケアサービス「AMATERASU(アマテラス)」』。ホテルのスパトリートメントなどの事業で知られる株式会社クレドインターナショナル(本社所在地:東京都新宿区/代表取締役:白井浩一)とホテル椿山荘東京が提携、ホテル内にアマテラス専用エリアが新設されました。
客室は8室用意され、さすがの高級ホテルということで、客室は45平方m以上の広さがあり、サービスのほとんどが客室内で行えるよう配慮されています。24時間体制で乳児を見守る看護師や助産師、保育士が待機するベビールームなどを備え、産後の母親をサポート。
ベビールームでは乳児の預かり世話全般も担当し、ベビーベッドには1台ごとにカメラが設置、ライブビューイングなどで配信される安心感の高さも特徴です。母親は育児アドバイスや体のメンテナンスなどさまざまなケアも受けらます。
白井社長は、約5年前から産後ケア先進国の台湾の事業者らと日本での産後ケアサービスを構想していたといいますが、海外は産後ケア施設が一般的に普及しており、中でも東アジアでは台湾が先進的、韓国や中国も続いているといいます。アマテラスもスタート当初から稼働がかなり高い中、ゲスト層を分析すると日本に在住する台湾や韓国、中国のゲストはかなりの割合を占めるとのこと。
研究を深めてきた台湾の産後ケアを日本のサービスを融合させた産後ケアサービスといえそうですが、台湾の産後ケア施設「U-Best」が監修するほか、各分野のプロフェッショナルが参画、産婦人科医との医療提携なども行われています。
ちなみにプランを見ると、3泊4日のリフレッシュプランが62万7000円~、14泊15日のリトリートプランが292万6000円~といい、今後も都市部での展開を想定しているとのこと。今後の動きが気になるところです。
リゾートエリアの産後ケアホテル
湘南リゾートエリアの産後ケアホテルへも取材に出向きました。株式会社マムズ(本社所在地:東京都新宿区/取締役社長:斎藤 睦美)が運営する日本最大の産後ケアホテルというのが『マームガーデンリゾート葉山』。神奈川県葉山に2021年12月にオープンしました。
もともと同社では、親会社が保育園経営、リゾートホテルやアミューズメント施設の運営も行ってきたノウハウを集結、これまで日本になかった産後ケア×リゾートホテルという新たな選択肢を提供することにしたといいます。
施設の公式LINEで2021年7月に行った妊娠の女性へのアンケート調査(有効回答205人)によると、47.3%が「何かしらの産後ケアサービスを使う予定」と回答、マームガーデンリゾート葉山を利用してみたいかとの質問には、4.4%が「ぜひ利用したい」、10.2%は「利用を検討する」、44.4%はホテル自体に「興味を持った」と約6割が前向きな回答で開業への強い後押しになったとします。
母親の休息と回復を最大の目的とし、24時間赤ちゃんを預かるベビールームを完備、必要なときには助産師や専門スタッフが赤ちゃんを見守る体制が整っています。また、助産師による授乳指導や沐浴指導、乳房ケアなどさまざまなケアを実施し、食事はおやつを含めて1日5食、産後の回復や授乳に必要な栄養を考えたメニューを提供しています。
ホテルには母親がリラックスして過ごせるよう、さまざまな設備が用意されています。館内には海の見える足湯、岩盤浴、ヨガルーム、ラウンジ、エステサロン、ニューボーンフォトスペース、カラオケなど癒しや楽しみなど、好きな時間に自分好みの過ごし方を楽しむことができます。
また、父親も一緒に滞在できるのが産院との違いといい、自宅に帰ってから父親が沐浴を担当できるような指導を行われています。ラウンジにはワークスペースがあり、滞在中のテレワーク、祖父母や兄弟姉妹との面会も可能。
客室数は47室で15平方mのバリュータイプから51平方mのロイヤルスイートまで多様なタイプがあり、家族が同室に宿泊できる部屋も設けてられています。宿泊ルームはオーシャンビューの部屋が多く、日中にも睡眠を取ることができるよう、全室に完全遮光のカーテンやロールスクリーンを採用、この辺りにもホテルライクさを感じます。
料金はオールインクルーシブのスタイルで、おやつを含めて1日5食の食事、館内施設の利用、24時間の産後ケアサービス、宿泊料が全て含まれた金額(エステのみ別料金)で至り尽くせりといったところですが、1泊2.9万円~(多様なプラン・料金体系あり)、平均予約泊数は2週間超えの15泊といいます。2021年12月に開業以降3000組の利用予約があったいい、今後の予約流入も順調といいます。
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産後ケアホテル・・・筆者も含め一般的にはなかなか想像が及ばない価格帯、そして新たなホテルライクサービスといえそうですが、日本には「里帰り出産」という文化があるものの、一方で晩婚化や核家族化などで周囲に頼れる人がいないケースも増えているといいます。それぞれのホテルでは今後もさらなる需要の取り込みを見込んでいます。