今度は欧州男子ツアー。「ルール違反」で来季を逃した選手、奇妙なスロープレーを批判されている選手。
米女子ゴルフのQシリーズ(予選会)ではドリス・チェンという選手が「ライの改善」による失格処分を受け、来季の出場を棒に振ったばかりだが、今度は欧州ツアーのQスクール(予選会)で「ラインの改善」による2罰打を受けた男子選手が来季の出場権獲得を逃した。
【厳しい教訓】
英国人選手のジアン・マルコ・ペトロッツィはQスクール2次予選の8番でホールインワンを達成し、最終予選進出を目指して奮闘していた。
“悲劇”が起こったのはバンカーにつかまった最終ホールの18番。ペトロッツィはバンカー内に入ってボールに近づき、歩測するために、その位置からバンカー内を横切りながらピンへ向かって歩いていった。
引き返してボールの位置へ戻り、バンカー内に自分がつけた足跡をレーキで丁寧にならし、それからバンカーショットを打った。そして、見事な寄せワンでバーディー・フィニッシュした、、、、はずだった。
ペトロッツィはゴルファーとしてのエチケット&マナーを守り、切羽詰まった場面でもバンカー内に自分がつけた足跡をきれいにならしたつもりだったそうだ。
しかし、打つ前にならしたことは「ライン(プレーの線)の改善にあたる(ルール13-2)」とルール委員から告げられ、2罰打を科された。最終予選進出の補欠に入ったはずだったが、この2ストロークで道は絶たれた。
またしても将来未来のある若い選手がルール違反で来季を棒に振ることになったが、OBの球を選手の母親が動かしたとして問題化した米女子ツアーのケースとは異なり、ペトロッツィは自身の誤りを素直に認め、反省している。
「今日、厳しい教訓を学んだ」
その通り、厳しい結果を招いたが、この教訓を得たことで、彼は2019年から導入される新ルールを含め、ゴルフルールというものを、もっとしっかり学ぶはずだ。この“悲劇”を目の当たりにした他選手たちも「明日は我が身」と気を引き締めたことだろう。
そうなれば、この“悲劇”も最終的には誰かのためになる。そもそもゴルフルールは選手を罰するためではなく、救済するためにあるものなのだから、その存在意義を活かしてこそ、プロゴルファーというものである。
【ルール違反ではないのだが、、、】
「ライの改善」「ラインの改善」はルールブックに明記されているゴルフルールだが、エチケット&マナーを重んじるゴルフにおいては、ときとしてルール自体に抵触していなくても批判の的になることがある。
欧州ツアーのトルコ航空オープン(11月1日~4日)では、ある選手のあまりにもスローなプレーに対し、批判の声が多数上がった。
英国人のサム・ホースフィールドは今季から欧州ツアーにフル参戦している22歳の新人選手。まだ未勝利だが、世界ランキングは158位まで上がりつつあり、欧州ツアーのルーキー・オブ・ザ・イヤー候補に上がっている。
しかし、上昇傾向にある成績とは裏腹に、「プレーが遅すぎる」という批判が巻き起こった。なぜ、それほど遅くなるかといえば、ショットする際、構えてからスイングを始動するまでの間、完全なる静止状態に入り、そのまま20秒以上、じっと止まっているからだ。
ツアーが定めている「ペース・オブ・プレー」の規定上は、1ショットの所要時間は最大40秒(最初にショットする選手には50秒)とされているため、ホースフィールドのショットは、この規定内に収まってはいる。だが、毎ホール毎ショット、構えたまま20数秒間、静止すれば、積もり積もった遅延時間は多大になる。
折りしも、昨今のゴルフ界では「スロープレー撲滅」が声高に叫ばれている。そんな中、ホースフィールドのプレーは「遅すぎる」「間違いなくスロープレーだ」「ペナルティにすべきだ」等々、いろんな声がSNS上にも飛び交った。
ルールにずばり該当してはいないものの、批判が噴き出した同様のケースは過去にもいくつかあった。奇妙なワッグルを何度も繰り返さないとスイングに入れなかったケビン・ナ。何度も何度もグリップを握り直さないとスイングを始動できなかったセルジオ・ガルシア。
どちらも、プレショット・ルーティーンにいつしか「悪癖」が加わり、そこから抜け出せなくなったという状況だった。
ホースフィールドの場合も「そうしよう(静止させよう)としているものではない。今、僕は、これまでずっと行ってきた僕の元通りのルーティーンに戻そうと必死に取り組んでいる」とのこと。
そんな中、何よりの救いだと感じられたのは、欧州ツアーの先輩選手たちが将来有望な若きホースフィールドを優しく見守ってくれていることだった。
たとえば、同大会の最終日にホースフィールドと同組で回ったダニー・ウィレットは「サムはとてもいいヤツでグレートプレーヤーでもある。モノゴトは、ときとして見た目よりずっと大変なこともあるけど、彼ならできるはず。応援しているから頑張ってほしい」とエールを送っていた。
ちなみに、ガルシアやナは、周囲からの批判、とりわけギャラリーから激しい野次を受け、最終的にはどちらも自力で「悪癖」を直し、フツウのスイングに戻すことができ、現在に至っている。だが、短期間で悪癖を修正するのは、もちろん大変な苦労だったはずだ。
そう考えると、ルールブックに明記されていることをとにかく遵守することは、むしろずっと楽なのではないかと思えてくる。