全米プロゴルフ選手権が開幕した一方で、ノーマンの新ツアー周辺には暗雲?選手のスポンサー契約解消も!
今季2つ目のゴルフのメジャー大会、全米プロがオクラホマ州タルサの名門サザンヒルズで始まったちょうどそのころ、サウジアラビアのオイルマネーに支えられながら新ツアー「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」を創始しようとしているグレッグ・ノーマン周辺には暗雲が押し寄せ始めた。
ノーマンがCEOを務めるリブ・ゴルフ・インベストメンツの役員でノーマンを補佐する筆頭的な役割を担っていた人物が、5月18日(米国時間)に突然、辞任。
それと前後して、かねてからPGAツアーからリブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズへの移籍を示唆する言動を見せている英国人選手のリー・ウエストウッドとルイ・ウエストヘーゼンが長年のスポンサーから契約を解消された。
どちらの動きも、その発端となったのは、ノーマンの発言である。
今週の全米プロにディフェンディング・チャンピオンであるフィル・ミケルソンの姿がないのは、ミケルソンの発言が大騒動へ発展したことが原因だ。ミケルソンの肉声が世の中に拡散されるやいなや、瞬く間にスポンサー契約をほぼすべて失った様子を傍から眺めた人々は、「口は災いの元」という教訓をあらためて噛み締め、気を引き締めたのではないだろうか。
しかし、ノーマンは、そうではなかったようだ。
6月9日からロンドンのセンチュリオンGCで開催予定のリブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ初戦を1か月後に控えた5月11日、ノーマンは欧米メディアを集めてメディア・デーを開き、自身の念願のツアーのキックオフへの喜びを得意げに語っていた。
その際、欧米メディアからは、サウジアラビア国内で近年に起こった殺害事件や人権侵害など世界各国から激しく批判されている事件に対するノーマンの意見を求める質問が飛んだ。
すると、ノーマンは「誰だってミスはおかす」「私は過去は振り返らない。前しか見ない」と語り、挙げ句に「私は政治家ではないから政治には関わらない」「サウジ政府と私は無関係だ」と言い放った。
その発言をノーマンの横で聞いていたのが、ノーマンの補佐役を務めていたリブ・ゴルフ・インベストメンツCCO(チーフ・コマーシャル・オフィサー)のショーン・ブラッチェス氏だった。
ブラッチェス氏は、かつて米ESPNで役員を務め、F1レースなどの中継や報道に手腕を発揮した能力と実績を買われて、リブ・ゴルフのCCOに就任していたのだが、「ノーマンの発言を聞いた瞬間、ブラッチェス氏は顔色を変え、即座に辞任を決意した」と英メディアは伝えている。
ノーマンの発言に世界中から激しい批判が押し寄せていることは言うまでもない。そして、その発言内容を重く見た国際輸送サービス大手のUPS社は、ウエストウッドとの長年のスポンサー契約解消とウエストヘーゼンとのアンバサダー契約解消を決めたことを米スポーツイラストレイテッド誌が報じた。
この役員1人の辞任と2選手とのスポンサー契約解消がきっかけとなって、次々に同様の動きへと発展する可能性は大いにある。
英国紙テレグラフは、「サウジ側もノーマン発言に不快感を示しており、ノーマンがリブ・ゴルフ・インベストメンツのCEOから去ることにつながるのではないか」と書いている。
「口は災いの元」。気を引き締めるべしである。