ユダヤ団体「イスラエル在住の高齢のホロコースト生存者をコロナから救え」3回目ワクチン接種を支援
接種会場に行くためのシャトルサービス、歩くことが不自由な方のための訪問接種などに活用
第二次世界大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。戦後70年以上が経ち、当時の生存者たちも高齢化が進んでいる。イスラエルに住んでいるホロコースト生存者は現在約179,600人。64%が欧州から来て、16%がモロッコ、11%がイラク、4%がチュニジア、2%がアルジェリアとリビアから来ている。そして2020年には17,000人のホロコースト生存者が死亡してしまい、そのうち900人は新型コロナウィルスに感染しての死亡だった。
ユダヤ人対独物的請求会議は、イスラエルに住んでいる10万人のホロコースト生存者が3回目のワクチン接種ができるように、500万シェケル(約1億7000万円)を寄付した。一人暮らしの高齢者が接種会場に行くためのシャトルサービスの支援、歩くことが不自由な方のための訪問接種などの支援に活用される。イスラエルのUnited Hatzalahが協力して高齢のホロコースト生存者がワクチン接種ができるように支援する。
ホロコースト生存者の証言で「記憶のデジタル化」を
ホロコースト当時のことを知っている人も少なくなってきており、近い将来にはゼロになる。そのため現在、欧米やイスラエルでは「ホロコーストの記憶のデジタル化」が進められており、当時の映像や写真、ホロコースト生存者のユダヤ人らの体験記のインタビュー動画をネットで公開したり、ホログラムによる生存者とのリアルタイムの会話ができたりデジタル化された生存者の記憶がホロコースト教育などにも積極的に活用されている。
欧米や中東では今でも反ユダヤ主義が根強く、「ホロコーストは存在しなかった」「ユダヤ人は600万人も殺害されていない」といったホロコースト否定論も多く、ホロコースト生存者らがいなくなってしまっては、本当にホロコーストはなかったというホロコースト否定主義が正しい歴史になってしまう、いわゆる歴史修正主義が広まってしまうことを多くのユダヤ人が懸念している。
高齢化が進んだホロコースト生存者が心身とも健康なうちに1つでも多くの証言や体験を収録してデジタル化して後世にホロコーストの歴史を伝えようとしており、これから10年が勝負である。そのためにもユダヤ人団体としては高齢のホロコースト生存者が新型コロナウィルスで多く死亡していっている現状をなんとか食い止めたい。