いよいよ韓国大統領選当日、押さえておきたい4つのポイント
今日3月9日、大統領選の投票日を迎えた韓国。与党、最大野党ともに「我こそは」と勇ましいが実情は「超薄氷の勝負」と見られている。5年に一度の「長い一日」をどう見るのか、観戦ポイントをまとめた。
●投票は19時30分まで
今回の大統領選では、これまでよりも投票時間が90分延長される。
6時から18時までは一般有権者が投票し、18時から19時30分までは新型コロナに感染した確診者と自宅隔離者が投票する時間となる。
問題はこの、後者の投票がスムーズにいかない部分にある。
まず、対象者についてだが、「感染者(確診者)」とは、PCR検査により新型コロナ感染が確定した人のことだ。韓国では3月8日の一日だけで30万人以上が新たに新型コロナに感染するなど、オミクロン株拡大のピークを迎えている。
韓国政府によると、3月5日0時の時点で入院していた患者は軽症から重症まで含め1万8429人で、他に102万人近い自宅療養者がいた。この人々のうち、保健所が許可した人々が投票を行える。
一方で「自宅隔離者」とは新型コロナ確診者と濃厚接触をして自宅隔離をしている人を指すのだが、韓国では感染者の同居人への自宅隔離が免除されているため、実際に対象者は多くない。
実は期日前投票2日目にあたる5日の18時から19時30分まで、同様に新型コロナ確診者・隔離者の投票時間が設けられたが、全国で大混乱が起きた。
投票用紙を係員が回収するという秘密投票の原則が守られない方法が採られ、待機時間の長さに体調不良を訴える人も出た。さらに記入済みの投票用紙が配られるなど中央選挙管理委員会の不手際に批判が集中した。訴訟も起きる見通しだ。
記事を書いている9日7時の時点で、5日に投票を終えた、さらに今日9日に投票が許可される新型コロナ確診者・隔離者の統計は発表されていない。
感染者の増加が続いており、全国で対象者は数十万に及ぶと見られる。韓国の有権者が約4420万人だ。今回の選挙は「超超薄氷の勝負」といわれているので、新型コロナ感染者の投票が1〜2%を動かし結果に大きな影響を及ぼす可能性もある。
わずか90分で無事に全ての新型コロナ感染者が投票できるかどうかが、懸念されている。
【参考記事】
韓国大統領選、コロナ感染者の投票でトラブル…「不正選挙疑惑」の火種に?
https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20220307-00285405
●投票率80%超え?
韓国では大統領選への関心が高く、高い投票率が続いてきた。これは大統領が国の顔であると同時に、強い権限を持ち国内外の政策に及ぼす影響が大きいためだ。
過去の結果を見ると、2017年12月に行われた前回大統領選では77.2%、その前の12年12月の大統領選では75.8%と高い水準を維持している。
今回の選挙はこれを上回り、投票率が80%まで到達するのではないかという論調が韓国メディアにある。80%を超える場合、2000年代以降はじめてとなる。
理由は大きく3つある。
まず「進歩(革新)派」の李在明(イ・ジェミョン、57)と、「保守派」の尹錫悦(ユン・ソギョル、61)が正面からぶつかるいわば世論を二分する選挙である点だ。両候補以外に最も支持を集める正義党の沈相奵(シム・サンジョン、62)候補の支持率は3%程度となっている。
次に期日前投票率が36.93%と、高い関心が数値となって現れている点がある。そして最後に接戦が伝えられている点が、投票を誘発するのではないかとされる。
なお、投票開始から6時間が経過した9日午後12時時点での投票率は約20.3%となっている。
●投票率が高いとどちらが有利?
投票率が高い場合には、与党・共に民主党の李在明候補が不利になるという見方が多い。選挙戦の間じゅう、政権交代を求める世論が過半数を超えていたためだ。
また、20代30代の投票率も注目される。これは投票先がパターン化している40代から上の世代に比べ、20代30代には大幅な振れ幅があるためだ。
前回の大統領選における20代の投票率は76.1%、30代は74.2%といずれも平均を下回った。今回は20代30代の女性票は「非尹錫悦」が優勢、20代男性は「尹錫悦」に集中、30代男性は「李・尹半々」と見られている。
なお、全体の有権者のうち20代は14.9%(約659万人)、30代は15.1%(約667万人)と合計で約30%を占める。これに18〜19歳の有権者2.2%(約98万人)が加わり、「読めない」選挙の一因となっている。
一般的に、期日前投票は集結力が強い李在明候補の票が多く、本投票日は尹錫悦候補の票が多いと見られている。
このため、与党側は投票率に気を揉むことになるが、選挙戦の最終盤になってフェミニズムを正面から否定するような尹候補側の動きが目立つ点が変数として存在する。
これに反感を持つ女性票の伸びが高い投票率に含まれる可能性もあるため、高い投票率が李候補に不利とは一概には言えない部分がある。
●投票結果はいつ分かる?
19時30分の時点で、KBS・MBC・SBSといういわゆる「放送3社」合同の出口調査結果が発表される。また、JTBCという全国紙『中央日報』系列のケーブルテレビ局でも独自の出口調査結果を発表するという。いずれの放送局もYoutubeで同時に番組を流すため、日本からでも視聴できる。
その精度についてだが、過去の大統領選では出口調査での勝敗が開票後の結果と一致していた。だが今回は期日前投票率が過去最高の36.93%となり、これに対する出口調査は行われていないため予想が難しいという指摘がある。
しかし3月8日に選管が年齢・地域・性別といったデータを放送局と世論調査会社に提供しており、これは今日の出口調査結果の結果や過去の世論調査に当てはめることで、精度を確保できると韓国メディアは報じている。
つまり、19時30分の出口調査結果が重要ということだ。
一方で、「結果が判明するのは0時過ぎになる」(与党関係者)という見方も存在する。これは選挙が接戦になる場合、ある程度の開票が行われてからではないと確実な結果は分からないとするものだ。
確かに与党は「1.5%から2%差での勝利」、最大野党・国民の力は「8〜10%差での勝利」を公言しているが、実際には両陣営とも「超薄氷の勝負」と見ている点に変わりはない。
19時30分に発表される出口調査結果が僅差の場合、当確までには時間がかかる可能性はある。前述したように期日前投票は李候補の票が多いとされるため、出口調査で尹候補が僅差でリードしているようなケースでは、時間がかかる。
なお、中央選挙管理委員会によると、開票にかかった時間は12年の大統領選(投票率75.8%)で4時間35分、同様に17年の大統領選(同77.2%)では5時間38分だった。
今回は19時30分からの開票となる。こうした点から、どんなに遅くとも翌日10日の午前1時には結果が分かるものとみられる。