3割近くが「希望する種類・内容の仕事が無い」…完全失業者の仕事につけない、その理由
68万人は「希望する種類・内容の仕事が無い」で完全失業者に
仕事に就きたくて探しているが無職状態にある「完全失業者」。この人たちはどのような理由で職に就けずにいるのだろうか。その内情を総務省統計局が発表した労働力調査の公開値から確認していく。
まず「完全失業者」という言葉の説明。これは単なる失業者では無く、「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」のすべてに当てはまる人のみがカウントされる。例えば失職しているが怪我のためにすぐには働けない人などは、この「完全失業者」には該当しない。
2014年における完全失業者数は236万人、前年比でマイナス29万人。そのうちある程度の理由(=なぜ仕事につけないのか)が明確化している人について、まとめた結果が次のグラフ。もっとも多い理由は「希望する種類・内容の仕事がない」で、人数では68万人が該当している。
2014年分のグラフ上の人数の合計が236万人に達しないのは、「その他の事由」があるため。「賃金・給与が希望と合わない」の回答者数は2003年以降ほぼ横ばいを続け、2012年以降は減少傾向にある一方で、「希望する種類・内容の仕事がない」「求人の年齢と自分の年齢が合わない」「条件にこだわらないが仕事がない」の回答人数が2008年から2009年にかけて急増している。特に「条件にこだわらないが仕事が無い」は2倍近くに増加している。「リーマンショック」で労働市場が急激に悪化し、就業がかなわない人が増えた結果と見るのが道理は通る。
前年2013年から今年2014年の動きを確認すると、グラフ上に表した主要項目では「賃金・給料が希望と合わない」以外はすべて減少≒状況の改善。特に最低限の求人があれば充足される「条件にこだわらないが仕事が無い」の値は金融危機以前の値すら下回っている。それなりに条件が限定される「希望する種類・内容の仕事が無い」でも金融危機ぼっ発以前の水準にまで減少している。「リーマンショック」による労働市場悪化の影響はほぼ無くなり、雇用市場の改善が進んでいることがうかがえる。
失業者の声、世帯別に見ると…
これを年齢階層別にみると、世代別の失業事情を見ることができる。
・若年層ほど「技術・技能」不足が多い
・家族を抱えている人が多いこともあり、中堅層は(35-44歳は特に)「勤務時間・休日」などの条件がクリアできず、仕事が見つからない
・どの年齢階層も「条件にこだわらないが仕事がない」割合は数%ほど存在し、世代別の差異はほとんど無い
・若年層ほど「希望する種類・内容の仕事がない」が多い
・高齢層ほど「求人の年齢と自分の年齢が合わない」が多い
・65歳以上では「賃金・給料」「技術・技能」に関する問題が無い
若年層ほど「希望する種類・内容の仕事がない」が多いのは、「仕事における需要と供給のミスマッチ」が多分に作用していると見て間違いない。さらに「技術・技能」が不足しているからこそ、希望職種・内容が限定されてしまうパターンも少なからず存在すると考えると、単純な「ミスマッチ」以外に「経験・技能不足による選択肢の少なさ」が就職活動の上で足を引っ張っている場合も想定される。就職活動で経験や技能は求職者の選択肢を増やす、重要な武器であることが改めて分かる。
高齢層ほど「求人の年齢と自分の年齢が合わない」が多いのは、「年齢のミスマッチ、あるいはハードル」が問題。本人はやる気(、さらには技術や経験)を有するものの、年齢という越えられない壁が立ちはだかり、職につくことができない状態。ただし厚生労働省側では「募集・採用における年齢制限の禁止について」との公知を出して、事業主に対して労働者の募集及び採用について年齢制限の原則禁止を義務付けている。
2014年においては前年比で失業者数・失業率そのものが改善しており、この点は素直に喜ぶべき。一方、失業理由は相変わらず世代によって大きな違いを見せているが、個々の世代における問題点の明確化ができれば、その「問題点」の解決方法を模索し、手を打つことで、各世代の雇用問題がさらに改善できる可能性は高い。特に「労使間の条件のミスマッチ」は情報の集約と容易な検索ができる環境の整備、「経験・技能不足」はそれらを習得させることで、小さからぬ進展が期待できる。
他方、労働市場そのものが大きくならないことには、やりくりするのにも限界がある。そのためにも景気の回復と新たな雇用市場(=産業)の創生もまた、完全失業者を減らす施策として高い優先順位で求められよう。
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