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【プロデューサーが語る】街をメタバースに再現『バーチャル渋谷』でハロウィンイベントがことしも開催中

秋吉健太編集者/コンテンツプロデューサー

2020年、コロナ禍にスタートし、渋谷区と連携したことでも大きな話題を呼んだ『バーチャル渋谷 au 5Gハロウィーンフェス』がことしも開催。3年目となる今回は2022年10月26日~ 2022年10月31日(月)に行われる。海外からも人が訪れるようになったいま、『バーチャル渋谷』が目指すものについて、このプロジェクトのプロデューサーであるKDDI 革新担当部長・三浦伊知郎さんに話を聞いた。

2020年のスタートから世界中から約100万人が参加している『バーチャル渋谷』
2020年のスタートから世界中から約100万人が参加している『バーチャル渋谷』

『バーチャル渋谷』プロデューサーインタビュー

三浦伊知郎さん(以下:三浦さん)「僕が現在働いているKDDIは、僕みたいに有期雇用の部長を積極的に雇おうという制度を持っているんです。全然違う社会人カルチャーを事業に参加させることで、いい意味でのハレーションを起こす。その結果のアウトプットとしての例が『バーチャル渋谷』なんじゃないかと思います」

2020年4月に緊急事態宣言が出され人々が外出を控えた当時、それまでは毎年話題となっていた渋谷のハロウィンのタイミングで脚光を浴びたのが3D空間に用意された『バーチャル渋谷』だった。

「渋谷の課題をテクノロジーとコンテンツの力で解決したかった」(三浦さん)
「渋谷の課題をテクノロジーとコンテンツの力で解決したかった」(三浦さん)

バーチャルで渋谷の課題を解決する

「元は渋谷の持つ2つの課題を解決したかったんです」と三浦さん。どのような課題があったのだろう。

三浦さん「一つは渋谷のオーバーツーリズム。例えばハロウィンの時期は渋谷駅前のスクランブル交差点に多くの方が来て、騒いだり写真を撮りますよね。でもそのあとはあまり消費行動につながらないという状況だったんですね。それで渋谷区といろいろ協議して、僕らの持つ技術といろんなコンテンツと掛け合わせて、渋谷のいろんなところを回遊してもらって、何かを食べてもらったり、買っていただいたり、経済をもっと動かすという思いがあったんです。そしてもう一つは、コロナ禍でクラスターを避けるために『ハロウィンで渋谷の交差点に集まらないで』というものでした」

現在はバーチャル上に渋谷の街を再現しているこのプロジェクトだが、2020年の時点では5G(第5世代移動通信システム)を活用したリアルイベントで設計されていたのだそう。政府は2020年4月に緊急事態宣言を発出。その影響でこのプロジェクトも全て中止になるかと思われたが「この企画をバーチャル空間で展開します」と作られたのが渋谷区公認の配信プラットフォーム『バーチャル渋谷』だった。オープニングイベントとして、アニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』のファンイベントをそこで開催したことも大きな話題となった。

三浦さん「2020年は誰もが外出を控えたので渋谷のスクランブル交差点にはほとんど人がいなくりましたよね。その年のハロウィンで、もしいつものように人が集まったらそこからクラスターが発生してしまうかもしれない。なので渋谷区と一緒に『#StayVirtual』という言葉で『渋谷区としてはバーチャル空間を用意したのでそこい行って欲しい』とメッセージを出せたんですね」

現在はバズワードとして知られている「メタバース」という言葉がまだ浸透していない2020年、バーチャル空間に現れた『バーチャル渋谷』はテレビやwebニュースなど各種メディアに取り上げられ、SNSで拡散された。

『#StayVirtual』のパネルを手に、『バーチャル渋谷』について語る渋谷区・長谷部区長(画像は2020年のもの)
『#StayVirtual』のパネルを手に、『バーチャル渋谷』について語る渋谷区・長谷部区長(画像は2020年のもの)

街をそのままバーチャル上に再現するために必要なこと

バーチャル上に街を再現するという取り組みを行う上でどのような苦労があったのだろう。

三浦さん「元々リアルイベントで設計していたものを急遽バーチャル上で展開することになったので、スケジュールが厳しかったというのもあるんですけれども。一番苦労をしたのは渋谷の街をそのままバーチャル上に再現することでした。建物や土地の権利を持っている方にバーチャル上で再現することについて説明して許可をいただきました」

三浦さん「渋谷区としても『ハロウィンはスクランブル交差点に来ないで』とか『マナーを守って』と言ってもなかなか難しいものがありますが、『バーチャル空間にエンタメが用意されているのでそちらに行ってください』という風に促すことができたんですね」

『バーチャル渋谷』にて3回目となるハロウインイベントが開催中

ことしで3回目となるハロウィンイベント『バーチャル渋谷 au 5Gハロウィーンフェス』は10月26日〜10月31日(月)まで開催中だ。今回はどのような内容なのだろう。

三浦さん「3年目となることしは、日本が外国からの観光客の受け入れを開始したタイミングでもあるので、アニメやアイドル、VTuber(ブイチューバー)など『これがJAPANだ』と言われるようなテーマを持ってコンテンツを用意しています。メタバース上に用意した空間なので、世界中どこにいてもこの場所に来ていただけるということと、これから日本も観光立国になっていくと思うので、そういった中で日本の強みであるコンテンツ、外国の人にも楽しんでいただけるコンテンツを用意しました」

バーチャル空間で楽しめるさまざまなコンテンツを用意
バーチャル空間で楽しめるさまざまなコンテンツを用意

バーチャルでこれからやりたいこと

巨大な街をバーチャル上に再現した『バーチャル渋谷』、これからはどんな展開を考えているのだろう。

三浦さん「クリエイターエコノミーに繋がることを作っていけたらと思っています。バーチャル上に空間を用意するので、そこに自分が描いた絵が置けるとか、路上ライブができるとか、そういうことをやって行けたら面白いんじゃないかと。これからもいろいろなメタバース空間ができると思うんですけれども、僕らのアドバンテージは街が絡んでいることなので、渋谷の街の中、『バーチャル渋谷』の中で、例えば1万人がいる中で路上ライブをすることは理論上可能です」

”革新担当部長”が考えるこれからの生き方

三浦さんにいただいた名刺には『革新担当部長』という肩書きが表記されていた。これまでは大手通信会社やファッションブランドで働き、現在はKDDIで有期雇用社員として働く彼が考えるこれからの時代の生き方に話を聞いた。

三浦さん「僕は学生のときに世界60カ国ぐらいバックパッカーとして旅したんですけど、そこで学んだことは『人間は誰しもクリエイターだ』と思ったんですよ。人生って選択の連続で、自分の人生を創っていくってことを考えると、誰しもクリエイター。一つの会社に勤め続けるっていうのも一つのすごいスキルだと思うんですね。自分の人生をクリエイトしていく上で」

学生時代からいままで世界60か国を旅した三浦さん。「人生は選択の連続ですよね」
学生時代からいままで世界60か国を旅した三浦さん。「人生は選択の連続ですよね」

三浦さん「ライフステージによって自分の思っている人生がクリエイトできないと思ったら、違うところに行くという選択肢も全然あると思っています。いまの時代、選択できる道というのもたくさんあると思うので、みんながクリエイターとして自分の人生を創っていく中で、より良い人生を創っていくために、日本に住むのも海外に行くもそうだし、転職してもそうだし、どんな道を選んでもいいんじゃないか、強くそう思います」

「バーチャル渋谷 au 5Gハロウィーンフェス」
開催場所:渋谷区公認配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」
10月26日(水)~10月31日(月)

10/26(水)/ さとうもか バーチャルLIVE 19:30 (開場、 20 : 00 (開演)
10/27(木)/ FRUITS ZIPPER TRICK or FRUITS? 20:30 (開場) 、21 : 00 (開演)
10/28(金)/ シスター・クレア×フレン・E・ルスタリオ ふたりハロウィーンパーティー21:30 (開場)、 22 : 00 (開演)
10/29(土) パリピ孔明 ハロウィーンパーティー 月見英子 × 久遠七海 19:30 (開場)、 20 : 00 (開演)
10/30(日) ヨンア × PAL CLOSET スペシャルライブ! 14:30 (開場)、15 : 00 (開演)
10/30(日) ONLY VOICE メタバースガールズグループオーディション 17:30(開場)、 18 : 00 (開演))

編集者/コンテンツプロデューサー

編集者としてのキャリアは出版、web合わせて約30年。雑誌「東京ウォーカー」「九州ウォーカー」、webメディア「Yahoo!ライフマガジン」など雑誌・webメディアの編集長を歴任。街ネタやおすすめの新スポットなどユーザーニーズを意識した情報を、それらの合わせ持つストーリーと共にお届けします。

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