母子世帯平均所得は世帯全体の6割足らず…母子世帯や高齢者世帯などの所得実情(2024年公開版)
世帯単位での所得の低さが問題視される母子世帯や高齢者世帯。その実情を厚生労働省の国民生活基礎調査(※)の結果から確認する。
次に示すのはいくつかのパターン別の世帯所得に加え、平均等価可処分所得(※※)を確認したもの。
「全世帯」は今調査の調査対象母集団全世帯における平均。「高齢者世帯」とは65歳以上の人のみ、あるいはそれに18歳未満の未婚の人が加わったもので、例えば高齢世帯に18歳以上の人が加わり、稼ぎ頭がいそうな世帯は該当しない。「65歳以上の人のいる世帯」とは異なるので注意が必要。
そして「母子世帯」とは死別・離別・その他の理由(未婚の場合を含む)で、現に配偶者のいない65歳未満の女性(配偶者が長期間生死不明の場合を含む)、と20歳未満のその子(養子を含む)のみで構成している世帯。「児童(18歳未満の未婚の人)のいる世帯」とは異なるので注意。
なお「可処分所得」とは実収入から非消費支出(税金・社会保険料)を引いたもの。
全世帯の平均所得は524.2万円。他方、平均等価可処分所得は295.9万円。これが高齢者のみの世帯となると304.9万円・221.1万円となる。単に高齢者がいるのみで、それより下の年齢(かつ18歳以上)の人がいる場合もある世帯では、働き手がいる可能性もあるため、所得などは高めとなる。
一方、母子世帯は303.1万円・167.5万円。多分に共働きをしている世帯から構成されている、児童のいる世帯とは大きな違いがある。
今件世帯類型別に、所得および平均等価可処分所得の推移を見たのが次のグラフ。なお母子世帯は取得年数によっては客体数が少数のため、値にぶれが生じている可能性があることに留意を要する。
まず平均世帯所得だが、全世帯は低所得世帯比率の増加に伴い漸減している。また「65歳以上の人のいる世帯」でも、高齢者世帯の割合が増えていることもあり、同じようなペースで減少している。一方、高齢者世帯や母子世帯、児童のいる世帯はバブル崩壊後あたりをピークとして、前世紀から今世紀にかけていくぶん下げた後は、ほぼ横ばいで推移している。所得に限れば全体的な減少は、低所得とならざるを得ない世帯の比率増加によるものであることが改めて分かる。
また、この10年ほどでは少なからずの属性で上昇への気配を示していた。ところが2021年以降は児童のいる世帯以外で減少に転じている。2021年は新型コロナウイルス流行、2022年はロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じた資源高騰が原因の、景況感の後退が影響しているものと思われる。
平均等価可処分所得で見ると、ピークはほぼ同じ時期だが、ピークを過ぎた後の各世帯種類の位置関係が、単なる平均世帯所得とは微妙に違うことが分かる。全世帯平均と児童のいる世帯、65歳以上の人のいる世帯がほぼ変わらず、高齢者世帯がやや上となり、母子世帯が下に置いて行かれているような形となっている。また、2021年以降の下落については、児童のいる世帯以外に母子世帯で持ち直しが見られるのが注目に値する。
全世帯の平均等価可処分所得を100%とした場合、母子世帯は56.6%(2022年)。1985年以降はおおよそ40%強を維持し、この10年ほどでようやく値が上向きになってきた程度で、それでも相変わらず低い水準に違いはない。生活の厳しさが改めてうかがい知れよう。
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※国民生活基礎調査
全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2023年6月1日に世帯票、同年7月13日に所得票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収、または政府統計共同利用システムにより回答され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票が4万471世帯分、所得票が4674世帯分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2023年分)は簡易調査に該当する年であり、世帯票と貯蓄票のみの調査が実施されている。
※※平均等価可処分所得
世帯の可処分所得を世帯人員数の平方根で割って調整した所得。単純に人数割りをした場合、同居する事による共有化のメリットが考慮外となるため。例えば4人家族で500万円の可処分所得なら、500万円÷√4=500万円÷2となり、250万円。1人暮らしの可処分所得250万円の世帯とおおよそ同じ生活レベルと見なすことができる。
単純な世帯所得だけでなく平均等価可処分所得も開示されているのは、該当する種類の世帯が構成人数によって所得に対する融通さに大きな変化が出てくること、そして可処分所得の方が重要性が高い事例が多々あることを考慮したものと考えられる。
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