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【東京都杉並区】女性ひとりでも気軽に楽しめるようになったと評判!荻窪の昭和レトロな路地裏酒場。

酔街草エディター・ライター(東京都杉並区)

『もつ焼カッパ』(荻窪店)

荻窪駅北口から線路を右手に見ながら阿佐ヶ谷方向へ2分ほど歩く。串カツ屋の角を左に入り1本目の細い路地を右折すると、「カッパ」の文字の赤提灯がもう手招きをしている。『もつ焼カッパ』は、今年で創業66年目を迎える荻窪でも古参のもつ焼き専門店だ。

「コの字」カウンターの店内は、歴史を感じさせる煤けてくすんだ品書きの木札が壁に並び、戦後の闇市の風情をそのままに残している。先代からの常連客は言うに及ばず、昭和レトロ好きにとっては、たまらなく居心地のいい空間なのだ。

15名も入れば満席となってしまう小ぢんまりとした店内は、三代目の女将・中根惠美さんが裏方のスタッフと連携しながら、たった一人でカウンターを切り盛りしている。

注文を取り、酒を注ぎ、焼き台に向かい、勘定を終えるまでの一連の所作には一切の無駄が無く、流れるように繰り返される。”八面六臂の仕事ぶり”とは、まさにこの女将を指す言葉だ。

半世紀以上に渡って継ぎ足されてきたという秘伝のタレは、二つの壺に分けられて焼き台の左右に鎮座する。小さいほうがニンニク入りで、もつの部位によって浸し具合を加減するのだそう。漢方の効いたやや甘味のある味付けは、初代が台湾出身だと聞いて納得。

卓上メニューもあるので、見えづらくてもご安心を。
卓上メニューもあるので、見えづらくてもご安心を。

もつ焼きは、すべて1本130円。レバ、チレ、タン、カシラ、ガツ、ヒモ、トロ、モドキ(軟骨の間の肉)など様々な部位が楽しめ、どれを食べても旨い。串が小ぶりなせいもあって、女性でも平気で10本近く空串を並べている。

サガリやハラミ、チレアブラ、スジ、ランソウといった品書きには載っていない希少部位もあるのだが、大抵は早い時間に売り切れてしまう。

ちなみに「レバは苦手で・・・」と連れて来られた女性が、「ここのレバなら食べられる!」と嬉々として帰って行く姿は、よく見かける光景である。

紀州備長炭にこだわり、鉄串で確かめながら絶妙な焼き加減で提供されるもつ焼き。その手さばきを眺めながら一杯呑める!

注文の際にタレか塩を選ぶのだが、初めての来店で迷ってしまうなら、女将にお任せにしてしまうのが正解だ。醤油味で頼む常連客も多いので、味変がてらトライしてみても損はない。

*お酒は二十歳になってから!
*お酒は二十歳になってから!

酒の種類はビール(大瓶・小瓶・黒)、焼酎、泡盛、日本酒、デンキブラン、ウィスキーが揃い、さらに老酒や五加皮といった中国酒が加わる。生ビールやサワー類は置いておらず、好みで焼酎を烏龍茶や炭酸で割って呑むのがここの流儀だ。

この店に勘定書きなどはなく、串と酒の本数を数えて手計算するという昔から変わらぬスタイル。常連客の中には、お銚子を10本近く目の前に並べるツワモノも・・・。

かと言って、”焼酎・泡盛はお一人三杯まで”の張り紙は伊達ではなく、昔からの酔客への注意喚起として守り続けられている。

串が少なくなってくると裏方さんによってテキパキと補充される。
串が少なくなってくると裏方さんによってテキパキと補充される。

昭和の時代のもつ焼き屋では「1種類につき最低2本から注文」という決まりが多かったものだが、今は1本ずつ頼めるのがスタンダードになった。『カッパ』もまた然りで、その分、いろいろな種類にトライできる楽しみも広がった。

ただ、一見さんらしきグループが最初にあれこれ何種類も頼んでしまう場面を見るにつけ、「2種類くらいずつ、何回かに分けて注文するほうが店側も楽なのだよ・・・」と、つい心の中で呟いてしまう。

もつのエスニック風味の小鉢も捨てがたい。裏方で働くミャンマー人やベトナム人スタッフの発案による「ハツスパイス」「ガツニンニク」「ゾゥトゥー(ベトナム風煮こごり)」(各280円)の3種類があり、それぞれの食感とスパイシーな旨さは病みつきになるはず。

辛味が好きなら、卓上の「七味唐辛子」とは別に特辛の「一味唐辛子」を出してもらえるので、こちらも一緒に試してみてはいかがだろうか。

『カッパ』の魅力に取り憑かれた常連客の中には、ほぼ毎日の様に通う地元の女性客や、中央線をわざわざ荻窪駅で下車しては通い続けるサラリーマンも多いそうだ。もつ焼きの旨さや店の雰囲気は言うまでもないのだが、何故に人々はこの店に惹かれるのだろうか‥‥。

スレンダーで洒脱な女将の人となりはもちろん、実は常連客ひとりひとりの嗜好を忘れずに覚えているという、卓越した記憶力にある。

「常連さんって、いつもだいたい同じものを頼むからね〜」と笑いながら語るものの、なかなか真似できるものではない。

かく言う自分も、席に座るなりビールの大瓶の栓が抜かれ、タンとモドキが1本ずつ焼き台に乗るという境地に、いつの間にやら辿り着けているのだが。

ちなみに、JR吉祥寺駅の南口にも同じ店構えの『カッパ』がある。元々は親戚同士だったのだが、暖簾分けをして別の経営者になっており、現在は中野にある『カッパ』のほうが女将の長男が営む系列店となる。

さらに今年になって、ベトナムに帰国した元スタッフがハイフォン市内に『カッパ』をオープンさせて、新たな系列店に加わることになった。

店が中根親子に代替わりしてからは、以前のような”親父の溜まり場” ”固苦しい酒場”といった雰囲気は払拭されて、女性のひとり客や若いカップルも入りやすくなった。

これからも、若い世代が『カッパ』を引き継ぎ育ててくれることを、大いに期待したい。

さてさて、今宵も大満足。ご馳走様!

『もつ焼カッパ』(荻窪店) Rettyページ

住所:東京都杉並区上荻1丁目4−3

電話番号:03-3392-5870

アクセス: JR中央線・東京メトロ丸の内線「荻窪駅」北口より徒歩2分

営業時間: 16:30~21:30(L.O.)  日曜、祝日定休

*予約不可 *支払いは現金のみ *テイクアウト可能

SNS: カッパ娘

エディター・ライター(東京都杉並区)

中央線沿線の街並みとお酒をこよなく愛する、元・雑誌編集者です。長年に渡って杉並区の荻窪に在住。居酒屋をはじめ、グルメに関する話題・スポットを中心に、皆さんの役に立つ情報を発信して行きます。

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