インターネットは好調…賃貸住宅業者への反応の媒体による違いをさぐる(2018年12月発表版)
情報誌や看板、ウェブサイトなど色々な手段で告知される賃貸住宅の情報。その告知に対する反応は媒体によってどのような違いが生じているのだろうか。賃貸住宅の管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」(※)の報告書から、その実情を確認する。
今報告書では「反響効果」と「反響数」がそれぞれ別の項目で掲載されている。「反響効果」は回答者(賃貸住宅業者)の主観的な判断によるところが大きく、あるいは「利用媒体」による結果が直接には結びつきにくいもの(要はリアクションの状況を雰囲気的に答えてもらったもの)。「反響数」は具体的な数字のカウントで比較できるもの、あるいは利用「される(お客から見た場合)」媒体そのもの。
例えば看板設置による「反響効果」は、お客が直接「看板を見てきました」と教えてもらうことで初めて効果のほどが確認できるが、そうでない限り変化があったとの把握はし難い。看板を設置してから来客数が倍増して急に忙しくなれば、そして看板に書かれているキャッチコピーを多くのお客が口にしていれば、明らかに効果があったような実感、「反響効果」があった、増加したと認識できる。また、問い合わせのメール数が5割増しとなれば、それは「反響数」が増加したことになる。
ともあれニュアンスとしてはおおよそ同じであるため、内部で区切りはしたが、同一のグラフにまとめ、状況の把握がしやすいようにした。なおSNSとはソーシャルメディアのこと。
多くの項目でオレンジ色(減少意見)が少なく、緑色(増加意見)の多さが目に留まる。特にカタカナの項目、つまりインターネット関連の媒体の増加が著しい。一方で紙媒体系は「緑色が少ない」「オレンジ色が多い」値を示しており、状況的には軟調である(「自社誌」は同率だが)。
・賃貸住宅情報の専門誌「情報誌」の集客効果は減少。「自社誌」は変わらず。
・インターネットやメールなどデジタル系ツールによる賃貸物件の情報提供成果が大きく増加している。
・「直接来店」は多少ながらも増加。
各項目間の相対関係としては、ここ数年の動向がほぼ踏襲されている。つまり「検索性・比較性・情報のスピード感の点で、インターネットがベストツールとして選ばれている」「『情報誌』『自社誌』の需要はインターネットにシフトした形」となる。
それぞれの項目において動きを把握しやすくするため、「増加」から「減少」を引き、いわゆるDI値を算出し、その結果をグラフ化したのが次の図。
メールやポータルサイトでの反響数の増加が著しく、自社ウェブサイトはそれに続くも勢いとしてはやや劣る。電話・FAXや看板なども意外と反響が増えているのも把握できる。
そして紙媒体が他の媒体と比べて軟調な状況にある、つまり反響効果が思わしくない(と管理会社に認識されている)事実が改めて確認できる。「旧来紙メディア=軟調」「新メディア、直接アプローチ(手段を問わず)=堅調」といった各ツール・ルートが置かれている立場が明確に数字となって表れている。この状況は前半期から変わるところは無い。
反響数項目(右側)では「メール」が一番効果が上がっている。そして「電話・FAX」「直接来店」の順と続く。利用者側の「手間をかけず、時間を拘束されず、確実で自分の需要にあった情報に関して業者へ確認をしたい」との考えが見て取れる。つまり、
・「来店」…時間を多分に必要とする。足を運んでも担当がいない可能性がある。いてもその場で求めていた回答が得られるか確証が無い(大抵の不動産屋へは「一見さん」となるので、その不動産屋の挙動までは分からない)。
・「電話」…時間は短時間で済み、足を運ぶ必要は無い。しかし担当がいないかもしれない。再度の電話が求められる可能性もある。
・「メール」…時間はかからない。担当の都合に合わせて返事がもらえるはず。ただし望んだ反応速度で返事が来るとは限らない。
と解釈できる。
「効率よく条件のよい物件探しをしたい」「購入では無く賃貸なのだから、支払い対価相応のリソースで物件を探したい」といった借り手の視線で考えれば、インターネットの利用は、より適切なツールを選んでいるに過ぎないことが分かる。特に昨今ではスマートフォンやタブレット型端末など、大型の画面を持つ、そして機動性に優れたモバイル端末の普及が進んでいる。映像やマップ機能との連動性を活かした、多方面からの情報提供により、利用者はより確かな品定めをすることが可能な時代である。
それらの特性を活かした、「より適切に情報を得られた」と利用者が満足でき、賃貸契約の具体的な話へと進めたい、と思うようなサービスの提供が求められよう。
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※賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)
日本賃貸住宅管理協会会員に対して半年ごとに定期的に行われている調査で、直近は2018年10~11月にインターネットを用いて実施。有効回答数は153社(回収率12.2%)。2018年4月1日から2018年9月30日に関する状況についての回答。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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