月極で新聞を購読している人はどれほどいるのか
月極の新聞購読者は3/4に満たず
新聞の主要な購読スタイル、月極。しかしながら紙媒体の新聞そのものの敬遠傾向や、世帯人数の減少に伴い、この「月極」による購読率が減少しているとの話もある。その実情を、財団法人新聞通信調査会が2016年10月に発表した「2016年メディアに関する世論調査結果」(2016年8月19日から9月6日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法で実施。有効回答数は3308人。有効回答者の属性は男性1568人・女性1740人、18~19歳70人・20代306人・30代460人・40代539人・50代524人・60代696人・70代以上713人)から、確認していく。
世帯単位・月単位で契約を交わし、原則毎日新聞を世帯まで配達してもらう購入方式を「月極」と呼んでいる。購読者にとっては確実に入手ができ、新聞社(新聞販売店)には固定客となるため、双方共にメリットがある。今調査対象母集団では回答時点で73.0%の人が月極で新聞を取得している。
新聞販売店では複数種類の新聞を取り扱っている。また複数の販売店とそれぞれ契約し、1世帯で複数の新聞を月ぎめで購入する場合もある。例えば一般紙と業界紙、業界紙とスポーツ紙、さらには複数の一般紙を購読して中身を比較するといった具合。そこで月極で取っている人に対し、どのような種類の新聞を取っているのかを複数回答で聞いた結果が次のグラフ。「全国紙」とは朝日、毎日、読売、産経、日経を、「ブロック3紙」とは北海道、中日、西日本新聞と定義されている。
全国紙は52.5%。県紙・地方紙が35.6%、ブロック紙が14.8%。スポーツ紙や夕刊紙、その他の新聞(業界専門紙など)は1割にも満たない。全部を足すと113.0%になるため、同一区分内で複数紙を購読している可能性もあるが、それでも複数購読はさほどいないことが予想できる。
そこで「同一区分内で複数紙を購読」のうち、一番ありそうなパターンとなる全国紙に関して、何紙を取っているかを聞いた結果が次のグラフ。4.6%が複数紙を購読している。
約22人に1人との割合が多いか少ないかは微妙なところだが、ともあれ全国紙の複数購読者はそれだけいることになる。
月極新聞購読者の変化と属性別実情
月極による新聞購読者の動向を経年変化で、さらには属性別で確認していく。まずは経年変化。データが取得可能な2008年度以降に関し、どの種類でも良いので月極で新聞を購読しているか、具体的にどの新聞を取っているか、その変化を見たのが次のグラフ。
もっとも古い2008年度時点では88.6%だった月極新聞購読者も、直近の2016年度では73.0%。10%ポイント以上の減少を示している。具体的な中身を見ると、地域性の強い県紙・地方紙はほとんど変化がないが、全国紙とブロック3紙が漸減し、これが全体値を押し下げている様子が分かる。ただし直近では全国紙の減退具合は平常運転状態だが、県紙・地方紙が大きな下落を示し、ブロック紙が逆に大きな上昇を示しているのが興味深い。
特に全国紙の減少ぶりは著しく、大よそ7割に減退、16.8%ポイントもの減少を示している。新聞で読まれている記事の上位には「地元関連」「社会関連」が名を連ねているが、その需要によりマッチした新聞が好まれ取られ続けていることなのだろうか。
これを属性別に見たのが次のグラフ。
性別では特に違いは無く漸減、世代別では50代以降はさほど大きな減少はないものの、それより若い世代における加速度的な減少ぶりが見られる。特に中堅層における減り方は著しく(縦軸の下限がゼロではなく40%であることに注意)、他の複数項目でこの世代の新聞と距離感を置く姿勢が浮き彫りにされている。40代は直近年度ではようやく急降下が止まった感はあるが、今度は50代でその流れを引き継ぐかのような大きな減りが確認できる。
他方18歳から19歳の年齢区分で、2012年度から2013年度にかけて大きく、非常に特異な上昇が生じている。これは単なるイレギュラー値なのではなく、新学習指導要領によって小中高校で新聞などを教材として活用することが示されたことを受け、学校などで手に取る機会が増えたことから、自宅でも取る・取ってもらう人が増えたものと考えられる。しかしその勢いも一時的なもので、再び漸減の動きを示しており、直近の2016年度では72.9%にまで減じている。
他の複数の調査でも、紙媒体の新聞購読者数・率は減少の一途をたどっている、特に若年層における新聞離れが著しい現状が確認できる。今件もまた、それを裏付ける結果に過ぎない。あと10年もすれば、全体に占める新聞の月極購読者率は半数を割り込む事態に陥ることすらありえよう。
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