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週末、大人達がざわついた:「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」の引力

小新井涼アニメウォッチャー
(筆者撮影)

昨年話題となった「若おかみは小学生!」を始め、「クレヨンしんちゃん」や「ドラえもん」、「プリキュア」の劇場版作品など、一見子供向けかと思いきや、蓋を開けると大人達まで感動してしまうという劇場版アニメには、これまでにも様々なものがありました。

ところがこの週末、同様にキッズ・ファミリー向けの劇場版アニメでありながら、上記の作品達とは少し違った反応と共に大人達の間で話題になっていた作品があります。

「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」です。

 

◆すみっコぐらしとは

「すみっコぐらし」は、「たれぱんだ」や「リラックマ」などでもお馴染みの会社・サンエックスで生まれたキャラクターです。

ぬいぐるみや文房具、ゲームといったグッズが販売され、昨年バンダイが行った「お子さまの好きなキャラクターに関する意識調査」では、「アンパンマン」、「ドラえもん」、「プリキュアシリーズ」、「仮面ライダーシリーズ」に次ぎ、「好きなキャラクターランキング男女総合TOP10」の第5位に入るなど、小学生までの子供達を中心に高い人気を集めています。

とはいえ、前述の予告映像をみていただくと分かると思いますが、いくら人気キャラクターとはいえ、正直第一印象だけでは、この映画が大人をざわつかせる内容であるとはなかなか想像がつきません。

しかもその反響というのも、どうやら「若おかみは小学生!」を始めとする上記の映画たちとは少し違うようなのです。

◆予想以上 < 予想外

本作の感想をみてみると、「●●かと思ったら××だった」といったフレーズを始め、とにかく”予想外”の内容であったという声が多いことがわかります。

上記に挙げた「若おかみは小学生!」を始めとする他の作品達は、一見子供向けではあるものの、あらすじや口コミをみると「確かに大人でも泣きどころがありそう」と、ある程度予想を抱くこともできるでしょう。

そうした作品に対しては、実際に鑑賞したら「その予想を上回るほど感動した」つまり”予想以上”だったという感想が多くなると思うのですが、今回の「すみっコぐらし」に関しては、実際に映画をみるまでは、まさか大人も感動する作品だなんて全くの”予想外”であったという感想が多いのが特徴だと思います。(余談ですが、「すみっコぐらし」のそもそもの設定を全く知らないで観に行った人は、登場キャラクターたちが紹介される冒頭5分の時点で「自分はどうやら大きな勘違いをしていたのかもしれない…」と、予想外の衝撃を受けるかもしれません)

◆映画「すみっコぐらし」の引力

そうした”予想外”の感動が生まれるほど作品の内容自体が素晴らしいのはもちろん、今回本作の評判がこれほどまで急速に広がっている要因としては、その”予想外だった”という感想自体が作品鑑賞への引力となっていることも大きいと思います。

「大人も泣けるほど感動できるという噂は本当だった!」という、ポジティブな評判をさらに大きくするプラスする、”予想以上だった”という感想も、もちろん人々の鑑賞を後押しする力になります。

しかし本作では、例えば「改札で切符を入れたらチョコが出てきた」とでもいわれたかのような、実際にみてみないことには何を言っているのかわからない”予想外だった”という感想が多く、それらがなければ恐らく「すみっコぐらし」の映画をみることはなかったであろう人々にまで「どういうこと?」と興味を抱かせ、劇場に足を運ばせる要因となっているのです。

今年だけでも数多くの劇場版アニメが公開され、そのどれもが大変に魅力的である中では、そこから抜きんでて作品を知ってもらうことや、鑑賞候補として選んでもらうこと自体なかなか難しいことだと思います。

そんな中で、この「すみっコぐらし」が持つイメージと、そこからは予想がつかない大人も感動する展開、そしてそれに驚いた人々による予想外だったという感想が引力となり、新たに興味を持った人が劇場に足を運んでいるというのは、非常に希少な出来事と言えるのではないでしょうか。

こうした大人達の反響を受けてか、キッズ・ファミリー向けというジャンルには珍しく、平日20時以降の遅い時間にも上映回を設ける映画館も数多く見受けられます。

仕事帰りに、この週末に、鑑賞した大人達がこぞってざわついた映画の実態を確かめてみるのも良いのではないでしょうか。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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