うんこはなぜ茶色いのか
うんこはなぜ茶色いのでしょうか。その理由を、うんこの専門家(消化器外科の医師)である筆者が真剣にまとめました。
食事中の方は、終わったらお読みください。
うんこが茶色い理由は、あの物質
うんこが茶色い理由、それは、「ビリルビン」というものが茶色い色をしているからです。
ビリルビンとは、血液のなかの赤血球(せっけっきゅう)という成分が壊れたあとのごみのようなもの。赤血球は、血を赤く見せている成分なので赤い血の球と書いて赤血球と呼びます。これには寿命があり、だいたい120日くらいでダメになって脾臓(ひぞう)という左のわき腹にある臓器で壊されます。その時に出てくるのがビリルビンです。これは黄金色をしている色素で、うんこの茶色のもとになっているのです。細かいことを言うと、ビリルビンが腸内細菌の作用で少し色が変わり、うんこの茶色になるのです。
ですから、うんこの茶色さはもともとは血液の成分だったのですね。
ビリルビンは脾臓で生まれますが、水に溶けないので体から出しづらい状態です。ですから水に溶けやすい状態にするために肝臓(レバーです)に運ばれ、水に溶ける状態になります。ビリルビンが水に溶けたものを「胆汁(たんじゅう)」と言い、やはり黄金色をしています。これが肝臓から腸に流れ出します。流れ出す先は「十二指腸(じゅうにしちょう)」という、胃の次に食べ物が通る小腸の一部です。ここで食べたものと一緒になって、小腸と大腸を通り、うんこになるのです。
白いうんこがある
実は、白いうんこがあります。いくつか原因がありますが、大人で多いものは、黄金色をしたビリルビンが腸に流れ出ない場合です。ビリルビンが水に溶けた胆汁の通りみちのことを「胆管(たんかん)」と言いますが、この胆管が石(胆石と言います)やがんなどで詰まってしまったとき、胆汁は腸に流れ出ることができません。
このとき、ビリルビンは行き場がなくなってやむを得ず血やおしっこに流れ出ます。血に混じると皮膚の色が黄色くなり、この状態を医学用語で「黄疸(おうだん)」と言います。見慣れた医師ならば、パッと患者さんをみて「この人は黄疸が出ている」とわかります。見慣れていなくても、わかりやすいのは目の中の白目の部分が黄色くなるため、それでわかります。
白いうんこが出た場合は、病院を受診しましょう。
黒いうんこ、赤いうんこに要注意
そしてうんこの色でもう二つ気を付けて欲しいものがあります。それは、
1, 黒いうんこ
2, 赤いうんこ
です。
黒いうんこの場合、よくある原因は二つ。一つは鉄分の薬を飲んでいる場合で、もう一つは胃や十二指腸に潰瘍(かいよう)などの病気がある場合です。鉄分の薬ならば問題ありませんが、後者だと問題です。こういった場合も病院を受診してください。黒いうんこがきっかけで、胃潰瘍や胃がんが見つかることはたまにあります。
そして赤いうんこの場合ですが、こちらは小腸や大腸、肛門の病気のことがあります。先ほどと同じような潰瘍(かいよう)が小腸や大腸にできることはありますし、がんのこともあります。一番多いのは肛門の病気、なかでも痔(ぢ)です。しかし、痔だと思って放っておいたらじつは大腸がんだった、というケースもあります。ですから赤いうんこを見た場合でも、一度は病院を受診するといいでしょう。
うんこを見る習慣を
このように、うんこで胃や腸などの病気が発見できることがあります。特にがんなどは早く発見するにこしたことはありません。うんこが黒ければ胃がん、赤ければ大腸がんの可能性も(高い訳ではありませんが)ありますから、がんにかかる人が増えてくる50歳以上の人はうんこを見る習慣をつけるとよいでしょう。
(参考資料)
赤血球の生理機能と産生調節 川端浩ら 日本内科学会雑誌 104(7), 1367-1374, 2015
寿命を終えた赤血球の処理機構-赤血球膜に出現する貪食目印分子に関する最近の知見- 菅野仁ら 膜(MEMBRANE),32(3),139146(2007)