全国では27.0%、最多普及は京都府の36.9%…FAXの世帯単位での普及状況
今でも現役でやりとりされる事例も多いが、インターネットの普及とともに必要性が減った家電の一つにFAX(ファックス)がある。ファクシミリ(facsimile)の短縮語で、電話回線を介して画像情報を送り伝える機器・仕組みを指し、かつては図版を素早く送る手段としては欠かせない存在だった。今では業務用はともかく、家庭用としてはインターネットとデジタルスキャナやデジタルカメラの併用で、ほぼ代替ができる。そのFAXに関して世帯ベースでの保有率を、総務省が2024年6月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に確認する。
次に示すのは回答者の世帯におけるFAXの保有状況。なお機器そのものは存在していてもしまい込んでいたり故障で放置しているなどの理由で、過去1年間に一度も利用していない、あるいは自前での調達ではなく勤め先から借りていたり経費で購入したものは該当しない。要は今現在でも利用しているFAXが自宅にあるか否か。
全体では27.0%が保有している。しかしながら20代世帯ではわずかに2.8%、30代世帯でも3.3%、40代でようやく1割を超えて17.6%となる。50代以上は3割以上を維持し、75~79歳では4割を超える。この動向を見るに、幼いころからインターネットに触れている世代はFAXの必要性を感じず親元から離れて暮らすようになってもFAXを購入することはなく、かつて必要だった世代はそのまま維持している実情が透けて見える。あと10年も経過すれば、その時の40代の保有率も(今現在の30代がそのままシフトして)数%となるだろう。あるいは必要性がなくなったことから廃棄し、さらに落ち込みを見せるかもしれない。
世帯構成別では若年層の単身世帯が1割足らずと少ない。また、高齢者を含む世帯が一段と高い値を示していることから、高齢者における需要が高いことも推測できる。
世帯年収別ではおおよそ高世帯年収の世帯ほど高保有率。元々年齢が上になるに連れて世帯年収が高くなる傾向があるのに加え、高世帯年収の自営・自由業者や、交友関係上のつながりの点で高世帯年収者ほどFAXが必要な高齢層との関係があるのかもしれない(あくまでも相関関係であり、「FAXを持っていれば高世帯年収になれる」を意味しない)。
都道府県別の保有率の実情を示したのが次のグラフ。
必要性を考えれば世帯主の年齢との連動が推定されることから、各地域の年齢階層別人口構成比と浅からぬ関係があるように思われるのだが、実際にはそのような動きは見られない。
もっとも低い値を示したのは沖縄県の9.1%、高い値は京都府の36.9%で次いで愛知県の34.7%、奈良県の33.5%。高い値の地域は農業関係でFAXによる連絡を多用しているとの話もあるが、この調査結果からだけではその裏付けはできない。とはいえ、地域によっては今なお1/3を超える世帯で(稼働状態での)FAXが存在しているのには違いない。
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※通信利用動向調査
2023年分は2023年8月末に、「世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、満20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に」「企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に」対し、郵送あるいはオンラインによる調査票の配布および回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万4059世帯(3万4196人)、2640企業。各種値には国勢調査や、全国企業の産業や規模の分布に従ったウェイトバックが行われている。
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