開発途上国への開発協力はなぜ必要か? その理由をさぐる(2018年版)
日本が新興国などに行っている資金協力や技術協力などの開発協力による支援はなぜ必要だと考えられているのか。国民の意思を内閣府の「外交に関する世論調査」(※)から確認する。
日本も含め先進国は開発途上国に対し、資金協力や技術協力などの開発協力を行っている。今件調査ではかつて「ODA」(Official Development Assistance(政府開発援助))との表現を用い、政府あるいは政府の実施機関により、開発途上国や国際機関に供与・貸与される、資金や技術提供による協力行為のことを対象としていたが、2014年調査分からは有償資金協力や技術協力も併せた、より広義な支援を意味する「開発協力」の表現が用いられている。
とはいえ目的はODAと何ら変わるところは無い。外務省の解説によると、ODAは国際社会での重要な責務であり、日本の信頼をつちかい、存在感を高めることに資する役割を果たしている。また開発途上国の安定・発展化に寄与することで、国際平和に依拠し、資源・食料を海外に依存する日本にはプラスとなるとも解説している。
この開発協力について、どのような観点から意義がある、実施すべきであると考えているかを聞いたところ、「エネルギー資源などの安定供給の確保に資するから」とする意見がもっとも多く、50.3%に達していた。
日本は石油、ガス、石炭などエネルギー資源の大部分を海外に依存しており、諸外国の情勢不安定化はそれらの資源の供給が不安定化することにもつながる(前世紀のオイルショックが好例)。この項目への回答者が多いのも納得できる話ではある。
次いで多いのは「国際社会での日本への信頼を高める必要があるから」で46.7%。信頼が無ければ外交交渉も経済的な協力関係も資源の買い入れもスムーズには進まない。海外とのさまざまな関係の維持強化のための基盤が信頼であり、それを高めるのは有意義であるに違いない。
続いて「開発協力は日本の戦略的な外交政策を進める上での重要な手段だから」が41.2%。外交政策の手段として開発協力を用いることには賛否両論があるが、外交は得てして損得勘定が重要な要素となることを考えれば、当然の話ではある。
「中小企業を含む日本企業や地方自治体の海外展開など、日本の経済に役立つから」は39.6%だが、表現や細部の対象、方向性は異なるものの、目指すところは「開発協力は日本の戦略的な外交政策を進める上での重要な手段だから」とさほど変わらない。
直近年分につき年齢階層別に見ると、複数の選択肢で中年層が高い値を示し、若年層と高齢層は低い傾向が見受けられる。
興味深い動きが2点。1つは若年層は関心度が低いこともあり、複数の項目で18歳~20代の回答率が他の年齢階層と比べて低め。ただし「国際社会での日本への信頼を高める必要があるから」「東日本大震災に際して得られた各国からの支援に応えるためにも、引き続き協力すべきだから」では高い値を示している。対外協力に関して、中年層以降とは異なる価値観、判断基準を持っているとの見方もできる。
他方高齢層では「中国などによる開発途上国への進出が著しく、日本の存在感を確保する必要があるから」「先進国として開発途上国を助けるのは人道上の義務又は国際的責任だから」などにおいて、他の年齢階層よりも高めの値を見せている。国際社会における日本の立ち位置について、低い評価を受けること、日本企業や自治体の展開の現状に不安を抱いている感はある。この数年、海外における日本企業の入札事案が他国、特に中国に競り負ける報道が相次いでいることから、それを受けての反応だろう。
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※外交に関する世論調査
直近分は2018年10月18日から10月28日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を持つ人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は1663人。男女比は806対857、年齢階層別構成比は10代42人・20代127人・30代206人・40代286人・50代286人・60代300人・70歳以上416人。過去も類似の方法で実施されている。
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