ボランティア組織が、事業型NPOへの成長に立ちはだかる「死の谷」とはなにか、どう乗り越えるのか。
自身の事業の経験を振り返っても、ボランティア型の市民団体やNPOが、事業で自立していく事業型NPOに発展・成長していく過程には、単に連続的ではない「死の谷」があると感じるのです。
OKa-Bizでも、NPOや市民活動団体の個別相談を受けることも多いのですが、どうも振り返ってみるとこの「死の谷」がお題なことが多い。
ボランティア団体の成り立ちは…
ボランティア団体の大半は、何かしらの問題意識や高い志から活動を始めたリーダー(個人もしくは複数)に共感する人々が一緒になって取り組みをしていくわけですよね。受益者から応分の見返りをもらう、というよりも実費負担程度をお願いする程度で、まさに「ボランティア」として運営し、それにより継続されているところから始まるわけです。
持ち出し運営「明るい社会、暗い家庭」
その後、活動の拡大の中で「ボランティア」だけでは、主催者の負担感がどんどん重くなっていくわけです。その中でボランティア活動として参加していたスタッフの中にはこんなはずじゃなかったと不満が出たり、辞めたりっていう人も出てくるし、なによりリーダーたちを中心に、時間的にもときには資金的にも持ち出し状態になったりするわけですね。この状態をやゆして「明るい社会、暗い家庭」とNPO業界では言われたりしますねw
結局、ここで大きく3つの選択肢があるのだと思います。
1)事業型への移行を目指す
2)がんばる、とにかくがんばる(苦しいやつw)
3)ダウンサイジングして、ボランティアで楽しめる範囲にする
0)辞める
どの選択が正しいということもないでしょうし、それはリーダーであり、メンバーの「決め」の問題だと思います。
この3)ダウンサイジングは、サービス提供の範囲を狭めたり期間を区切ったりすることで持続可能にするというもの。細く長く、という意味でこの選択肢も有意義だと思います。
一方で割と苦しいのは、2)ですよね。とにかくがんばる、ということで続けることはできるけれど時間的にも資金的にも持ち出しが続く。いや、これでも「ひーひー言いながら、じつは好き」っていう方もいますから、それもまた良いと思います。ただ、ある日突然 0)辞める となるのは利用者の方々にとっても影響があるので避けなかればいけません。
2)を経て、1)の事業型への移行を目指したいと感じる人々も少なくないように思います。
やっぱりこのままじゃ続かないから、事業自立したい
このままじゃ成り立たないから、事業自立していきたい、と考えるのが1)のケース。実際、ボクもG-netでいえば2001年10月に始めて、03年5月に法人化、04年から事業的な規模を大きくしていったのも、まさにこの理由でも、あります。
OKa-Bizで相談をお受けしていても、この相談が大変多いんですね「市民団体として、数年活動してきた。規模も大きくなって、喜ばれている。けれどやればやるほど赤字で大変で、このままじゃ続かないから、仕事にしていきたい」というお話。ところが、伺ってみるとサービスはほぼ無償だったり実費。ここに、葛藤が続いて生まれます。
「死の谷」が事業型NPOへの成長を妨げる
これまで無料や実費程度だったサービスを、持続可能な収益が生まれる様に価格を見なおしたり、民間企業や行政からの業務委託をうけた仕事を始める、ということを目指すという事。それにあわせて、専従者や有償のスタッフも生まれ、経費も払う…というふうに移行していくわけですが、ここには見えない「死の谷」が存在している様に思うのです。
・価格を見直したら、利用者が減るかもしれない不安
・お金をとったら悪いことをしている、不安
・有償のスタッフと無償のスタッフとの壁や断絶
・サークル運営から、組織経営への転換
リーダーの決め、と覚悟
こうした課題を乗り越えていけるかどうか、が大きな論点なのですが、最大のポイントはズバリ、リーダーの決め、と覚悟だと思うのです。
価格を見直したらタダじゃなきゃ…と利用者も一時的に減るでしょうし、有償スタッフとそうでないボランティアスタッフとの間にも難しさが生まれるのも往々にしてあること。運営や意思決定の仕組みも変わっていくのもしかたのないことで、それはいwあざ「成長痛」のようなものだと思います。
それを乗り越えてでもなお、社会課題の解決のために安定的に持続可能なサービスを提供していく決め、と覚悟の問題だと思うのです。
なにも事業型NPOだけが素晴らしい形態ではないと思います。3)の選択肢のように、ダウンサイジングしてボランタリー組織としての持続可能性を模索するのも良いだろうし、好きで仕方ないのなら持ち出しで、2)のチョイスだって悪く無い。
ただ、大半の事業型NPOは往々にして横たわるこの「死の谷」を超えて成長していったということは言えるのではないかと思います。