賃上げが日銀の金融政策の正常化に向けた最後の一押しに
15日、連合がことしの春闘の回答状況を公表した。経営側から回答が示された771社の労働組合の平均の賃上げ率は5.28%と33年ぶりに5%を超える水準となった。昨年の第1回回答集計値の平均値3.80%を大幅に上回った。
これを受けて、19日の日銀金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を含む金融政策正常化に向けた修正が行われる可能性が高まった。
ここにいくつかの疑問がある。そもそもどうして昨年から今年にかけて賃金が大きく上昇してきたのか。失われた30年と呼ばれる間にどうして賃金上昇が行われなかったのか。
1990年のバブル崩壊のタイミングで、日本での雇用体系が大きく変わってきていた。年功序列、終身雇用といったそれまで日本経済を支えていた制度が崩れてきた。実力主義といわれながら、結果として企業は賃金を抑えることとなった。
そこに物価の低迷が加わる。どうして物価が上昇しなかったのか。それは日銀が金融緩和策を怠ったからなどではないことが、ここ30年で証明された。
賃金は物価上昇に大きく影響を受けることが確かなのは、ここにきての賃金上昇の背景がこの物価高と人手不足に挙げられていたことからもたしかであろう。
物価は日銀の金融政策で上げられるものではなく、外部環境に大きく影響を受けることが、コロナ禍や地政学的リスクなどを受けて、あらためて示された。
また景気そのものがしっかりしていたこともあり、企業としても賃金引き上げが可能となっていたともいえよう。
物価の上昇とともに世界的な株価の上昇を背景に、日経平均が過去最高値を更新するなどしていたことも、企業が賃上げに動きやすくなった背景となっていた可能性もあろう。企業価値を示す株価が上昇しているのにかかわらず、従業員への待遇はこれまでと同じで良いのかと。