『ブギウギ』羽鳥(草彅剛)が、スズ子(趣里)に伝えた「バドジズのこころ」とは?
NHK連続テレビ小説(朝ドラ)『ブギウギ』の東京編が始まりました。
1938(昭和13)年となった第6週。
24歳のスズ子(趣里)は、22歳の秋山(伊原六花)と共に東京へとやってきました。
スズ子のモデルである笠置シヅ子の上京も、同じ昭和13年でした。
第6週の大きな見所が、「梅丸楽劇団」の音楽監督である、羽鳥善一(草彅剛)との出会いです。
羽鳥のモデルはもちろん、笠置シヅ子にとって音楽のパートナーであり、プロデューサーともいえる、作曲家の服部良一。
笠置シヅ子と服部良一の出会い
服部良一と笠置シヅ子が初めて向き合ったのは稽古場でした。
シヅ子の評判を聞いていた服部は、どんなプリマドンナが来るのかと、大いに期待していたそうです。
ところが服部の自伝によれば、現れたシヅ子は・・・
「裏町の子守女か出前持ちの女の子のようだ。まさか、これが大スターとは思えないので、ぼくはあらぬ方向へ期待の視線を泳がせていた」
すると・・・
「笠置シヅ子です。よろしゅう頼んまっせ」と、「目の前にきた、鉢巻で髪を引き詰めた下りまゆのしょぼしょぼ目」が挨拶したのです。
「ぼくは驚き、すっかりまごついてしまった」と服部。
オフステージのシヅ子は、何も飾らない自然体の女性でした。
ところが、その後の稽古で、服部は驚愕します。
3センチもある長いつけまつげの目を見開き、大きな口をあけて歌うシヅ子は別人でした。
その抜群のスウィング感に、「なるほど、これが世間で騒いでいた歌手か」と納得します。
服部良一と笠置シヅ子という、戦前ジャズ・ソングの「最強コンビ」誕生の瞬間でした。
羽鳥が、笑顔で「千本ノック」
ドラマでは、羽鳥による特訓が描かれました。
スズ子が歌う『ラッパと娘』には、まだ羽鳥が狙うような「スウィング感」がなかったからです。
つまり、羽鳥流の「ジャズ」になっていない。
「なんだか聴いててあんまり楽しくないぞお。ジャズは楽しくなくちゃ」
羽鳥は、笑顔で(!)スズ子を追い込んでいきます。
「ワクワクしないんだよなあ」と、何度も何度もやり直し。まるで千本ノックです。
「バドジズできればいいんだよ」と言われても、スズ子にはよくわかりません。
「バドジズ……ってどういうことなんでっか?」と訊ねますが・・・
「そんなの知らないけど、今の福来くんはぜんぜんバドジズしてないよねえ」
バドジズしなきゃ、ジャズじゃない!?
このバドジズ、『ラッパと娘』の歌詞にあるんですね。
楽しいお方も 悲しいお方も
誰でも好きな その歌は
バドジズ デジドダー
この歌歌えば なぜかひとりでに
誰でもみんな うかれだす
バドジズ デジドダー
(『ラッパと娘』作詞・作曲:服部良一、歌:笠置シヅ子)
「僕は福来くんが最高に楽しく歌ってくれたら、それでいいんだけどね。今、楽しいかい?」
こうした言葉の中から、服部良一その人ともまた違う、羽鳥善一の「人物」と「音楽」が立ち上がってくるようです。
大事なのは、自分に正直になること。自分の感情を思うままにぶつけること。
スズ子が、羽鳥に喧嘩(けんか)を売るような発声で歌ってみると・・・
「なんだか少しだけ、ジャズっぽくなったじゃない」と羽鳥。
スズ子にも、何かが、少しずつ、見えてきたようです。
「スウィングの女王」へ
そして、「梅丸楽劇団」旗揚げ公演の初日。
舞台の上を激しく動き回りながら熱唱するスズ子に、観客は大興奮です。
『ラッパと娘』がフルコーラスで披露されましたが、趣里さんに笠置シヅ子が「降りてきた」と言ってもいい、圧巻のステージでした。
この公演の成功で、「スウィングの女王」と呼ばれるようになったシヅ子、いえ、スズ子。
羽鳥との最強コンビによる、怒濤の快進撃が始まったのです。