新型コロナ変異株 オミクロンの亜系統BA.4/BA.5の特徴について 現時点で分かっていること
世界における新型コロナの新規感染者数が再増加しており、その要因の一つとしてオミクロン株の亜系統BA.4/BA.5の拡大が挙げられます。
BA.4/BA.5について、現時点で分かっていることをまとめました。
世界101ヶ国で新型コロナ新規感染者数が増加
6月29日の会見でWHO(世界保健機関)は、世界101ヶ国で新型コロナ新規感染者数が増加していると報告しました。
この101ヶ国の中には日本も含まれています。
世界中で感染者数が増加している原因としては、ワクチン接種や自然感染からの時間経過による感染予防効果の減衰と、オミクロン株の亜系統であるBA.4/BA.5の拡大によるものと考えられます。
オミクロン株の亜系統BA.4/BA.5とは?
BA.4とBA.5は、2022年1月と2月にそれぞれ南アフリカで初めて検出されたオミクロン株の亜系統です。
どちらも新型コロナウイルスのスパイク蛋白に同じ変異がありますが、それ以外の部分の変異が異なります。
世界で最初にBA.4/BA.5が見つかった南アフリカでは、それまで主流であったBA.2を押しのけるように3月頃から拡大しはじめ、現在はBA.4とBA.5で変異株の割合の大半を占めるに至っています。
同様に、ヨーロッパの中でも早くBA.5が侵入したポルトガルでも、すでに現時点でほぼ全ての新型コロナウイルスがBA.5に置き換わっています。
イギリスやアメリカなどの欧米諸国でも、今まさにBA.4/BA.5が拡大しています。
東京都では、6月下旬時点でBA.5と考えられる変異株が25.1%を占めており急激に拡大しています。
このように、BA.4やBA.5は、BA.2と比べて広がりやすい特性を持っていると考えられており、今後は東京都だけでなく日本国内でも拡大する可能性が高いと考えられます。
BA.4/BA.5はワクチンによる感染予防効果がさらに低下
BA.4とBA.5が広がっている理由の一つとして、「免疫逃避」と呼ばれる、ワクチンや自然感染によって作られる免疫への抵抗性が挙げられます。
新型コロナワクチンをブースター接種した前後の人の血液を用いて、それぞれの変異株を中和することができる抗体の量を測定した研究では、BA.4/BA.5に対する中和抗体は、BA.1やBA.2よりもさらに低くなっています。
この結果からは、これまでのオミクロン株以上に、BA.4/BA.5では過去に新型コロナワクチン接種による感染予防効果が低下していることが推測されます。
ただし、イギリスにおける予備的な研究では、BA.4/BA.5に対するワクチンによる感染予防効果はBA.2と比較して明らかな差はないとのことです。
過去に感染した人もBA.4/BA.5に感染するリスクが
また、日本国内では第6波の中心となった変異株であるオミクロン株の亜系統BA.1とBA.2に感染した人の血液を用いて、それぞれの変異株を中和することができる抗体の量を測定したところ、BA.4/BA.5に対する中和抗体の量は十分ではありませんでした。
この結果からは、過去にBA.1やBA.2に感染した人も、自然感染によって作られる免疫はBA.4/BA.5に対しては十分ではなく、再感染する可能性があるということになります。
BA.4/BA.5の重症度は?
現在のところ、BA.4/BA.5が、これまでのオミクロン株の他の亜系統と比較して、重症度が変化しているという証拠はありません。
世界に先駆けてBA.4/BA.5が流行した南アフリカでは、死亡者数の増加は確認されていません。
一方、ポルトガルではBA.1が主流であった時期と比べて新規感染者数の規模は半分程度であるにもかかわらず同程度の死亡者数の増加が見られており、現時点では注意深く見ていく必要がありそうです。
新型コロナの流行開始から2年以上が経過し、行動制限の緩和が進んでいます。
長期的には緩和の方向に進んでいくことについては誰もが賛成していることだと思いますが、流行状況の悪化や変異株の出現によって多少揺り戻しがあることも許容しながら徐々に緩和していくことが、社会として重症化リスクの高い人を守りながら軟着陸を目指すためには必要となります。
これから国内でもBA.4/BA.5に急速に置き換わっていくことが予想されますが、選挙、3連休、夏休みといったイベントによって新規感染者数や入院患者数の増加が起こることが懸念されます。
こまめな手洗い、屋内でのマスク着用、会食時は少人数で短時間にとどめてできる限りマスク会食で、といったこの2年半で身についた基本的な感染対策をしっかりと続けていきましょう。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】