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欧米の株価指数は過去最高値を更新、これに違和感はあるが、そうなった理由も存在する

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 12月16日の米国株式市場では、英国の総選挙で与党保守党が勝利し、米中が第1段階の合意に至ったことで、先行き不透明感が後退し、ダウ平均、ナスダック、そしてS&P500種の主要3指数が過去最高値を更新した。欧州株式市場でも、代表的な株価指数であるストックス欧州600種は最高値を更新した。

 17日の東京株式市場では、欧米の株式市場の上昇に加え、円安などもあって日経平均は寄り付きからザラ場の年初来高値を更新し、引け値でも年初来高値を更新した。

 日経平均の年初来高値はさておき、欧米の株価指数の過去最高値更新についてはやや違和感を覚えるところとなろう。株価は景気を映す鏡とも言われるが、現在の欧米の景気がそれほど過熱しているようには見えない。

 景気が悪いというわけではない。16日の米国株式市場の上昇には、6日に発表された中国の11月の工業生産高や小売売上高が改善していたことや、12月のニューヨーク連銀製造業景気指数の先行き見通しが高い水準となったことも要因として指摘されていた。ただし、これも景気はそれほど悪くはない程度のものである。

 欧州の景気にしても景気減速への懸念も出ているぐらいである。それでもストックス欧州600種は最高値を更新しているのは何故なのか。

 たしかに、懸念されていたふたつの大きなリスクファクターについて、警戒感がひとまず後退したことは大きい。米中の通商交渉がこれからさらに悪化するという懸念は後退した。しかし、今後改善するのかどうかは見通せない。

 英国にしても与党・保守党の勝利で政治の不透明感はいったん払拭されたが、これでEUとの交渉がスムーズに行くという保証はない。ジョンソン首相が英国のEU離脱交渉について強硬姿勢を示したことで、合意なき離脱への不安が再浮上している。

 それでも株価がしっかりしているのは、日欧米の中央銀行の積極的な金融緩和政策の影響が根強く残っており、金利は低位というか、ところによってはマイナスとなっているなかで、株価が支えられ、きっかけ次第では高値を更新してしまう、という状況にいる。

 2020年は米国では大統領選挙が控えている。そして日本ではオリンピック・パラリンピックも開催される。日欧米の中央銀行の金融政策はこれ以上の追加緩和に限界もみえるなか、正常化にも二の足を踏んでおり、現状維持が予想されている。これは株価にとっては良い環境が続くということなのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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