英規制当局がファイザーワクチンの緊急使用を承認 2日から運搬、7日から集団接種へ
[ロンドン発]英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は2日、米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬ベンチャー、ビオンテックの新型コロナウイルス感染症ワクチンの緊急使用を承認しました。
欧州連合(EU)離脱の移行期間は今月末まで続きますが、先立って英政府がMHRAに権限を与えていました。これを受けて英国民医療サービス(NHS)はワクチンの運搬を開始、7日からワクチン接種を開始する予定です。ファイザーのワクチンは摂氏マイナス70度で保管されているため、解凍するのに4日はかかるそうです。
英保健省の報道官は次のように述べています。
「政府は本日、独立したMHRAからファイザーとビオンテックのワクチンの使用を承認するという勧告を受け入れました。これは何カ月にもわたる厳格な臨床試験と、ワクチンが安全性、品質、有効性の厳格な基準を満たしていると結論付けたMHRAの専門家によるデータの徹底的な分析に基づくものです」
「ワクチンは来週から英国全土で利用できるようになります。 NHSは大規模な予防接種プログラムの提供において数十年の経験があり、予防接種の対象となるすべての人々にケアとサポートを提供するため広範な準備を実行に移します」
「予防接種プログラムの成功を支援するためには皆が自分の役割を果たし、地域で(社会的距離政策などの)必要な制限を守ることが大切です。そうすればウイルスをさらに抑制し、NHSが圧倒されることなくその仕事を行えるようになります」
マット・ハンコック英保健相は英BBC放送に「来年のイースター(4月4日)以降、わが国は日常生活に戻れる可能性がある」との見通しを述べています。
ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は「今日のイギリスでの緊急使用承認は新型コロナウイルス感染症との戦いにおける歴史的な瞬間を示しています。この承認は科学が勝つと最初に宣言して以来取り組んできた目標です。イギリスの人々を守るために慎重な評価を行い、迅速に行動したMHRAの能力を称賛します」と述べています。
ビオンテックの共同創設者兼CEO(最高経営責任者)ウール・サヒン独マインツ大学医療センター教授はこう話しました。
「イギリスでの予防接種プログラムの展開により、入院するリスクの高い集団の人々の数が減ると信じています。私たちの目的はワクチンを必要とする人々に承認された安全で効果的なワクチンを提供することです。世界中の規制当局に提出されたデータは科学的に厳密で非常に倫理的な研究開発プログラムの結果です」
ファイザーは今年中に最大5千万回分、来年末までに13億回分を供給する計画です。ファイザーとビオンテックは11月18日、ワクチンについて発症を防ぐ有効性が95%にのぼったとの第3相試験の最終結果を発表しています。
第3相試験は7月27日に開始され、4万3661人が参加。うち4万1135人が11月13日時点で2回目の接種を受け、その1週間後には170人が発症。ワクチン接種組は8人でプラセボ(偽薬)組は162人。重症化した10人のうちワクチン接種組は1人でした。
65歳以上の高齢者でも有効性は94%。グレード3(重症または医学的に重大だが、直ちに生命を脅かすものではない)で頻度が2%を超えたのは倦怠感3.8%と頭痛2%のみで、安全性の問題も見られませんでした。
ワクチンの開発状況は下の表の通りです。
英政府は10カ月でワクチンを承認できるよう法的な枠組みを整えてきました。
イギリスでの接種の優先順位は次の通りです。
(1)介護施設の高齢者と職員
(2)80歳以上と医療従事者、ソーシャルワーカー(さらに優先順位が上がることも)
(3)75歳以上
(4)70歳以上
(5)65歳以上
(6)65歳未満の高リスクグループ(がんなど)
(7)65歳未満の中リスクグループ(糖尿病、喘息)
(8)60歳以上
(9)55歳以上
(10)50歳以上
この10グループで、第1波で死んだ人の最大99%をカバーしているそうです。新型コロナウイルス感染症に脆弱なグループは高齢者、男性、肥満、喫煙者、心臓病・高血圧・糖尿病の基礎疾患のある人です。
(おわり)