【ハンバーガーの歴史】機械と牛が築いた「ビーフドリーム」!ハンバーガーの誕生秘話
現代人が何気なく頬張るハンバーガー。
その起源には、肉挽き機や冷凍車といった発明、さらには牛肉生産の隆盛という多くの技術革新と時代の変遷が絡み合っています。
19世紀初頭、ドイツの技術者カール・ドライスが肉挽き機を発明したことが、ひき肉料理の普及を後押ししました。
それ以前、ひき肉は専用のノミを用いた手作業で作られており、一般家庭で作るには骨の折れる作業だったのです。
やがて機械の進化により、大量のひき肉が手頃な価格で市場に出回るようになりました。
こうしてハンバーグステーキは庶民の食卓に定着していきました。
さらに19世紀後半、「牛肉の黄金時代」と呼ばれる時代が到来します。
土地が牛のために解放され、多くの人々がカウボーイとして雇われたことで、アメリカは世界屈指の牛肉生産国へと成長しました。
この流れを支えたのが、鉄道網の発展や冷凍車の普及、さらにシカゴを中心とした大規模な肉加工産業です。
牛肉は安価で広く流通するようになり、労働者階級の人々も手軽にステーキを楽しめるようになりました。
一部の人々がこれを「アメリカンビーフドリーム」と称したのも頷けます。
20世紀に入り、食肉業界は飛躍的に発展する一方で、腐敗や衛生問題も浮き彫りになります。
1906年、アプトン・シンクレアの小説『ジャングル』が、アメリカの食肉産業の暗部を暴きました。
この作品がきっかけで食品医薬品局の創設が進み、食肉の安全性に関する法律が整備されるようになったのです。
こうした背景の中、ハンバーガーはさらに進化します。
工場で大量生産される牛肉は、ミートローフやホットドッグといった他の料理にも応用され、やがてパンと組み合わさって現代のハンバーガーの原型を形作ったのです。
それでも、ハンバーガーには当時のアメリカが抱えていた矛盾が詰まっています。
急成長する食肉産業、労働者階級の食事としての普及、そしてその影に潜む腐敗。
ハンバーガーという料理が世界を席巻するその裏には、技術の発展と倫理的な課題が織り成す壮大な物語が隠されているのです。
参考文献
アンドルー・F・スミス著、小巻靖子訳(2011)『ハンバーガーの歴史 :世界中でなぜここまで愛されたのか?』スペースシャワーネットワーク