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36歳。親の目が気になる。人生を「逆算」して好きに生きる勇気がありません~スナック大宮問答集66~

大宮冬洋フリーライター
愛知県豊橋市にて。参加者の一人と改めて対談。右のメガネ男性は筆者。(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流宴会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催150回を超えた。のべ3000人ほどと飲み交わしてきたことになる。
 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代の「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。
 その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めてオンラインで対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

***カオリさん(仮名。独身、36歳)との対話***

バリバリ働いていて達観している年上女性のそばではお姉さんキャラを演じずに済みます

――大いに飲んで楽しんでくれていたようですね。

 はい。最初は「年齢層が私よりも高めかな。何を話せばいいんだろう」と思いましたが、すぐにそんなことは気にせずに話し込みました。私と同い年の女性も見つけられて、女性一人でも行きやすい温泉などを教えてもらったり。ちょっと年上の方々も好きになりました。バリバリ働いていて達観している年上女性のそばでは、お姉さんキャラを演じずに済むので楽です。

――カオリさん、普段はお姉さんキャラなんですか?

 両親は長女の私にだけ厳しくて、あまり肯定されずに生きてきました。期待の裏返しだとはわかっているし、私も親のことは好きなので、どうしてもその目や反応を気にしてしまうんです。
 29歳のときに思い切った海外旅行をして、帰国後は親に有無を言わさずに一人暮らしを始めました。と言っても、地元で働いているので実家まで歩いて帰れる距離ですけど……。私がやることへの親の嫌味な反応を見ずに済むので気楽になりました。

第152回スナック大宮の会場提供をしてくれたのは豊橋駅前のワインバー「vitis」。普段はカウンターのみの落ち着いたお店です。大人のデートにおすすめ!
第152回スナック大宮の会場提供をしてくれたのは豊橋駅前のワインバー「vitis」。普段はカウンターのみの落ち着いたお店です。大人のデートにおすすめ!

30歳から80歳まで後悔のない50年間を生きるのが目標、という彼を尊敬しています

――親との適度な距離感は大事ですよね。一度も実家を出たことがないと、そのありがたみもわかりにくい気がします。

 私はずっと地元で暮らしているので刺激が足りないのかもしれません。友だちもいますが、突拍子もない職業の人とかはいません。お互いに想像の範疇内なんです。海外旅行先で知り合った人には「これから国連の会議に出席する」なんていう人がいてびっくりしました。地元以外の人との出会いには刺激が多いと感じています。

――刺激と言えば、最近恋人ができたそうですね。

 まだ付き合っていません(笑)。毎日LINEはしていますけど。2か月ほど前に四国を一人旅していたときに居酒屋で知り合った27歳の男性です。東京から男友達と2人で来ていました。今は東南アジアで英語を勉強していて、その後はワーキングホリデーで英語圏で働くと言っています。30歳になるまでに英語を含めていろいろ修得して、おそらく寿命の80歳まで後悔のない50年間を生きるのが目標なんだそうです。

――20代は準備期間という考え方、僕にはできなかったな……。

 ですよね! 私も「もう28歳か~」と目の前に迫った年齢ばかり気にして焦ることが多かったので、彼のように寿命から逆算して好きなように生きるのはすごいなと思います。羨ましいし、カッコいいなと思っています。

近所の海で漁師が獲って来た魚をさばいて干物にするのが趣味な筆者。今回は30人前を焼いて酒肴にしました。(筆者撮影)
近所の海で漁師が獲って来た魚をさばいて干物にするのが趣味な筆者。今回は30人前を焼いて酒肴にしました。(筆者撮影)

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自分たちで刺激を生み出し、分かち合い、意外な化学反応を楽しむ

 以上がカオリさんとの対話だ。人との出会いにこそ刺激と学びがあるというカオリさんの意見には共感する。ただし、47歳の筆者は「外」や「都会」への興味や羨望のようなものは以前より薄れているのを感じる。今回のスナック大宮は筆者やカオリさんが住んでいる東三河地方で開催し、東京や大阪などからもお客さんが来てくれた。彼らにとっては東三河が「外」であり、刺激の多い未知の土地なのだと思う。
 都会ではない地域での生活を充実させるには、自分たちで刺激を作り出すしかないと思う。ポイントは、人の目や評価をあまり気にせずに、自分が面白いと感じることを追求しながら仲間を広げていくことだ。
 例えば筆者は近所に小さな漁港があることをコロナ禍で再認識し、漁師などと知り合いになり、獲れた魚介類を直接買ってさばいて近所と分け合う活動を続けている。個体ごとに異なる天然の魚たちは刺激の塊だし、同じマンション内で魚好きの面白い住民と知り合えたりする。
 今回のスナック大宮でも目の前の海で獲れたセイゴ(スズキの稚魚)を干物にして持参した。同じ活動の仲間であるNさんは、ハードな潮干狩りで得たアサリを「串アサリ」にして持って来てくれた。我々にとっては日常的な食事でも、他の人にとっては珍しくて興味深い体験だったに違いない。
 自分たちで刺激を生み出し、それを他人と分かち合い、意外な化学反応を楽しむこと。外から何かを与えられるだけではなく、こちらが作って与えてあげるのだという姿勢を保っていきたい。

Nさんが持ってきた串アサリ。東京からの日本酒党の人々に絶賛され、すぐに食べ尽くされました。彼らが差し入れてくれた酒との相性もバッチリ!(参加者提供)
Nさんが持ってきた串アサリ。東京からの日本酒党の人々に絶賛され、すぐに食べ尽くされました。彼らが差し入れてくれた酒との相性もバッチリ!(参加者提供)

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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