究極のミラーゲームが展開された試合で選手の序列は変わったか?【U-24日本代表戦出場選手採点&寸評】
今後3試合における注目ポイントは?
本来はジャマイカ代表と対戦するはずだった札幌での親善試合。ジャマイカの一部の選手が入国できなかったことで、急きょ横内代行監督が率いるU-24日本代表とのチャリティマッチに変更を余儀なくされた。
森保兼任監督が「1チーム、2カテゴリー」と公言する通り、どちらのチームも同じ枠の中でチーム強化が進められている現状を考えれば、直前に来日するジャマイカ代表と対戦するよりは、結果的に興味深い試合になった印象もある。
とはいえ、対戦相手だけが変わったA代表と違い、6月5日に試合を控えるU-24代表は思いがけないスケジュール変更を強いられたため、メンバー編成も含めて“付け焼刃感”は否めなかったのも事実。準備不足のうえ、U-24代表は昨年来のコロナ禍の中、1試合も行えなかったという事情も加味すれば、A代表が3-0で勝利したこと自体にそれほどの意味はないだろう。
その一方で、注目すべき点もあった。それは、お互いが同じ4-2-3-1を採用し、同じ狙いを持って試合に臨んだため、ピッチでは“究極のミラーゲーム”が展開された点だ。これにより、現在の森保ジャパンのチーム戦術と各ポジションのレギュラー争いが、通常の試合以上に見えやすい状況が生まれていた。
とりわけポジション争いは、アジア最終予選を見据えた場合、選手層の厚みという点で重要なポイントだ。
たとえば、ミャンマー戦後にU-24代表に合流したA代表の主力メンバーは、CBの吉田と冨安、右サイドバックの酒井、ボランチの遠藤。そして、2列目の堂安や久保といった面々になる。つまり、今回の試合と残りの6月の3試合では、彼らのポジションを狙う選手たちにとって、大きなチャンスが巡ってきたことになる。
今回のU-24代表との試合で言うと、まずは鉄板2枚がチームを離れたCBが大注目。森保監督が、植田と谷口だけはフル出場させたことでも分かる通り、吉田や冨安が不在のケースを想定すれば、レギュラー同等の駒を持っていたいと考えるのは当然だ。
今回の6月シリーズの4試合で、森保監督がチョイスしたCBは、植田、谷口、昌子、中谷の4人。これまでの経緯からすれば、植田がポールポジションにいて、前回W杯を経験した昌子がそれを追い、その後ろに谷口と中谷が位置するというのが現状だろう。
おそらく指揮官は、植田と昌子をスタメンで起用せず、植田と谷口、昌子と中谷といった、代表経験値のある選手とそうでない選手を組み合わせる可能性が高い。その中で、代表デビューをしたばかりの中谷が、彼らを脅かすに値するパフォーマンスを見せられるかが、次の試合以降の注目になりそうだ。
逆に、主力がチームに残ったままのポジションでも、左サイドバックと1トップは引き続きチェックする必要がある。ベテラン長友と大迫のバックアッパー、もしくはレギュラー奪取を狙える戦力の台頭である。
今回、長友以外に左サイドバック候補となるのは、この試合の後半から出場した小川と、佐々木の2枚。1トップとしては、ウイングでもプレー可能な浅野と、前線の複数ポジションをこなす南野が候補で、場合によっては裏抜け狙いで古橋を抜てきすることもあるかもしれない。
いずれにしても、すでにアジア2次予選を突破した森保ジャパンにとっては、残り3試合は最終予選までに残された重要な実験の場になる。その中で、森保監督がどのような采配を見せ、起用された選手がどのようなパフォーマンスを見せられるか。
W杯本番まで、あと残り1年半という限られたスケジュールの中、7日のタジキスタン戦、11日のセルビア戦、15日のキルギス戦を、決して無駄にはできない。
※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)
【GK】シュミット・ダニエル(HT途中交代)=6.0点
昨年11月のメキシコ戦以来の出場は、前半45分間のプレーとなった。田川のシュートミスのシーン以外は、大きなピンチもなく無難にプレー。ビルドアップにもよく絡んでいた。
【右SB】室屋成(80分途中交代)=6.0点
試合の序盤は持ち味の攻撃参加でチャンスを作ったが、南野と原口がポジションを入れ替えたことも影響し、次第に攻撃参加が減ってしまった。後半80分に山根と代わって退いた。
【右CB】植田直通=6.0点
谷口とのコンビでスタメン出場。前半20分に田川に背後をとられてピンチに陥ったが、それ以外は危なげない守備を見せた。何本か縦パスを入れたが、精度はまだ改善の余地あり。
【左CB】谷口彰悟=5.5点
東アジアカップを除くと、2015年イラク戦以来の代表戦となった。慎重な選択をして無難にプレーしたが、縦パスは消極的すぎた。後半71分からはボランチの一角でプレーした。
【左SB】長友佑都(HT途中交代)=6.0点
守備面では対峙した三好をほぼ完璧に抑えたが、いつもの試合に比べて攻撃参加の回数は少なかった。ミャンマー戦でフル出場をしたこともあってか、前半のみで途中交代した。
【右ボランチ】橋本拳人(62分途中交代)=6.5点
初めて守田とボランチコンビを組んだが、違和感なくプレー。前半2分にCKから先制ゴールを決めた。ビルドアップ時にCBの間に落ちて起点となる動きも見せるなど上々の出来。
【左ボランチ】守田英正(71分途中交代)=6.0点
決定的な仕事こそなかったが、ボランチコンビを組んだ橋本の動きに合わせたポジショニングも良く、隙のないプレーを見せた。後半71分に昌子と交代してベンチに下がった。
【右ウイング】南野拓実(HT途中交代)=6.0点
この試合では右ウイングでスタメン出場。前半の途中で原口と入れ替わって左サイドでもプレーした。前半41分にヘッドで落とし、鎌田のゴールをアシスト。前半のみで退いた。
【左ウイング】原口元気(HT途中交代)=5.5点
最初は左ウイングの位置、途中から右にポジションを移してプレー。ボールを受けるスペースを見つけられず、窮屈そうに見えた。目立ったシーンもなく、前半で途中交代した。
【トップ下】鎌田大地(HT途中交代)=6.5点
警戒される中、サイドに流れたり、中央で縦パスを受けたりして相手を惑わせた。前半41分にはクオリティの高いゴールを決めた。前半を終え、古橋に代わってベンチに下がった。
【CF】大迫勇也(62分途中交代)=6.0点
ゴールは決められなかったが、立ち上がりにCKのボールをヘッドでフリックして橋本のゴールを演出。回数は少なかったが、得意のポストプレーも見せるなど及第点の出来だった。
【GK】中村航輔(HT途中出場)=6.0点
シュミット・ダニエルに代わって後半からプレー。2019年12月の東アジアカップ以来の出場だったが、落ち着いてプレー。DFの背後のケア、シュートストップなど冷静に対処した。
【DF】小川諒也(HT途中出場)=6.0点
長友に代わって後半から左サイドバックでプレー。後半52分に菅原の背後を突いてオーバーラップし、浅野のゴールを演出した。守備でも大きなミスはなく、無難にプレーした。
【MF】古橋亨梧(HT途中出場)=5.5点
原口に代わって後半から途中出場し、1トップ下でプレーした。下がってボールを預けてもらうより、DFラインの裏に抜け出すプレーを得意とするが、この試合では影を潜めた。
【MF】伊東純也(HT途中出場)=5.5点
南野に代わって後半から途中出場し、左ウイングでプレー。慣れないサイドでのプレーとなったが、何度かチャンスに絡んだ。後半67分に迎えたチャンスは決めたかったところ。
【FW】浅野拓磨(HT途中出場)=6.5点
鎌田に代わって途中出場し、右ウイングでプレー。後半62分に大迫が退いてから1トップでプレーした。52分に3点目となるゴールを決めたが、後半86の場面ではシュートミス。
【MF】川辺駿(62分途中出場)=5.5点
橋本に代わって途中出場し、ボランチでプレー。後半86分の浅野の決定機を演出するスルーパスを供給した。守備面では大きな問題もなく、及第点のパフォーマンスを見せた。
【MF】坂元達裕(62分途中出場)=5.5点
大迫に代わって途中出場し、右ウイングでプレー。嬉しい代表デビュー戦となったが、この試合はAマッチではないのでキャップはつかず。内容的にも持ち味を出せずに終わった。
【DF】昌子源(71分途中出場)=5.5点
守田に代わって途中出場し、左センターバックでプレー。鹿島時代の相棒である植田とCBコンビを組んだ。プレータイムは短かったが、特にミスもなく無難にプレーした。
【DF】山根視来(80分途中出場)=採点なし
室屋に代わって途中出場し、右サイドバックでプレー。出場時間が短く採点不能。
【U-24日本代表採点】
GK;大迫敬介=5.0/DF;菅原由勢=5.0/橋岡大樹=5.0/町田浩樹=5.0/旗手怜央=5.0/MF;板倉滉=5.5/中山雄太=5.0/三好康児=5.0/遠藤渓太=5.0/久保建英=5.5/FW;田川亨介=5.0(途中出場…GK;沖悠哉=5.0/田中碧=5.5/相馬勇紀=5.0/前田大然=5.5/林大地=5.5/堂安律=5.5/古賀太陽=5.5/遠藤航=5.5)