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日銀はさらなる追加利上げを封印したわけではない

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 8月8日の函館市での内田副総裁記者会見の内容が日銀のサイトにアップされていたので、今回はそれを確認したい。

 函館市を中心とした道南経済の情勢、活性化などについて、どのようにご覧になっているかとの質問の答えに下記があった。

 「当地主力の一つである観光につきましては、当地が舞台の人気アニメ映画、名探偵コナンですかね、の封切に始まって」

 内田眞一副総裁は昭和37年8月22日生まれ。ということは間もなく誕生日を迎えるが、私より4歳下ではあるがほぼ同年代。どうやら「名探偵コナン」がお好きらしい。

 「今回の政策は、一つには、経済・物価が見通しに沿って展開している。そうした中で、二つ目に、円安による輸入物価の上昇、再びの上昇ですが、など物価の上振れリスクも出てきている。こういうことを考慮して行ったものです。」

 7月31日の0.25%への利上げは、経済・物価が見通しに沿って展開しており、円安も意識しての政策修正としている。

 「変動が起こったわけですから、その影響を注視して、そのことを政策に反映していくということは当然だと思います」

 8月5日の東京市場での変動に関してである。大きな変動があれば、政策に反映するとあるが、政策に反映する前に事態の推移を見守ることが先決ではなかろうか。

 「当面とはいつまでかというのはですね、書いた以上当然聞かれると思って書いているわけではありますが、これはですね、例えば今の市場というのが、どういうふうに落ち着いていくのかっていうのはまだはっきり分からないわけです」

 日経平均株価はすでに5日の急落前の水準に戻しており、当面との期間はそれほど長くはなかったことになる。

 「次回会合以降の話は、これは当然政策委員会で話すべき話であって、私が今どうだと申し上げるべきではないし、実際この後状況がどう変わるかにもよりますけれども、正直個人的にはですね、慎重に考えるべき状況にあるというふうには思っています。」

 むしろ過去にも慎重過ぎた結果、過剰反応が起きてしまった可能性がある。ここは慎重さよりも、多少の動揺は覚悟の上で、市場の歪みを正す上でも、淡々と正常化を進める状況にあるのではなかろうか。

 「ある意味緩やかなパスで利上げをしていくことができる状態っていうのは、時期を選べるので、いろんな状況によって、これは一つのアドバンテージなわけです。そういう意味でですね、条件が満たされていくのであれば、ゆっくりとではあるのですけど、上げていく必要があるということをですね」

 この内田副総裁の発言を見る限りにおいて、日銀はさらなる追加利上げを封印したわけではないこともたしかであろう。それは市場動向などだけでなく、政治上のスケジュールなども考慮対象になるかもしれない。

 ということで、日銀の次のステップとしては10月ではなく、自民党総裁選や米国大統領選挙の状況なども確認した上で、12月の金融政策決定会合での0.25%の利上げを予想しておきたい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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