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“演歌第七世代”の新星・青山新が胸に秘める二文字と見据える未来

中西正男芸能記者
デビュー5周年を迎え、今の思いを語る青山新さん

 春日八郎さん、三橋美智也さんを最初の世代とカウントし、今注目を集めているのが“演歌第七世代”と評される若手の皆さんです。その中でもテイチクエンタテインメント創立85周年・芸映創立60周年記念アーティストとして華々しくデビューしたのが青山新さん(24)。今年5周年を迎え、6月12日には新曲「祭り道」もリリースしました。着実に歩みを進めますが、常に心にあるのは師・水森英夫さんからもらった二文字だといいます。

師からの言葉

 歌が大好きなおばあちゃんの影響で、5歳ごろからしっかりと歌を聞くようになっていました。小学生の頃にはカラオケ喫茶に行ったり、カラオケ大会にも出るようになっていて。サッカーも好きだったんですけど、それ以上に歌にのめりこんでいきました。

 中学に入るころには「歌手になってみたい」という思いも出てきて、転機になったのは中学2年の時でした。カラオケ大会での優勝をきっかけに、恩師である作曲家・水森英夫先生に弟子入りさせていただくことになったんです。

 氷川きよしさんや山内惠介さんを育てた先生ですし、おばあちゃんは大喜び。ただ、父は反対というか「しっかり冷静に考えたほうがいい」と強く言ってくれました。でも、考えれば考えるほど「自分がどこまでできるのか試してみたい」という思いが大きいことに気づき、父も説得して14歳で歌の世界に入りました。

 自分で望んで選んだ道ながら、入ってみると簡単なものではない。3年経っても、4年経っても、デビューの道は見えてこない。僕より後に入った方が先にデビューもされていく。

 17歳、18歳のころだったと思うんですけど、どこか浮足立っていたんでしょうね。ある日、レッスンでワンコーラス歌った時に先生がおっしゃったんです。「歌に焦りが見える」と。

 実際、デビューのことばかりが頭にあったんだと思います。それを歌の中の僅かな揺らぎから感じ取られたようで。「先ばかり見ずに、目の前の芸を磨きなさい」と言われました。

 そして「才能や努力ももちろん大切だけど、成功の半分以上を占める要素は“忍耐”だ」とも言っていただきました。

 僕はもともと心が折れやすいタイプでもあって、そういった部分も含めて見透かしてらっしゃったんだと思います。日々、技術的なアドバイスはいただいていたんですけど、歌を聞いて自分の内面に言及されたのはその日だけ。だからこそ、深く心に刺さりました。

 それ以降、うまくいかないことがある度に、いつも「忍耐」という言葉を噛みしめてやってきました。それくらい、自分の軸になっている言葉でもあります。

歌手の意味、そして地元への思い

 そうやって何とか2020年2月、デビューを迎えられたんですけど、その時期がまさに新型コロナ禍が始まった時期でもあったんです。

 こればかりはどうしようもないことです。でも、ここからやっと動き出すというタイミングで、何もできなくなる。正直、ショックはありました。難しいものだとも思いました。いきなり「忍耐」の意味もこれでもかと噛みしめました。

 ただ、その時期があったからこそ、人前で歌うことの有り難さをさらに感じることができたとも思っています。

 ある日の公演で、ステージに向かうまでの導線に50代くらいの女性が来てくださったんです。お顔を見ると、涙を流されていました。

 その瞬間、自分の子どものころに意識が戻ったんです。僕もおばあちゃんに連れられて行った八代亜紀さんのコンサートを見て、子どもながら涙を流していたんです。その日が歌手にあこがれる原風景にもなっているし、年月を経て、自分の存在に涙を流してくださる方がいる。単純な言葉になってしまうんですけど「歌手を選んで本当に良かった」。ただただそう思いました。

 それと、地元に対する思いも仕事をする中で、少しずつ変わってきたと感じています。

 僕は生まれも育ちも千葉県浦安市で、昔から地元の皆さんにお世話になってきました。もともと地元への意識も強いほうだと思うんですけど、このお仕事で全国で歌わせてもらう中、地元でステージに立つと明らかに気持ちが違うんです。

 もちろん、どこで歌う時にも全力で歌わせてもらいますし、そこのブレは一切ないつもりです。でも、地元だと青山新であると同時に、本名の自分の心も震える。これが地元の意味なのかなとも思いますし、地元の方々が少しでも喜んでくださる存在になる。これもシンプルなことなのかもしれませんけど、今強く思っていることです。

 そのためも、いつか紅白歌合戦に出場したいですし、全国から求められる存在にもなりたい。まだまだ目標だらけです(笑)。

 ただ、そんな自分でもおばあちゃんはすごく喜んでくれています。現役の美容師として美容院をしてるんですけど、美容院中、僕のポスターを貼ってくれていて。そして、父は整骨院を経営しているんですけど、父もおばあちゃん以上に僕の写真を貼ってくれています(笑)。

 家族もですし、応援していただいている皆さんに恩返しをしたい。その気持ちで、これからも何とか頑張って、積み重ねをしていきたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■青山新(あおやま・しん)

2000年5月30日生まれ。千葉県浦安市出身。芸映所属。所属レコード会社はテイチクエンタテインメント。祖母の影響で幼少期から演歌になじみの深い生活を送り、中学2年時に出場したカラオケ大会をきっかけに作曲家・水森英夫に師事する。約5年のレッスン期間を経て、2020年、テイチクエンタテインメント創立85周年・芸映創立60周年記念アーティストとして、シングル「仕方ないのさ」でデビュー。6月12日に新曲「祭り道」をリリースした。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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