声優のグローバルな活動の可能性:活躍の場は海を越えても広がる?
昨今のアニメブームも後押しし、知名度や人気、そしてバラエティ番組やドラマへの出演等、活躍の場も大きく広げている声優。
そんな声優の方々が、近年遠く海を越えた、海外のアニメシーンにまで活躍の場を広げ始めているのをご存知でしょうか。
こう聞くと、海外でのアニメイベントにゲストとして登場したり、SNSや動画配信での活動等が思い浮かぶかもしれません。
しかしそうではなく、まさに声優の主な活躍の場であるアニメのアフレコで、海を越えた海外のアニメシーンにまで、その声を届ける声優の方々が登場し始めているのです。
■複数言語で同じ役を演じるキャストの登場
たとえば近年日本では、複数言語を話せる声優の中に、日本語版だけでなく、海外で配信される英語吹替え版においても同じ役を演じるという、日英2言語を同時に担当する方が登場しはじめています。
2020年に放送された「D4DJ First Mix」や昨年放送の「カードファイト!! ヴァンガード will+Dress」では、アメリカ生まれで英語も堪能だという各務華梨さんが、日本語版に加え英語吹替え版でも、同じ役を担当されました。
また、今年放送された「トモちゃんは女の子!」でも、同じくアメリカ生まれで、海外に向けたアニメイベントでも日本語/英語両方でMCをこなす声優の天城サリーさんが、日本語版と同じ役を英語版でも担当されています。
元来、アニメには日本語以外を話すキャラクターも登場するため、英語やロシア語等を話せるキャストが日本語版のアフレコに参加することで、作中に複数言語が登場するといった場面はこれまでにも多々ありました。
しかし上記のように、同じキャストが同じ役を別の言語でも担当するという事態は、これまでみられなかったことです。
こうした動きの背景には、“日本も含めた世界”に向けての作品展開としての側面はもちろん、もうひとつ大きな要因として、コロナ禍以降、特に海外で広まったリモートアフレコの存在もあると思います。
■リモートアフレコによる影響
実は日本だけでなく海外でも、コロナ禍以降、リモートアフレコの状況下で、海を越えて活躍するアニメ声優が登場しています※。
2年前の記事ではありますが、日本のポップカルチャー関連の情報を発信する英語圏のニュースサイト・Anime News Networkの記事、及び公式YouTubeチャンネルの動画では、コロナ禍でアメリカに広がったリモートアフレコの利点や問題点等の紹介と共に、そうした状況下で活躍するマルチリージョンな声優についても言及されました。
たとえば、記事内で挙げられている「ドラゴン、家を買う。」の英語版には、スコットランドやシドニーをベースとする声優がキャスティングされています。
そうしてインターナショナルに活躍するリモートパフォーマーは、地理的な障壁を越えられたとしても、海外で仕事をする上で契約関係等の障壁に直面することもあるそうです。
それでも、リモートアフレコが登場したことにより、これまでは参加が難しかったキャストの参加が可能になり、キャスティングの可能性が広がった側面も大いにあると思います。
実際に、前述した「D4DJ First Mix」も、各務さんの英語版のアフレコはリモートにて実現したそうです。
- ※アメリカでは2020年以前にもアフレコのため別の州に飛ぶ声優はいましたが、そんなに頻繁ではなかったそうです
こうして活躍の場が海外にまで広がっているからといって、今後声優さんはお芝居以外にも、昨今重視されがちな歌やダンススキルに加えて多言語習得まで必須になってくるのか…というと、そうした極端な変化が急に起こることは恐らく無いでしょう。
しかし、上記リモートアフレコによるキャスティングの広がりに加え、既に海外渡航の制限も緩和されてきた今、前述の「トモちゃんは女の子!」の英語版では現地アメリカで天城さんのアフレコが行われるなど、少しずつですが海外版のアフレコ参加への道は広がってきているようです。
こうした変化は、少なくとも、今後多言語を話すことのできる声優の方々に、これまでになかった新たな活躍の場を提供し得るものになっていくと思います。
※2023年4月7日13:56 タイトル及び記事内誤字修正(超を越に)