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【ジャズ生】“組曲”という統制のなかから弾け出る甘美な既視感|Trinite@エル・チョクロ

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、4人組のアコースティック・ユニット“Trinite(トリニテ)”の第3章。

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2012年に“10年越し”とも言えるファーストにしてその世界観を凝縮した組曲の第1章となるアルバム『prayer』をリリース。2015年には第2章『月の歴史』を世に送り出し、2016年はいよいよ第3章である“神々の骨”の全貌を明らかにしようとしているトリニテ。

トリニテは、ピアニストであるshezoo(シズ)の手によって創造された世界を、ヴァイオリン(壷井彰久)、クラリネット(小森慶子)、パーカッション(小林武文)という室内楽的ではあるものの、サウンド・バランスを整えるには不向きな編成で再生しようというユニットだ。

しかし、このアンバランスな編成こそが、幻惑的との形容がふさわしいshezooの楽曲を具現するのに適している。

さらに、shezooがトリニテの表現形態として採用している組曲は、広義ではいくつかの小曲をひとつのテーマでまとめたものを指しているが、元来は舞曲すなわちダンスのためのBGMをつなげて演奏するために調整を整えることで16世紀ごろに始まったスタイルらしい。いわゆる当時のDJ的な手法だったわけだ。

そうしたオムニバス的な方法論を発展させていった組曲は、バッハの時代には器楽曲としての技法を確立させて、統一感をもったひとつの連続性のある作品を生むまでになる。

トリニテも、こうした系譜を意識していることは想像に難くない。というのも、ライヴでは第1章から第3章までの曲がランダムに並んでいるにもかかわらず、一貫性を失わないからだ。これは、曲ごとの小さなテーマと全体を俯瞰する大きなテーマを違和感なくつなげる役割を組曲という技法が果たしたいることを意味しているだろう。

さて、この統一性のなかで、トリニテはどのような“ビッグバン”を起こそうとしているのだろうかーー第3章の展開をを楽しみにしたい。

では、行ってきます!

●公演概要

3月19日(土) 開場16:00/開演17:00

会場:エル・チョクロ(東京・雑司が谷)

出演:Trinite<shezoo(ピアノ、作曲)、壷井彰久(ヴァイオリン)、小森慶子(クラリネット、バス・クラリネット)、小林武文(ドラム、パーカッション)

♪ Trinite / Dies Irae for God's Bones 怒りの日「神々の骨」より

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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