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バチカン「神風ドローンの大群による攻撃は都市に住む市民にとって大きな脅威」と自律型殺傷兵器開発に反対

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

バチカンの公式文書で「神風ドローンの脅威」を強調

ローマ教皇庁(バチカン)の国連代表部は2021年8月に、国連で開催されていた自律型殺傷兵器の専門家会議に提出した公式文書で自律型殺傷兵器の開発や使用の禁止を訴えていた。人工知能とロボットの発展によって、ロボットが自律して自らの判断で人間や標的物を攻撃してくる「自律型殺傷兵器システム(LAWS)」や「キラーロボット」の登場が国際社会では懸念されている。

ローマ教皇庁では以前から人間の判断を介さないで兵器が標的を認識して自律的に攻撃を行うことが非倫理的であるという理由で自律型殺傷兵器の開発と使用には反対してきた。

そして、今回のローマ教皇庁(バチカン)の公式文書の中で、「神風ミニドローン」(kamikaze mini-drone)による攻撃の脅威を例に例えて、自律型殺傷兵器の開発や使用の反対を訴えていた。

攻撃用の軍事ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われており、このようにローマ教皇庁(バチカン)の公式文書で用いられている。

2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。

「自律型殺傷兵器の開発競争と軍拡は国際社会の不安定と不平等をもたらすので、すぐにやめるべき」

ローマ教皇庁(バチカン)では8月3日に提出した公式文書の中で「自律的な判断で攻撃を行う神風ミニドローンの大群による攻撃は、都市に住む市民にとって大変危険であり、大きな脅威となります。人間による判断や関与がないこのような自律型殺傷兵器は、限られたデータや情報を基に開発されているため、偏見(バイアス)などによって誤作動して、本来の標的でない人を攻撃する恐れもあります。自律型殺傷兵器の大群は無差別的な攻撃を行い、多大な殺傷を招くリスクを増大させます。このような自律型殺傷兵器の開発や使用は国際人道法によって禁止されるべきです」とコメントを寄せている。

またローマ教皇庁(バチカン)では8月4日に出した公式文書の中では、倫理的な観点からも、あらゆる兵器には人間による判断が必要であると訴えている。自律型殺傷兵器のように、人間の判断を介さないで人間を攻撃してくるキラーロボットは非道徳的であることから開発に反対している。

さらに8月5日に提出した公式文書の中では、ローマ教皇庁(バチカン)は「自律型殺傷兵器は、平和と安定にとって大きな脅威であることから、自律型殺傷兵器の開発競争と軍拡は国際社会の不安定と不平等をもたらすので、すぐにやめるべきです」と主張していた。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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