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暑い夜はエアコンをつけっぱなしに! 高齢者の熱中症対策

宮下公美子介護福祉ライター/社会福祉士+公認心理師+臨床心理士
暑い夜は電気代を惜しまずエアコンをつけっぱなしに!(ペイレスイメージズ/アフロ)

高齢者は若い人より熱中症になりやすい

真夏日、猛暑日が続き、全国的に午前中から危険な暑さの毎日だ。総務省消防庁によれば、7月9〜15日の1週間で、9900人が熱中症で搬送され、12人が亡くなったという。熱中症は、高齢者の場合、以下の理由から特に注意が必要になる。同居する家族は、少しうるさいくらい、エアコンの利用と水分補給を促してほしい。

<体の機能低下による問題>

● 暑さを感じ取る力が衰え、猛暑日でも暑いと思わず、エアコンをつけずに過ごすことがある

● 体の反応が衰えて、暑くても体温調節機能が働きにくく、体に熱がこもりやすい

● のどの渇きを感じ取る力が衰え、脱水が進んでも「のどが渇いた」と感じるのが遅い

● 血液や体液の量が若い人より少ないため、熱を体の外に逃がしにくい

<本人の意思による問題>

● 何度もトイレに行くのを嫌い、水分を摂りたがらないことがある

● 体が冷えると言って、エアコンを使いたがらないことがある

● 電気代がもったいないからエアコンを使いたがらないことがある

高齢者は、自分では暑さやのどの渇きに気付かないことも。家族がエアコンの利用や水分補給を、少しうるさいくら促してほしい(画像:ペイレスイメージズ/アフロ)
高齢者は、自分では暑さやのどの渇きに気付かないことも。家族がエアコンの利用や水分補給を、少しうるさいくら促してほしい(画像:ペイレスイメージズ/アフロ)

のどの渇きを感じなくても時間を決めて水分補給

35度を超える猛暑日は、日中の外出は避けたい。買い物など、どうしても出かけなくてはならない場合は、日が落ちた夕方以降に。その際も、水筒やペットボトルを持参し、こまめに水分を補給したい。上に書いたとおり、熱さやのどの渇きを感じ取る力が衰えている場合があるため、「のどが渇いた」と感じなくても、1時間に1回など時間を決めて水分を補給するくせを付けておきたい。家族が促すことも大切だ。

熱中症の恐れがある場合は、よく冷えた飲物で水分補給し、体を冷やす必要がある。しかし、通常の水分補給が目的の場合は、スポーツドリンクなら常温、お茶であれば温かいお茶の方がいい。暑い時にキンキンに冷えた飲物を飲むとのどごしはいいが、胃腸を冷やしすぎてしまうからだ。特に高齢者の場合、それが原因で食欲がなくなったり、下痢をしたりすることもあるので注意が必要だ。ちなみに、ビールなどのアルコールは利尿作用があり、かえって体内の水分を失うので水分補給にはならない。気をつけてほしい。

電気代を気にする高齢者には、大型スーパーのフリースペースや図書館など、涼しい場所で過ごしてもらうという方法もある。ただし、行き帰りの道中で熱中症になってしまっては元も子もない。行き帰りの送迎手段が確保できる場合に検討してほしい。

また、家の中で過ごしていても、熱中症になる場合もある。猛暑の今年は、特に室内での熱中症が増えているという。30度を超える暑さの日は、夜になっても、家の中に熱がこもる場合もある。日中はもちろん、夜も26~28度に設定したエアコンをつけて過ごしたい。そして、家の中でもこまめな水分補給を忘れずに。

暑さへの感覚が衰えていることから、「そんなに心配しなくても、自分は大丈夫」と考えている高齢者は多い。家族がエアコンの利用や水分補給を促しても、耳を貸さないケースもよく耳にする。家族が言っても聞かない場合は、かかりつけ医などから、「そう考えている人が一番危ない」など、ちょっときつく言ってもらうといいかもしれない。

エアコンに関しては、タイマーで自動的に稼働するように設定しておくと安心だ。

寝ている間の熱中症予防にエアコンの利用を

最近、増えているのが、寝ている間の熱中症だ。

窓を締め切ってエアコンを付け、2~3時間で切れるタイマーを設定して寝ている人は要注意だ。人は寝ている間に、体からコップ約1杯分の水分を失う。エアコンが切れたあと室温が上がり、暑さと脱水から、熱中症になることがある。

エアコンの温度は高めに設定してつけっぱなしに。家族がタイマーで稼働するよう設定しておくといい(画像:筆者撮影)
エアコンの温度は高めに設定してつけっぱなしに。家族がタイマーで稼働するよう設定しておくといい(画像:筆者撮影)

熱中症が怖いのは、体の異変に気付いた時、手や口がけいれんするなどして助けを求められない場合もあることだ。特に夜間の場合、同居している家族も気付きにくい。

暑い夜は、エアコンを28度など高めの温度に設定し、朝までつけたままにしよう。その際、直接、冷気が体に当たらないように気をつけたい。また、枕元にはお茶やスポーツドリンクのペットボトルを置いて眠るといい。夜中に目が覚めたらその都度、水分を補給しておけば安心だ。

入浴も熱中症のリスクがあるので要注意

また、もう一つ気をつけたいのは、入浴による熱中症だ。

若い人はシャワーで済ます夏場も、高齢者は湯船に浸かる人が多い。湯船に浸かり、入浴すると、500ml以上の水分が失われる。入浴前、入浴後に、忘れずに水分を補給することが大切だ。

入浴で熱中症になる恐れがあるというのは意外な盲点(画像:フリー素材)
入浴で熱中症になる恐れがあるというのは意外な盲点(画像:フリー素材)

エアコンの効いた部屋で長時間過ごしていると、体が冷えてしまうこともある。冷えは冷えで、体調を崩す原因となることがある。冷えた体を温めるには、38~40度くらいの少しぬるめの風呂で20分程度半身浴をするといい。血行を良くする上、リラックス効果もある。風呂上がりに汗をかきすぎることもない。就寝の1時間半前くらいに風呂から上がるタイミングで入浴すると、よく眠れる。

風呂から上がったあとは、眠る前には水分を補給し、枕元に飲物を置いて寝ることを忘れずに。

殺人的な暑さをうまくかわしながら、長くなりそうなこの夏を何とか乗り切りたいものだ。

介護福祉ライター/社会福祉士+公認心理師+臨床心理士

高齢者介護を中心に、認知症ケア、介護現場でのハラスメント、地域づくり等について取材する介護福祉ライター。できるだけ現場に近づき、現場目線からの情報発信をすることがモットー。取材や講演、研修講師としての活動をしつつ、社会福祉士として認知症がある高齢者の成年後見人、公認心理師・臨床心理士として神経内科クリニックの心理士も務める。著書として、『介護職員を利用者・家族によるハラスメントから守る本』(日本法令)、『多職種連携から統合へ向かう地域包括ケア』(メディカ出版)、分担執筆として『医療・介護・福祉の地域ネットワークづくり事例集』(素朴社)など。

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