北朝鮮「暴走カップル」を次々に見せしめ…若い2人の”許されざる罪”
北朝鮮の朝鮮人権協会は15日、米国のジュリー・ターナー北朝鮮人権特使が12日から日韓を歴訪中であることを受けて報道官談話を出し、同特使を口汚くののしりながら、米国の「人権謀略騒動だ」と強く反発した。北朝鮮が、人権問題に関してムキになるのは相変わらずである。
この談話には、次のようなくだりがある。
「訪問に先立ってターナーは、われわれの境内に対する謀略情報流入の必要性を言い立てた」
ここで言われている「謀略情報」とは、外部世界の情報のことだ。そして、北朝鮮の人権侵害でこのところ最も問題視されているもののひとつが、国内で密かに流行する韓流コンテンツを取り締るための重すぎる刑罰の乱発だ。
北朝鮮では2020年12月、最高人民会議常任委員会第14期第12回総会において「反動思想文化排撃法」が採択された。韓流コンテンツの流入により、国民の思考やライフスタイルが変化するのを極刑で押さえつけるものだ。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
たとえば2022年1月、平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)で、20代の男女のカップルが見せしめとして公開処刑された。刑場では、数百人がその様子を見守ったという。
2人は韓流コンテンツを密売していたことが発覚し、「排撃法」違反が適用されたのだ。女性の方は道保衛局(秘密警察)の政治局長の娘という、いわば「幹部令嬢」だったが、罪をもみ消すこともできなかった。
この事件には、女性のバックグラウンドのほかにもうひとつ特徴があった。2人は韓流コンテンツの複製を目的に「写真館」を営んでいたのだ。北朝鮮では、反体制宣伝物の生産に使われかねないパソコン周辺機器やコピー機なども、規制の対象となっている。所有するには写真館などの開業を当局に届け出ねばならない。2人はおそらく、女性の父親のコネで、開業許可を取り付けたのだ。
同様の事件はほかにもある。首都・平壌市内の兄弟山(ヒョンジェサン)区域の下堂洞(ハダントン)に住んでいたある夫婦は、偽タバコの密造で儲けていたのだが、取引業者から韓流コンテンツの入ったSDカードを入手したのを機に、別に作業場を設けて大量のコピーを生産していた。この夫婦と従業員2名の計4人もまた、極刑に処されている。
北朝鮮当局にとって、こうした計画的な「犯行」はまさに反体制活動に等しいものであり、許されざる罪なのだろう。
一方、これらの例が見せているのは、ある種の「商品」は権力が厳しく取り締まるほど、人々の本質的な需要をかき立てると言うことだ。それは、米国の禁酒法の失敗がはるか昔に証明したことでもある。
北朝鮮当局の厳しい取締りは、韓流コンテンツを見ようとする国民の行動をいくらか委縮させるかもしれない。だが、「見たい」と思う欲求までは消すことができない。北朝鮮当局による重罰の乱発は、そうした本質的問題に直面したことに対する、焦りの表れかもしれない。