リプレー検証拡大で当該審判団に判定を任せるべきではない
NPBが13日、来シーズンからMLB同様に監督がリプレー検証を要求できる「リクエスト」制度の導入することを発表した。リプレー検証拡大に諸手を挙げて賛成の立場からすれば、MLBが2014年に「チャレンジ制度」を導入してから4年も遅れてしまったことが逆に遅きに失した感があるくらいだ。
今年の日本シリーズ第2戦で2度にわたってリプレー検証が使用され、それらが勝敗の分かれ目になったのは記憶に新しいところだろう。今やリプレー検証は試合の勝敗に関わる重大なツールになっているのは明白で、その権限を監督に与えるのは必然的な流れだろう。リプレー検証拡大に少なからず懐疑的な意見があるのは承知しているが、明確な誤審がありながらそのまま見過ごされてきたことの方がむしろ問題だろう。ある程度誤審を詳らかにすることで、審判の技術向上を促すことにもなるはずだ。
ただ1点気になるのがリプレー検証のやり方だ。これまではケースごとに当該審判団が検証に当たってきたが、このまま継続することには疑問を禁じ得ない。
そもそもMLBではチャレンジ制度導入に合わせ、MLBオフィス内に「リプレー・オペレーション・センター」を新設し、担当審判員をセンターに常駐させ、一括してリプレー検証の判定を行うシステムを採用している。判定に疑念を持ってリプレー検証を行っているのだから、当然のごとく冷静に判断する“第3の目”が必要になってくる。リプレー検証中にMLBの審判がヘッドフォンを着用しているのは、センターにいる担当審判員とやりとりしているためだ。
残念ながらNPBではMLB方式を採用するのは不可能だ。各球場に独自のカメラを設置し、さらにそれらのデータを集積するオペレーション・センターを設置するには莫大な費用がかかるし、またNPBの場合、地方球場での公式戦開催も多く、すべての球場を自分たちの手で網羅するのは無理がある。やはり従来通りTV中継の映像を利用するしかないだろう(ただし今後はTV局の協力を得ながら、どの球場でも高画質であらゆる角度からスロー再生できる映像を得られる環境が必要になってくるだろう)。だがリプレー検証の最終決断を下すのはやはり当該審判団ではなく別の人物であるべきだ。
できれば各試合ごとに予備審判を2人派遣し、一人はリプレー検証だけを担当させるのが理想的だろう。もしそれだと審判員のローテーション的に問題があるようなら、公式記録員を2人体制にして1人をリプレー検証を担当させるとか、審判員OBをリプレー検証担当者として再雇用してもいいだろう。いずれにせよ当該審判団たちが自ら誤審かどうかを判断させるのはどうしても客観性を欠いてしまう。
リプレー検証の拡大は各チームにも影響をもたらすはずだ。MLBでは試合中もクラブハウス(もしくはビデオルーム)にビデオ・コーディネーターが待機し、即座にビデオをチェックし、チャレンジできそうなプレーがどうかの確認作業を行える態勢を整えている。日本でも数少ないリクエストを有効に活用するために、そうしたスタッフが求められるのではないだろうか。
ただ改めて賛成の立場から言わせてもらえれば、リプレー検証拡大は“百理あって一害無し”だ。必ずや野球観戦の魅力を増してくれるだろう。