京王線沿いに焼鳥の穴場! 名物はとろっとろの長ねぎと、予想もつかない麺で作る生胡椒麺!?【鳥ふぢ】
今回、冒険するのは東京都世田谷区南烏山の焼鳥屋「鳥ふぢ」。最寄りは京王線・千歳烏山駅。よくある住宅街かと思いきや、ぶらり歩いてみると和洋問わず飲み屋も多いことに気付いた。こういう町には、ちゃんとうまい町焼鳥があるもの。駅前のメイン通りから路地に入ると、控え目に佇む「鳥ふぢ」を見つけた。
焼鳥はアラカルトでもおまかせでも
暖簾をくぐると、店主が関西訛りで明るく迎え入れてくれた。なんとなく、もっと渋い店かと思っていたので、これはいい裏切り。席に座り、とりあえずの瓶ビールで乾杯。いつもながら、この瞬間がたまらない。
目の前にあった品書きを見ると、焼鳥はアラカルトでも、おまかせ(ストップ制)でもいいようだ。それならと、ここはアラカルトで気ままに。こう融通が利くのも、町焼鳥のいいところ。
焼鳥はプリップリのハツから
1本目のハツは、なんとも個性的な串打ち。半割にしたハツを向きを変えて交互に打つことで、舌の感じ方にも微妙な変化。ほんのりレア目の火入れで、うまみがありながら軽やかな味わい。こういうハツは火の通りも早いので、さっと出てくるのも嬉しいところだ。ビール片手に、俄然、焼鳥モード。
砂肝にしそ巻、たれが合うせせり……
歯切れのよい砂肝は焼鳥屋に来たことを実感するネタ。店によってカットも串打ちも異なり、それこそ千差万別の食感で楽しませてくれる。牛や豚にはない部位だけに、焼鳥好きに砂肝好きが多いのも、納得というもの。
「鳥ふぢ」の砂肝は、まるで石垣のように重なり合っているのが特徴。シャクシャク、サクサク……。いいねぇ。口に当たる面に緩急が生まれ、1本のなかでも飽きがこないんだ。
ビールも空になったところで、養命酒ハイボール! 養命酒といえば食前か就寝前に飲むイメージがあるところ、これは食中酒。炭酸で割ってレモンを浮かべれば……まるでカンパリソーダじゃないか。
シナモンのようなほのかなハーブ香と、さわやかな甘み。うーん。なんだか、何杯飲んでも罪悪感がわかなさそうな、魔法のような酒だ。
地鶏「京赤地どり」を使ったネタも
「鳥ふぢ」のネタは基本、若い銘柄鶏のようだけれど、一部、京都産の地鶏「京赤地どり」を扱うこともあるようだ。だいたいの銘柄鶏が50日~60日ほどの飼育日数のところ、この京赤地どりは85日ほど。肉の締まりも脂ののりもほどよく、きっと誰にも食べやすい。この日はももにレバー、手羽。
トップの1貫だけにわざびが添えられたももは、その味わいのグラデーションが肝。1貫目は後味軽やかに。そのまま飽きることなく2貫目を迎えられるわけだ。噛んだ瞬間、パリッと崩れる皮、ジュワッと溢れる脂。んん。言葉はいらないな。
手羽はももと同じように肉は締まり、飼育日数が長いぶん、骨付きもたくましい。そこは安心。肉離れがよいように下処理してあるので、まずは2本の骨をひねりながら外して。あとは、うまみが詰まった肉に頬張るだけだ。うーん。これぞ焼鳥の醍醐味。
ここで燗酒を飲むなら「古都」
そろそろ日本酒の気分。外が寒かったこともあって燗酒気分だ。何があるか聞いてみれば「うちは、燗酒といったら『古都』なんですが、それでええですか?」と店主の小島さん。
どうやら京都の日本酒のようだ。やや辛口の口あたり。うまみや香りを感じながら、キレのよい後味。うん、食中酒に合っている。これは飲んだことのない銘柄だなぁ。
「地元から近い酒蔵さんのなんです」
京赤地どりといい日本酒といい、さりげなく匂う地元愛。そういうこだわりも町焼鳥を彩る花になる。
冬ねぎのうまみがじんわり伝わって
ふと焼き台を見ると、太い長ねぎがじっくり、じわじわと焼かれていた。どうやら、まわりの常連客に焼いているネタのよう。たれにくぐらせては、またじっくりと弱火で焼き、それを丁寧に繰り返していく。
次第に焼き目が付き、見るからに香ばしさが増してきた! んん。これは、ずるい。こんなものを見せられてしまっては、頼まない手はないじゃないか……。
結局、釣られて「いかだ(長ねぎ)」を注文してしまった。常連の分のネタを見ていたから時間がかかるのは分かってはいたものの、さすがに我慢できなかった。噛めばとろりとして、冬ねぎならではの濃い甘みがギュギュッと。その甘みを引き立てるタレも、たまらない。
昔の丸太船に似ているから「いかだ」とはよく言ったもの。ねぎまとは違って肉は打たれていないものの、負けず劣らずの魅力がある。小島さんに聞いてみれば、やっぱり人気ネタのようだ。
「長ねぎを丸1本使うので、注文を受けてから串打ちしています。昨年の夏ごろは納得のいくねぎが手に入らんかったので、そういう時は出していませんでした。ねぎはやっぱり、冬が一番うまいです」
黄金色の麺に浮かぶ生胡椒
焼鳥も10本近く食べて、さて、〆はどうしようかと思ってメニューを見てみると……
- 焼きおにぎり
- そぼろ御飯(卵黄のせ)
- 鶏だし茶漬け
- 生胡椒麺
パッと見ではそぼろごはんに惹かれたものの、妙に生胡椒麺の存在が気になってつい頼んでしまった。てっきり中華そばに生胡椒を添えたものだと思い込んでいたものの、現れたのはやけに黄色みがかった麺……。すすってみれば、つるりとして独特のシコシコ感が押し寄せてくる。
……おお、これはパスタだ。なかでも細麺のカッペリーニ。確かにスープパスタという料理はあるものの、これは全く別物!
「ひやむぎでもおいしかったのですが、直感でパスタを使ってみたら、こっちの方がええなって、思ったんです」
スープはもちろん、鶏から取ったスープ。塩気が弱いのは、生胡椒の塩分を考慮してのことかもしれないなぁ。これほど尖がった麺料理が、千歳烏山の町焼鳥で食べられるとは思いもしなかったな。これだから、町焼鳥はおもしろいんだ。
▼冒険のおさらい
①焼鳥はアラカルトOK
②とろとろに焼けた長ねぎも必食
③パスタを使った生胡椒麺が斬新!
店舗情報
【店名】鳥ふぢ
【最寄り駅】千歳烏山駅
【住所】東京都世田谷区南烏山5-11-2
【予約】03-6909-0367
【定休日】月曜
【串のアラカルト】あり
【コース(セット)】おまかせはあり
【鶏メモ】銘柄鶏、京赤地どりなど