Yahoo!ニュース

女子バレーボール日韓戦!!「最精鋭にして完全体」という韓国はどんなチームなのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
左からパク・ジョンア、キム・ヨンギョン(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

9月14日から開幕した女子バレーボールのFIVBワールドカップ・バレー。オリンピック、世界選手権と並ぶ“世界3大会のひとつ”とされ、今大会は来年の東京五輪を占う前哨戦として位置づけられるだけに、中田久美監督率いる“火の鳥NIPPON”への注目度は高い。

初戦(14日)のドミニカ共和国戦には勝利したものの、昨日のロシア戦(15日)ではフルセットの末に惜敗。連勝はならなかったが、期待は高まるばかりだ。

韓国女子バレー界のベストの顔ぶれ!!

そんな“火の鳥NIPPON”が本日9月16日に対戦するのが韓国だ。

韓国は初戦の中国戦を落とし、昨日のドミニカ共和国戦でも1-3で敗れて2連敗。あとがない状況だが、その顔ぶれは決して侮れない。女子バレー韓国代表はどんなチームなのか。詳しく紹介したい。

「ついに“最精鋭メンバー”でW杯に挑む女子バレー」(『スポーツトゥデイ』)。これは大会開幕前に韓国メディアが報じたヘッドラインだ。

実際、今回の来日メンバーは“ベストメンバー”に近い。日本でも有名なスーパーエースであるキム・ヨンギョンはもちろん、昨季の韓国Vリーグ・MVPに輝いたレフトのイ・ジェヨン、さらには「国産大砲」とも呼ばれる“美女スパイカー”のパク・ジョンアもいる。まさに 韓国女子バレーの“顔”たちが勢ぞろいしたベストの布陣だ。

(参考記事:“Vリーグ女神”に“美人姉妹”、日本との因縁も。韓国美女バレー選手ベスト6を一挙紹介【PHOTO】)

新監督のもとで続いた模索

「ラバリニ号、ついに“完全体”に」(『SPOTV NEWS』)という見出しも納得だ。

というのも、今年2月に韓国女子バレー史上初の外国人監督として招聘されたイタリア出身のステファーノ・ラバリニ監督だが、彼女らベストメンバーが揃うことはなかった。

ラバリニ監督体制の初陣となったネイションズリーグではイ・ジェヨン、パク・ジョンアだけではなく、センターのヤン・ヒョジン、リベロのキム・ヘランなどが当時はVリーグが終わったばかりであったこともあって手術やリハビリもあって合流できなかった。それもあって、ネイションズリーグでは3勝12敗で15位に終わっている。

また、8月に行われた東京五輪・世界予選ではラバリニ監督体制下で主力セッターに成長したイ・ダヨンをケガで欠いたことが響いてロシアに競り負け、五輪直行のチケットを逃した。

8月下旬にソウルで行われたアジア選手権でもイ・ダヨンらを欠き、まさかの3位に終わっている。

それも準決勝では若手中心の日本に逆転負けを喫し、エースのキム・ヨンギョンがうっすらと悔し涙を浮かべながら、「日本戦で負けた後、みんなが悔しがった。それでもチームを変えていく過程だから見守ってほしい」と嘆願したほどだった。

ラバリニ監督は就任時からキム・ヨンギョン頼みのワンマンチームから全員参加のスピードバレーをチーム全体に求め、さまざまな選手を試しているが、女子バレー韓国代表はまさに過渡期の苦しみを味わってきた。

美女スパイカーは完全復活するか

それだけに今回のワールドカップにかける意気込みも並々ならぬものがあった。チームはアジア選手権後に小休止を挟んで9月1日から韓国・鎮川(チェチョン)のナショナルトレーニングセンターで合宿を続けてきた。

ただ、前出した通り、中国には1セットも奪えず0-3で完敗し、ドミニカ共和国には1-3で敗れている。

韓国メディアの多くは、大会前から指摘されてきた不安定なレシーブや大事な局面でミスを連発する“ツメの甘さ”を指摘しているが、今日の日韓戦で個人的に注目しているのは、直近の合宿からチームに合流したパク・ジョンアだ。

昨年の世界選手権でチーム最多得点を記録し、キム・ヨンギョンに次ぐエース格に浮上するも、今年4月に左足首の手術をしたパク・ジョンアは、今回のワールドカップで初めてラバリニ監督体制下でプレーしている。

中国戦では1得点にとどまったが、ドミニカ共和国戦では3回のサービスエースを含む8得点を挙げている。徐々に覚醒しつつあるこのパク・ジョンアに加え、同じくライトのキム・フィジンがドミニカ共和国戦で20得点を叩き出すなど、エースのキム・ヨンギョン以外にも計算できる選手が出てきている。

「キム・ヨンギョン依存度からの脱出」(『SPOTV NEWS』)こそが韓国女子バレーの長年の課題とされ、ラバリニ監督体制発足後もそれを目指してさまざまな模索が続いている韓国だが、パク・ジョンアやキム・フィジン、さらには前出したイ・ジェヨンなどは日本も警戒が必要になってくるだろう。

いずれにしても女子バレー日韓戦は今年、ネイションズリーグとアジア選手権で2度対戦しており1勝1敗と互角だが、今回の韓国は“最精鋭”にして“完全体”のチームだ。まして日韓戦となるといつも以上の集中力と執念を燃やすのが韓国スポーツ界でもある。

今日の試合も白熱した“宿命ライバル対決”になる予感がする。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事