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冨山さんの「G大学・L大学」と文系学部擁護論者の議論は、ちょっと噛みあっていないと思います

治部れんげ東京科学大学リベラルアーツ研究教育院准教授、ジャーナリスト

こちらの記事、話題になっています。

国立大学改革亡国論「文系学部廃止」は天下の愚策- 内田 樹

http://blogos.com/article/113789/

さすが内田先生、リベラルな人が、もやもやとした不快感・不安感を抱いていた事象を上手に言葉にして下さっています。

私が今、食えているのは「すぐ役には立たなかった」大学のおかげ

私は大学卒業後すぐ民間企業で働き、今も「この仕事いくら」という世界で仕事をしています。景気が悪い時に、優秀な同僚がクビを切られたり、労働者を守るはずの法律のせいで契約打ち切りになった人も知ってます。

市場に近いところで仕事をしてる身ではありますが、まともな大学に職業訓練学校になってほしい、とは思いません。ずっと前に取材したある大学の先生が「明日役立つ知識は10年後役に立たなくなる」とおっしゃっていましたが、その通りだと思います。自分がフリーになった後、食べていけてる/食べさせていけているのは、初職で受けたOJTの訓練に加え、20数年前、大学時代に読んだ/読まされた本たちのおかげだと思っているから。

大学が、やたらと実務家・産業界に近づく風潮も、はっきり言って疑問に思ってます。天つばですが、社会人の仕事経験を聞かせるのは、講義中でなく中等教育や地域でやればいい。役にも立たなそうな本こそ、読んでほしいんだけどな、と矛盾を感じつつ、女子大生を励ます近所のおばさん役をやってます。

…ここまでは内田先生に賛成、という趣旨の話です。

たぶん、このままでは「労働者にすらなれない」

ここからが本題で、たぶん、冨山和彦さんは「このままだと、ふつうの人は労働者にすらなれない」という危機感を抱いているのです。内田先生は、この改革を「99%は労働者になれ」という趣旨に解釈していらっしゃいますが、たぶん、99%といわず60%は、このままだと、労働者になることすら無理という危機感が、あの極端な「G大学L大学」の議論につながっているんじゃないかな、と思います。

これに対抗するためには、ちゃんとした研究者の方々が、大学の勉強は「役に立たなくていいんだ」と開き直るのではなく「長期的に役に立つのは、短期的には役に立たなそうなことなんです」ということを、実証してみせること、ではないでしょうか。

東京科学大学リベラルアーツ研究教育院准教授、ジャーナリスト

1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社で16年間、経済誌記者。2006年~07年ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年からフリージャーナリスト。2018年一橋大学大学院経営学修士。2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、国際女性会議WAW!国内アドバイザー、東京都男女平等参画審議会委員、豊島区男女共同参画推進会議会長など男女平等関係の公職多数。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館新書)、『ジェンダーで見るヒットドラマ』(光文社新書)などがある。

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