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40年あまりにわたるサラリーマンのこづかいの推移をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ サラリーマンのこづかいは昔も今も変わらないのか否か。(写真:アフロ)

昨今では1979年当時の水準に届かないこづかい

新生銀行発表の「サラリーマンのお小遣い調査」(※)によれば2020年のサラリーマンの平均こづかい額は3万9419円とのこと。過去の値はどのような状況だったのが。前世紀からの経年推移を確認する。

次に示すのは、「サラリーマンのお小遣い調査」で公開されている限りのサラリーマン(男性会社員)における月額のこづかい推移。さらには公開値としてはもっとも古い1979年のこづかい額を基準値の1.00とし、その額と比較した指標としての推移もグラフ化した。グラフの形状は同じになるが、変移の観点では後者の方が分かりやすい。

↑ サラリーマン平均こづかい額(月額、円)
↑ サラリーマン平均こづかい額(月額、円)
↑ サラリーマン平均こづかい額(1979年の額を1.00とした場合、月額分)
↑ サラリーマン平均こづかい額(1979年の額を1.00とした場合、月額分)

最高値は1990年の7万7725円。1979年比で6割強のプラス。一方最低額は1982年の3万4100円。

30年間の推移を記した過去発行の白書では、サラリーマンの平均こづかい額の動向について

・2001年までは収入と相関。

・前年の日経平均株価に相関。

・2000年以降は消費者物価指数に相関。

との傾向分析を行っている。今世紀に入ってから収入との相関関係が見られなくなったのは、こづかいが収入の減収幅よりも大きな下げ幅を示しているからとのこと。また数年前まではデフレが継続していたので、こづかいが減額されてもかろうじて耐えられていたとの言及もある。

もっとも、こづかいが足りなくなった時の対応方法としては、「我慢する」との回答率が一番高い状況が続いている。

↑ サラリーマンのこづかい不足の際のねん出方法(複数回答、注目項目)
↑ サラリーマンのこづかい不足の際のねん出方法(複数回答、注目項目)

価値観が変わり「使わずに我慢」が当たり前となり、こづかい額にあまり影響されなくなった可能性もあるが、サラリーマンの金銭に関する精神面に留意する必要があるのは否定できまい。

消費者物価指数を考慮すると

以上は単純な金額ベースでの比較。そこで今度は実質購買力の変化を見るため、消費者物価指数を考慮に入れる。1979年の消費者物価指数の値を基準に、各年のこづかい額を実質購買力で修正する。例えばこづかい額が同じ金額の1万円だったとしても、1979年から2020年の間に物価が2倍に跳ね上がっていれば、実質的な2020年のこづかいの購買力は(1979年ベースで)5000円分となる。

20世紀末以降は消費者物価指数の動きに大きな変動は無い。それでも1979年の値と比べると色々な流れが見えてくる。

↑ サラリーマン平均こづかい額(1979年の額を1.00とした場合、消費者物価指数考慮、月額分)
↑ サラリーマン平均こづかい額(1979年の額を1.00とした場合、消費者物価指数考慮、月額分)

額面ベースでは1979年の6割強増しだった1990年も、実は消費者物価指数の上昇に伴うものであり、実質的には3割足らずの増加でしかなかったことが分かる。それとともに今世紀に入ってからはしばしば、金額ベースでは最低額だった1982年をさらに下回る実質購買力でしかない値をつけていることも把握できる。「デフレが継続しているのでこづかいが少なくなっても何とかなっている」のは事実だが、元々の実質購買力が低いため、その下げ幅が小さい程度の慰めにしかならない。またここ数年はデフレ脱却の施策が効き始めており、物価も上昇する気配を見せているが、こづかいはそれに追いついていない感は否めない。

さらに昨今ではひとりひとりが痛いほど実体験している通り、こづかいの内訳として飲み代や昼食代以外に、携帯電話代の存在が無視できないもの、圧迫感を増すものとなりつつある。自らのこづかいに関してサラリーマンは、より一層の工夫が求められそうだ。

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※サラリーマンのお小遣い調査

直近年分となる2020年分は2020年4月10日から14日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2717人。男女会社員(正社員・契約社員・派遣社員)に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料では多くを占める会社員は男性1252人・女性841人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数をもとにしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では社会の実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が40.7対59.3、女性は54.3対45.7。今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけではないことに注意。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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