長年にわたる節分の日における恵方巻きの購入性向の変化をさぐる(2022年公開版)
昔と比べて2月に恵方巻きがよく食べられるようになっている?
節分の日に恵方を向き、無言で食べ切るとよいことが起きる、願い事がかなうとして、風習化の傾向がある恵方巻き。一方でスーパーやコンビニの過剰入荷と売れ残り品の廃棄問題も社会問題化している。今回は総務省統計局の定点調査「家計調査」の公開値を用い、節分の日における恵方巻きの購入性向の変化を確認する。
今回精査する品目は「すし(弁当)」。飲食店以外の持ち帰りのすし類が該当し、冷凍品は含まない。具体的にはにぎりずし、まきずし、いなりずし、ちらしずし、折詰ずしが例に挙げられているが、恵方巻きはこの品目に該当すると考えられる。
次に示すのは家計調査で公開値の取得が可能な2000年以降における、2月のすし(弁当)の支出金額の動向。月次の値が調査公開されているのは二人以上世帯のみなので、二人以上世帯の値を確認する。また、年平均を月割りした結果も併記する(現時点で2月分の月次は2021年分まで公開されているが、年次は2020年分までとなっている)。
年平均の月割り、つまり年間に支出する金額に大きな変化はない。2015年あたりから増加傾向が見られる程度だろうか。他方2月に限定すれば上下を繰り返しながらも少しずつ増加傾向にある。特に直近となる2020-2021年の増加ぶりが大きい。単純に商品単価の上昇によるものなら年平均月割りも同様に増加しなければならないのだが、その傾向が見られないため、節分の日に恵方巻きを食べる風習は少しずつ浸透しているようだと推定できる。
2月のみと年平均月割りの差異の観点で見ると、2003年ぐらいまではほぼ差が無かったのに対し、2004年以降は差が生じ、2015年ぐらいまでは少しずつ差が開いているように見える。この差の分が、2月にのみ恵方巻きを食べる世帯の割合を間接的に表していると考えることができることから、2015年ぐらいまでは節分の日に恵方巻きを食べるという風習が浸透しつつあった、2015年以降はその浸透の広まりは足踏み状態にあるとの解釈ができよう。
どの年齢階層が食べるようになったのか
それでは具体的にどの年齢階層が節分の日に恵方巻きを食べるようになったのか。取得可能なもっとも古い値となる2000年と直近分となる2021年それぞれの2月における、年齢階層別のすし(弁当)の支出金額と購入頻度を確認したのが次のグラフ。
2000年2月で一部イレギュラーが生じているが、若年層よりも高齢層の方が恵方巻きを食べることに変わりはない。変化の度合いを見ると、25~34歳は大きな伸び率だが、それを除けばおおよそ高齢層ほど伸び率も大きくなっているようだ。若年層はよく食べるようになり、高齢層もまたよく食べるようになっている。逆に中年層(45~54歳)ではあまり変化が無いのは興味深い。
余談ではあるが日次での支出金額の動向を直近の2021年とデータが取得可能な最古の2000年とで比較すると次の通りとなる。グラフの縦軸(支出金額)は両グラフで揃えている。
2000年の時点ですでに節分の日に恵方巻きを食べる風習がそれなりに浸透していたことは確認できるが、同時に直近の2021年と比べると金額は1/3にも満たない。地域的な広まり方か、世帯の割合かまではこの値からだけでは分からないが、少なくとも昔と比べ今の方が節分の日に恵方巻きを食べる風習が浸透していることは明らかなようだ。
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