「コロナ禍で研究できない若手研究者に支援を」若手研究者らが予算を要望
周知の通り、新型コロナウイルスの感染拡大によって大学生活に支障が出ている。
中でも研究への支障は大きく、文部科学省の調査によると、大学院博士課程の学生の7割が「博士号取得に遅れが生じる」との懸念を持っているという。
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そうした状況を踏まえ、日本学術振興会は7月28日に「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特別研究員の採用期間の取扱い」に関する通知をHPに公開、特例で学振特別研究員(DC1、DC2)の採用期間の延長希望に柔軟に対応することを発表した。
この背景には、博士課程学生がツイッターで声を挙げたことがあったことは以前記事に書いた通りである。
関連記事:博士課程学生からの要望を受けて、学振特別研究員の延長、奨励金繰り越しが可能に(室橋祐貴)
ただ、特別研究員としての採用期間が延長されても、生活費に相当する研究奨励費が追加で支給される訳ではなく、追加の予算措置が課題として残っていた。
海外特別研究員にも大きな支障
また国内の特別研究員だけではなく、海外渡航が制限される中で、海外特別研究員にも大きな支障が出ており、筆者のもとには海外特別研究員の採用者から請願が届き(281名が署名)、こちらも7月31日に日本学術振興会から「日本国内での研究期間を最長1年間延長する」等の特例措置が出されていた。
海外特別研究員とは
○優れた若手研究者を海外に派遣し、特定の大学等研究機関において最長2年間研究に専念できるよう支援する制度。
○海外への渡航を開始する時点から採用を開始し、「往復航空費」と「滞在費・研究活動費」(旅費扱い)を支援する仕組み。
ただこちらも、採用期間の延長については、来年度の追加予算が必要となり、9月末に予定される令和3年度概算要求に計上できるかが大きな課題となっていた。
来年度予算を要望
そうした流れを踏まえ、9月9日、日本若者協議会代表理事である筆者や若手研究者、またこのテーマに取り組む公明党の三浦信祐青年局長、安江伸夫学生局長と一緒に、財務省・遠山清彦副大臣に要望書を提出。
「特別研究員と海外特別研究員の採用期間の延長と、延長に伴う研究奨励金・滞在費等の追加支援」を令和3年度概算要求に含めることを求めた。
要望書を受けた遠山財務副大臣は、「前向きに検討し、何とか実現できるようにしたい」と応じた。
若手研究者の課題は山積
8月28日に、文部科学省科学技術・学術政策局人材政策課及び科学技術・学術政策研究所が「国内の主要18大学で39歳以下の若手教員が2019年度までの6年間に12%減った」と発表したように、若手研究者の待遇は厳しく、修士課程から博士後期課程への進学率は減少を続けている。
背景には多くの課題が存在するが、今回の日本学術振興会による特別研究員にしても、採用率は20%程度と非常に狭い門な上に、研究奨励金(生活費)は大学院修了者の平均初任給よりも少ない月額20万円と非常に低く、この20万円という額面は、制度開始時の平成3年(1991年)から変わっていない。
この間、税金や社会保険料、授業料は大きく上がっており、実質賃金としては下がる一方となっている。
さらに、特別研究員はどことも雇用関係がない状態にあるため、雇用保険や社会保険に加入することができず、厚生年金に入ることも、育休・産休手当てをもらうこともできない。
他にも、非常勤講師に研究者番号が割り振られておらず、大学の施設が利用できない、科研費を申請できない、特別研究員の就労時間が管理されていない(そのため子どもの保育園入園・継続の申請等がしづらい)等、課題が山積しており、一刻も早く待遇改善が求められる。
日本若者協議会では、若手研究者の待遇改善を図るため、アンケートを実施しており、若手研究者(志望含む)は下記まで意見をお寄せ頂きたい。