不器用なベテラン社員を冷遇する会社3つの特徴 エイハラ(エイジハラスメント)との関係性
「昔のやり方に固執して、新しいことを覚えようとしない」
「若手社員に比べて生産性が低い」
こんな言葉を昨今はよく耳にする。ベテラン社員に向けられる厳しい評価だ。私も55歳。確かに時代の変化に合わせて新しいスキルを身につけることは大切だと思う。しかし長年の経験から培われた知恵や人脈を軽視してはいないだろうか。
ベテラン社員を冷遇する会社には共通する特徴がある。今回は、そのような会社3つの特徴を解説する。今は若手であっても、いずれはベテランになる。どの世代の人でも、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
■新しいスキル適応を過度に強調する文化
ベテラン社員を冷遇する会社1つ目の特徴は、新しいスキルへの適応を過度に強調する文化だ。
最新のITツールを使いこなせるか、生成AIで業務生産性をアップできるか。こうした能力ばかりが重視される。
元システムエンジニアだから断言する。不要なITスキルを身につけても意味がない。とくに昨今の日本はSaaS企業が「DX推進しないと生き残れない」というスローガンを吹聴して営業攻勢をかけている。気を付けたほうがいい。
たとえば財務分析するとき、営業の生産性分析するとき、何らかの専用ITツールが必要だろうか? 答えはNOだ。表計算ソフトでも十分に分析できる。どのようなデータが必要か。その仮説を立てる力があるだけでいい。膨大なデータを扱わない限りは高度な分析ツールを使うだけムダだ。
(仮説力がなければ、どんなに高度なITツールを導入しても結局は使いこなせない)
■若手優遇の風潮が強すぎる
ベテラン社員を冷遇する会社2つ目の特徴は、若手優遇の風潮が強すぎることだ。
まだ実力が足りない若手社員を厚遇する環境では、ベテラン社員が自分の存在意義を感じにくくなる。ひどい場合は、「自分の貢献が認められない」と感じ、疎外感を持つようになるだろう。
ある広告会社では、若手社員ばかりが重要な企画を任されるようになった。しかし知識や経験が劣る若手ばかりでは、まるでアイデアを出すことができず、結局、ベテラン社員のサポートが必要とされた。次の公式は覚えておこう。
「実力=実績×能力」
若手に機会を与えるのはいい。実績がなくても能力があれば可能性を見出せる。しかし、ただ若いというだけで厚遇し、ベテラン社員を冷遇するのは組織のためにはならない。
より大きな成果を生み出すには、本当に能力があるのか。新しい発想や、柔軟な行動ができる若手なのか。厳密にチェックしよう。
■組織の多様性とバランスを損なう
ベテラン社員を冷遇する会社3つ目の特徴は、組織の多様性とバランスを損なうことだ。
前述した通り、年齢だけで厚遇し続けると、差別と思われるようになるだろう。差別と区別は違う。エイハラ(エイジハラスメント)と呼ばれないよう、会社は細心の注意を払う必要がある。
それに時代の流れに乗って若手ばかりを重用すると、組織内の多様性が失われてしまう。若手社員は最新のトレンドに敏感で、スピード感のある働き方を得意とするかもしれない。いっぽうベテラン社員は慎重かつ深い洞察に基づいた判断を下すことができる。
多様性の時代なのに、若手重視の考えを持ったら結局は時代錯誤になる。
■経験と体験の違いとは?
どんなに若手に体験させても、経験豊かなベテランにはなかなか勝てないものだ。経験と体験の違いも必ず覚えておこう。
体験とは、実際に行動したこと。初体験とか実体験と言う。いっぽう経験とは、体験したうえで知識や技術を身につけることを指す。経験値、経験則と言う。
つまり体験は「点」で、経験は「線」だ。どんなにベテラン社員の経験を言語化しようとも、実際に自ら行動し、学習しない限り身につかない。
10年経験する必要はないことでも、2~3年は経験しないと分からないことが、まだまだ多い。そのことはしっかり頭に入れておこう。
■年齢ではなく可能性や能力を厚遇しよう!
ベテラン社員を冷遇する会社の特徴を見てきた。
新しいスキルや若さを重視することは、一見、会社の成長につながるように思える。しかし長期的に見ると、大きな損失を生む可能性がある。なぜなら「若手=新しい発想力ができる/柔軟な行動ができる」とは限らないからだ。
多様な年齢層の社員が共存することで、組織はより強くなるものだ。経験豊富なベテラン社員と新鮮な発想を持つ若手社員。この両者のバランスをとることが、組織の持続的な成長につながる。
反対に、経験が豊かでないベテラン社員、新鮮な発想を持たない若手社員には、まず教育や啓発が不可欠だ。そのことも肝に銘じておこう。