金正恩氏の「核弾頭爆発」が迫っている
北朝鮮北東部・豊渓里(プンゲリ)の核実験場で、5回目の核実験の準備が最終段階にあるようだ。「新たな核実験近し」との観測情報は、少し前から取りざたされている。そして新たに、「実験場にある多数のトンネルが塞がれている」との情報が、韓国のある筋からもたらされた。
実験場には、核爆弾を搬入・設置するメインのトンネルの他に、作業用など大小様々なトンネルが100~200もある。その相当数が塞がれたということは、核爆発を封じ込めるために地下の空間を密閉しているものと推測できる。
仮に北朝鮮が核実験を強行する場合、注目されるのは、それがミサイルに搭載できるよう小型化された「核弾頭」であるか否かだ。
金正恩第1書記は3月、「核攻撃能力の信頼性をより高めるために、早いうちに核弾頭の爆発試験と核弾頭装着可能な数種類の弾道ロケット(ミサイル)の試射を断行する」よう指示を下している。北朝鮮はその後、中距離弾道ミサイルのノドン(射程1300キロ)やムスダン(同3000キロ以上)を立て続けに発射。23日には潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験を行った。核戦力の本格配備に向け、着々とことを進めていると見ていいだろう。
独裁国家の「強み」
現在、北朝鮮に対しては国連安保理の主導で強力な経済制裁が敷かれており、いずれその効果が、様々な形で金正恩体制にダメージを与えるかもしれない。
しかし、北朝鮮は今にも核兵器を実戦配備しようとしている。当面の動きは、経済制裁で止めることはできないだろう。彼らが核兵器開発を行っているのは久しく前から分かっていたのに、どうしてこんなことになってしまったのか。その答えのひとつは、日米韓などが長きにわたり、北朝鮮を「追い詰めているフリ」をしてお茶を濁してきたことにある。
独裁国家の富は権力者に集まる。国連制裁は確実に北朝鮮経済を苦しめているが、特権階級は比較的打たれ強い。民が苦しんでいても、民主的な選挙がないから政権を失う心配もない。大衆がデモなどを行えば、軍隊を送り込んで殺してしまうか、政治犯収容所で処刑してしまえばよいのだ。
(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」)
つまり、金正恩氏の「核の暴走」は、北朝鮮の極度に非民主的な体制と不可分であり、彼の暴走を止めるためには究極的には北朝鮮の民主化が必要だということだ。しかし、ことここに及んでも、北朝鮮の民主化――すなわち体制変更は、なかなか議論に上らない。このままでは、核兵器という最強の恫喝手段を備え、より手の付けられなくなった金正恩氏と、われわれは向き合うことになるかもしれない。